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転生とチートと復讐そして奴隷  作者: 京城 都人
2 新たな暮らし
32/38

31 安定が一番


 どうもお久しぶりです。

 楽しみにしていた方がいらっしゃいましたらすいません。

 また次の更新は未定です。

 感想や評価等お待ちしております。



 白い霧で覆われた聖域に、大の字で寝転がる二人。

 魔王と天児は、どちらからともなくため息をついた。

「……天児君。 君はこの世界の敵は何だと思う?」

 魔王の質問に、天児――俺は少し迷ってから答えた。

「さっきの、出鱈目に強い奴?」

「間違ってはいないな。 正確には、出鱈目に強い奴ら、だ」

 遠くで鳥の囀りが聞こえる。

 ここに全く生き物がいない訳でもなさそうだ。

「アイツだけじゃないのか……。 で、わざわざやられる為に来たのか?」

「まさか。 でも、自分の衰え加減は自覚出来たよ」

 確かに無精髭やボサボサの髪の毛のせいでやや老けては見えるかもしれないが、れっきとした二十代の見た目と雰囲気である。

 とても衰えと言う言葉は連想出来ない。

「話が突飛過ぎて理解が追い付かないんだが」

 殺されかけて目覚めてみれば異空間。

 そして魔王を名乗る男から、俺の出自や経歴を言い当てられた。

 さらに、いきなり森のど真ん中に連れて来られて謎の男にフルボッコにされた。

 この状況を飲み込んだ上で理解出来る奴がいたら分かりやすく解説して欲しい。

「端的に言うと、君に魔王になって欲しい。 というか、なってもらうよ」

「そこは俺に拒否権もあれば選択権もあるんじゃないか?」

 ようやく傭兵兼役人という人並み以上の社会的地位を手に入れて生活をしているのに、ここで魔王なんて得体の知れないジョブにチェンジなんかしたくない。

 人間として断固安定を求める。

「いや、そうでもないよ」

「? 一体何をし……!?」

 起き上がって近付いて来た魔王が、まだ倒れたままの俺の額に手を乗せた。

 それだけで、頭の中に何かが流れ込んで来るのが分かった。

 どうせろくなものではないと思い、抵抗しようとするが、まるで石のように身体が固まって動かない。

「…………よし、これでいい。 後は、僕の血を取り込むだけだ」

「な、何をしやがった?」

 動くようになった身体を起こし、魔王を睨みつける。

 しかし魔王はへらへらと笑って懐からナイフを取り出した。

「まぁそう怒らないでよ。 まだ君は半魔王ってとこだ。 ここからは君の自由にしていいよ」

 指先を切り、そこから滴る血液を小さな試験管のような容器に数滴垂らすと、詮をして俺に手渡した。

「自由にって……」

「その血液を体内に取り込めば、完全な魔王になれる。 魔王になれば、次元を渡れるようになるし、自分の望む世界を創造出来る。 どうだい、想像していた魔王には似つかわしくない能力だろう?」

 やや芝居がかった笑いをした後、魔王は表情を消した。

「天児君。 君なら、"次元戦争"を止められるかな?」

「はい?」

 俺は新たに飛び出したワードに疑問符を浮かべた。

「……戻ろう。 君にはまだ伝えることが残っている」

 有無を言わさず、また視界がブラックアウトして行った。






『さ、天児君。 僕には時間がない。 今から言うことをよく聞いてくれ。 これからもう少し経った未来で、謎の軍勢がこの世界に現れるだろう。 その時、君の決断が世界の命運を握ることになる。 僕としては、後悔のない選択をして欲しい。 では、時間だ、また会うことがあればよろしくね』






 気が付くと、空は満天、とまではいかないものの星空が広がっていた。

 身体を起こして周りを見渡せば、そこは紛れもなくマルシアの街の大通りだった。

 周りの建物や石畳の道路はあちこちが削れたり崩れていたり。

 それはあの襲撃が夢でもなんでもなかったことを意味しており、同時にあの魔王との一時も幻なんかではなかったということ。

 人も居ないので、一瞬不安になったが、遠くで酔っ払い達の騒ぎが聞こえて安堵する。

 どうやら静かなのはこの一角だけのようだ。

 家に向かって歩いていると、やはりいつも通りの夜の街並みが出迎えてくれた。

 その人出も多く、騒がしい道を通り抜けると、我が家が見えた。

 まだ明かりは灯っており、誰かは起きていることを示していた。

 さて、今回はどんな仕置きが待っているのか。






「ただいま」

 玄関を開けると、居間で人が動く気配がした。

「どちら様ですか……って、ご主人様!? 今までどちらにいらしたんですか?」

 出迎えてくれたのは、寝間着の亜里沙だった。

 相変わらずのナイスバスト。

「いや、まぁいろいろとあってな」

 魔王と会ってた、なんて言っても信じないだろうし。

 クォールは別だが。

「……今回は女の子は連れてきていないんですか?」

「一体亜里沙は俺をどういう風に認識しているんだ?」

 確かに出掛ける度に女の子が増えて来た気がするけども。

 不可抗力という奴であって、故意にではない。

 そこの所だけは理解しておいてもらいたい。

「とにかく、ご無事でなによりです。 さ、夫婦の部屋で燃え上がりましょう」

「二文目についてはノーコメントで。 ルイルはいるか?」

「ご主人様、日中の膝枕のことをお忘れですか? さぁ謝罪の意味を込めてベッドで情愛を交歓しましょう」

 ……亜里沙がダメ人間になっている。

 原因は全く以って不明だが、ここは無視しよう。

 履物を脱いで居間に入ると、クォールが目を閉じて瞑想をしていた。

「クォールさんただいま。 って、何してるんです?」

 何やら魔力がクォールの体内で活性化しているのが見て取れる。

「……」

 しかし聞こえていないのか、彫像の様に動かない。

 目の前のクォールに気を取られていると、後ろから亜里沙がベタベタと甘えて来た。

「ねぇご主人様ぁ。 早くベッドで愛して下さいよぉ。 もう身体が熱くて……」

 背中に当たる膨らみの感触と、耳元で聞こえる色っぽい吐息が俺の男としての本能をくすぐられる。

「お、落ち着け! 目の前にクォールさんもいるだろう?」

「嫌です。 もう今すぐにでも愛してくれないと狂っちゃいそうなんですぅ……」

 さらに押し付けられる柔らかいものの感触を、何とか僅かに残った理性でスルーする。

 と、ここでいきなり亜里沙がズルズルと膝から崩れてしまった。

 何事かと慌てる前に、クォールが目を開けた。

「ふふ、流石愛されてる奴隷ちゃんは違いますわね」

「一体何の話ですか」

「ちょっと幻視で亜里沙ちゃんの思考に入ってみたの。 そしたらね? アナタのことばかり考えてるの。 ルイルちゃん?には内緒にしておくから、今晩彼女と頑張っちゃって下さらない?」

 話が掴めない。

「え、と……どういうことですか?」

「簡単に言うと、アナタとしたくてしょうがないみたいなんですわ。 多分味を占めちゃったんだと思います。 責任取ってあげて下さる? ちなみに、亜里沙ちゃんの発言は心の叫びみたいなものだから気にしなくていいですわよ?」

 男としては嬉しい話だが、それがもしクォールの嘘だったなら亜里沙に精神的にボコられそうだ。

 でも嘘をついているような表情には見えない……。

 と、そこで亜里沙が目を覚ました。

「あれ、私……。 あ、ご主人様!? どこに行ってらっしゃったんですか! それより何より、私の膝枕の続きをして下さい!」

「いや、亜里沙。 今日は一晩中付き合おう」

「もちろんです! 今晩はずっと膝枕を……」

「いや、そうじゃなくて、一晩中抱くよ」

 瞬間、亜里沙は顔を真っ赤にし、停止した。

「……クォールさん、何か間違えましたかね、俺」

「さぁ、後は二人で解決して下さい。 私はもう寝させて頂きますわ」

 クォールはマイペースに、悠々とした足取りで居間を出て行った。

 残された俺と停止したままの亜里沙の間に沈黙が訪れる。

 先に破ったのは亜里沙だった。

「……の……まで」

「え?」

 聞き取れず、聞き返す。

 すると亜里沙は膨れっ面になり、目を逸らした。

「私の気の済むまで、付き合って下さいね……?」 

 しかしその言葉には刺はなく、可愛らしいのでつい抱きしめたくなった。

 よし、今日も頑張るぞ。

 亜里沙を伴って寝室に入るなり、しばらくすると部屋からは木の軋む音や僅かながら少女の嬌声が聞こえたとかなんとか。






 目覚めると、亜里沙は俺の腕を枕にして眠っていた。

 所謂、腕枕って奴だ。

 まだ眠っている亜里沙の頭を撫でていると、また固くなってきた。

 何が、とは言わないが。

「………………ん、右侍……おはよ。 また、したくなったの……?」

 眠い眼をこすりながら甘える亜里沙の秘部に手を伸ばすが、何の抵抗もなかった。

 もう我慢できませんとも。

「右侍……来てぇ……」

 朝から俺も亜里沙も元気だった。






 まだベッドで余韻を楽しんでいると、一足先に降りて行った亜里沙が朝食を持って部屋に戻って来た。

「クォールさん、朝ごはんだけ作ってどっか出掛けちゃったみたい」

 まだ甘えたモードの亜里沙はトーストを手ずから食べさせてくれた。

 ちょっと恥ずかしかったが、甘えることにした。

「そういえばルイルは?」

「昨日の夜、右侍が帰ってくる前に任務だって出て行ったわ。 いつ帰ってくるかしらね」

 そう言いながら俺に身を預けて来た。

 部屋に戻ってから下着姿の亜里沙は、こうして身体を密着させてきたがることが分かった。

 多分、肌と肌とが触れ合うのが好きなんだと思う。

「なぁ亜里沙。 もう一回しないか?」

「……うん」

 下着を剥ぎ取り、再び重なり合おうとした所で、亜里沙が部屋の入口に目を向けているので俺も視線をそちらに向けると、狼狽するイスビスの姿があった。

 さて、この状況はどうしたものか。

 他人事のように、やけに冷静に考えを巡らしていると、イスビスは部屋から出て行った。






 とりあえず服を着て、居間でイスビスと改めて対面。

 気まずいのは向こうだけで、俺も亜里沙も開き直っていたりする。

「勝手に部屋に入る癖をどうにかしたらどうですか?」

 苦言を呈すると、イスビスは少々申し訳なさそうに頭をかいた。

 こっちの世界にプライベートの侵害などの概念があるのかは分からないが、少なくとも自宅で人にあんな姿を見られたなら苦言の一つは言いたくなる。

 例え上司であっても、だ。

「まぁ、なんだ……相変わらず仲がいいみたいだな」

「……それで、何の用ですか?」

「君に仕事を持って来た。 人さらいをする盗賊のアジトから捕まっている要人を奪還してもらいたい」

 仕事の話になり、イスビスも本来の調子を取り戻したようだ。

 会った時と同じように、聞き方によっては尊大な喋り方に変わった。

「要人、ですか」

「ある公爵殿の愛娘だそうだ。 詳しい情報はまだ我も分かっていないが、任務には君も連れて行こうと思う。 今は人手が不足していてな」

 そういえば、触れるべきか迷ったのだが、イスビスの身体には多少傷が目立っている。

 どこかで誰かと交戦したのか。

「優秀な人材が多いと聞きましたが」

「今は例の屋敷に向かっている者と、医務室で寝ている者しかいなくてな」

 困ったと言わんばかりに頭を抱えるイスビス。

 俺が魔王の所に行かれていた時に何か起こったのだろうか。

「……それで、俺はどうしたら?」

「また夜にでも詳しい情報を伝えに来れるだろうから、それまでは好きにしていてくれ。 それでは、この辺でお暇しよう」

 言いたいことを言ってイスビスはさっさと帰って行った。

 実は彼なりの気遣いなのかも知れない等と考えながら居間に戻ると、玄関先に人の気配を感じた。

「ただいまーですわ。 あら、もうよろしいのですか?」

「? 一体何がです?」

「もう亜里沙ちゃんは満足してましたか、と聞くべきですか?」

 不意打ちだったので、俺はつい吹き出してしまった。

「……イスビスさん、でしたか? 丁度入れ違いになったのですが……何かお話でも?」

「えぇ、仕事です。 早ければ夜にでも出発になると思いますが」

 向こうから話を変えてくれたので正直助かった。

「私も行っていいですわよね?」

「え……でも、クォールさんは今身柄を保護されているので……」

「あらクォールさん、お帰りなさいませ」

 話をしていると亜里沙登場。

 口調はいつも通りの丁寧なものに戻っている。

「丁度いいところにいらっしゃったのですわね」

「はい?」

 ぽかんとした表情の亜里沙。

 ついでに俺も同じような表情になっていると思われる。

 何が丁度いいのだろうか。

「実は、彼のお仕事を手伝おうと思いまして……亜里沙ちゃんもいかがです?」

「もちろん、私はご主人様の奴隷ですからついて行きますよ? クォールさんも来られますか?」

「ではご一緒させていただきますわ。 と言う訳で、イスビスさんには上手いこと言ってくれませんこと?」

 なんて無理難題を……。

 いや、決まった訳ではないが。

「そうと決まれば、ルイルも連れて行くか……」

 気付けばもう朝から昼に時間は移っており、お腹も空いてきていたことを自覚した。

と、それは無理なんじゃあ……」

 仮にも保護されている身柄な訳だし。


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