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19 月下の襲撃

 

今回もサブタイトルを付けてみました。


感想や指摘、要望等ありましたらお願いします。

誤字修正もぼちぼち行っていきます。

受験生なので更新や修正が遅れる可能性は大きいので、ご理解の方をお願いします。

◇ ◆ ◇右侍◆ ◇ ◆




「――ということなんだ」

「って安藤? いつの間に……」

 すっかり聴き入っていたのだが、話者が安藤兄であると気付いた。

 二年ぶりなのだが、相も変わらずのイケメンぶりを存分に見せ付けている。(本人にそのつもりは無いだろうが。)

「本当に、右侍なんだよな」

「ん? あぁ、もちろん」

 疑わしい、とまではいかないが、少々懐疑的な目線を受けた。

 それは仕方の無いことだ。

 死んだ人間が、いきなり生き返って自分の目の前に現れたら誰でも不審に思うだろう。

 今の状況が良いと思えるぐらいだ。

「それにしても……梨絵さんと言い、安藤と言い、簡単に俺が生き返ったことを納得して受け入れたもんだな」

「そうなるって、平岩さんが言っていたからね。 全てを聞いて、疑問も解けたよ」

 恐らく、天児と言う単語が絡んでいることは見当がついた。

 そしてそれが、とんでもなく特別な存在であるということも。

「右侍も、だけど……亜里沙ちゃんも良く帰って来たわ。 訳ありっぽいけど」

 梨絵さんの指摘通りであり、少々厄介なことになっているのは事実だ。

 隠す必要も無かったので、二人に仔細を話すことにした。

 何となく嫌だったので、奴隷契約をしたことだけは伏せたが。

「……成る程ね。 ま、記憶を復元するのは簡単じゃないことぐらい分かってるわよね?」

「壊れただけなら直せばいいが、カケラも残っていないなら直しようがないからな……」

 実は道中に、何回か精神干渉を試みたが、記憶は文字通り消し飛んでいたのだ。

 言葉通り、復元は不可能なのかもしれない。

「その言葉通りなら、亜里沙ちゃんは今、右侍の奴隷ね?」

 ……何故こうもピタリと言い当てるのだろうか、この人は。

「あら、不思議そうね。 髪の色が変わるのは、奴隷契約をした時だけよ?」

 そうだったのか。

 元の世界の様に、お洒落で染色をしたりはしないのだろうか。

 そういう技術があるのかも知らないが。

 梨絵さんの口ぶりから行けば、無いのだろうとも思ったが。

「……その通りです。 亜里沙は俺の奴隷です。 けど、何もしてませんし、するつもりもありません」

「あら、随分とカッコイイこと言うじゃないの。 もし手なんか出してたら、私の槍で突き刺して串焼きにしてあげてたところなんだけどね」

 サラっと怖いことを言われた気がしたが、華麗にスルーすることにした。

「ところで、他の皆は?」

「今、みんなで平岩さんの隠れ家にいるよ。 僕達は今日、君を迎えに来たんだ」

 この安藤の答えに疑問を感じずにはいれなかった。

「なんで俺が来るって分かったんだ?」

「舞が星を読んで、今日ここに来るって教えてくれたんだ」

「凄いな……。 そんなことが出来るのか」

「あぁ。 あれから占術を会得したみたいでね、毎日星を読んでその結果を教えてくれるんだ」

 やり方を教えて貰えば、俺にも出来たりするのかも?

 もし魔法でしていると言うのなら、可能性は全然有りそうだな。

「じゃ、行こうか」

 時間が差し迫っているのか、安藤兄はやや慌てながら食堂の勝手口へと向かった。

 梨絵さんにも促され、亜里沙と共にそれに続いた。

 そういえば、亜里沙は一言も喋ってないが、疲れているのかもしれないな。






 月は淡い光を放ち、真っ暗にならない程度に街を照らしている。

 それでも、俺達は街中を巡回する兵士に気付かれることなく城壁を目指している。

 本当なら《闇》属性の〈影移し〉を使いたかったが、人数制限があれば面倒な上、自分が《闇》属性魔法を遣うことを知られたくなかったので使っていない。

 従って、走っての移動になる。

 亜里沙は俺の背中に背負っている。

 始め、自分も走ると言う意志を示していたが、速さを考慮して俺におんぶされる形での移動となった経緯がある。

 だから、背中の柔らかい感触は不可抗力であるとも言えるはずだ。

「ご主人様、すいません……。 私が役立たずで……」

 記憶が無くなる前を知っているだけに、この様な言葉を口にするのに違和感を感じずにはいられなかった。

「いや。 そんなこと気にする必要はないよ」

「優しいですね……知り合って間もない奴隷の私にはもったいないぐらいです」

 真実を伝えたい。

 しかし、梨絵さんの言葉を思い出してそれを思い止まる。

 今の俺にはどうするべきか分からない。

 創造魔法を使えば何でも出来るかもしれないと考えたが、無いものを創ることは不可能に近い。

 記憶という形の無いものは如何に繊細に創り上げたところで、物でしかない。

 それを頭に押し込んでも、どうにもならないどころか、下手をすれば頭を破裂させかねない。

「あの……やっぱり怒ってますよね……。 ごめんなさい……」

 押し黙っていたのを、怒っていると勘違いしてしまったようで、怯えが背中から伝わる。

「いや、考え事をしていただけなんだ。 あと、敬語じゃなくていいからさ」

 しかし亜里沙は小さく首を横に振った。

「私はご主人様の奴隷ですので……。 それに、もう既に背中に背負って頂いているので、それだけでも十分過ぎるぐらいに優しくしてもらってますから……」

 ここまで頑なに拒否されると、ちょっとだけだが悲しい。

 いっそ命令として敬語を止めさせる手段も浮かんだが、今の亜里沙にはこのままで居させる方が良いのかもしれないと思い直した。

 今が彼女にとっても一番楽だと言うのなら、暫くはこのままで居ようと言うのが結論。

「……あぁ。 でも、甘えることも務めだ。 我慢は必要ないぞ」

「…………はい、ありがとうございます」

 ほんの少しだけだが、亜里沙が笑った気がした。

「……良い感じのとこ悪いけど、敵襲よ」

 梨絵さんに言われた矢先、矢が二本飛来した。

 俺は事もなげにそれを避け、敵の位置を探る。

 今は亜里沙が背中に居るので刀を抜くことが出来ない。

 そして街中であるために魔法が使えない。

 必然的に梨絵さんと安藤兄に任せることになる。

「右手の建物の屋上に三人、正面に五人!」

「おっけー、正面は任せなさい!」

「僕は上に行きます!」

 敵の位置を教えるとほぼ同時に散開する二人のコンビネーションに感嘆を覚えつつ、他の敵の気配を探る。

 ……居た。

 しかし、既に二人は別の敵と切り合っていて対応は出来ない。

「後方五人は俺が対応します!」

 仕方なく亜里沙を降ろし、刀を抜いた。

 先ずは二人を同時に切り捨てると、敵は散開、ぐるりとこちらを囲む陣形になった。

 三方からの攻撃に対応しなければならない。

 正直、亜里沙を守りながらは厳しい。

 《闇》属性なら、音も立てずに敵を葬ることが出来るが……。

 横目に梨絵さん達を見れば、戦闘中であり、こちらを見ていない。

「……《闇》属性創造魔法、〈縛〉!」

「のあっ!?」

 突如地面から飛び出した黒い帯のようなものに首を絞められ、三人の曲者は呻き声を漏らした。

 だがそれも束の間、それはすぐに断末魔に変わった。

「がぁっ……!」

 彼らは、目の前の少年の遣った未知なる魔法によって情け容赦なく喉笛を潰され、血を吐いて絶命した。

 そして、止めと言わんばかりに首を撥ねられた。






「ふぅ……。 いっちょ上がりね」

 返り血を浴びて赤黒い色になった割烹着を身につけた梨絵さんは、銀槍の血を払いながらそう呟いた。

「右侍、亜里沙ちゃん、大丈夫だったか? 亜里沙ちゃんを守りながら五人を相手にしなければならなかっただろ?」

「はい、守って頂いたので……」

「ん? あぁ、余裕だったぜ」

 内心、あの魔法を見られていなかったかという不安でいっぱいだが。

 やはりと言うべきか、《闇》属性魔法は惨たらしい殺し方しか出来ないのかもしれない。

 益々、人前で魔法が使えなくなってしまった。

 亜里沙は黙っていてくれるだろうと言う前提で、亜里沙の目の前では遣うべき時に遣おうとは思うが。

 今も、余計な事はなにも言わなかったしな。

「さて、急いで行きましょう。 増援とか来られても困るしね」

 また、俺達は月夜の街を疾走し始めた。

 それを、陰から見ていた男の存在に気付かずに……。


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