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 いくらか月日が流れたある日。

 朝、俺は日の出から程ない時間が経ってから起床。

 いつもと違い、少し緊張感があるせいか早く目が覚めた。

 体内時計では午前5時半ぐらい。

 もそもそとベッドから起きだし、居間へと向かう。




 いつものことだが、居間のテーブルにはもう朝餉が並んでいる。

「あら、あーちゃんより早く起きてくるなんて珍しいわね、ゆーちゃん」

 俺に声をかけたのは、俺の義理の母の枝梨えりだった。

 もう四十ぐらいの年齢だが、見た目はどう頑張っても二十代前半の容姿。

 つい最近もナンパされたと嬉しそうに語っていた。

 それなのに毎朝必ず俺達より早く起き、朝餉を用意し終わっている。

 それだけではないが、良妻賢母とは彼女のことなのだろうと疑いの予知がない。

 ところで、今日は俺より早く起きている奴もいないし、朝餉の準備はまだ完全ではない。

 それだけ緊張もしてるし、気負ってもいるんだと思う。

「母さん、手伝うよ」

「ふふ、気持ちはうれしいけど、今日は大事な日でしょ? もう出来上がってるご飯から食べはじめなさい」

 枝梨に促され、大人しく食卓に着き、朝餉に箸をつけた。

 いつも通り栄養が考えられているメニューだ。

 黙々と食べていると、いつもは俺より早起きな血の繋がらない妹(ただし、同い年)である亜里沙が、いつものピンクの寝巻を纏った姿で眠そうな眼を擦って現れた。

 血は繋がっていないとはいえ、自分とは違い、綺麗に伸びた茶色の髪、抜けるような青空を詰め込んだような空色の瞳、高すぎず低すぎない鼻、桜色の小さく柔らかそうな唇。

 枝梨に似てものすごい美人になる確信がある。

 同じところに住んでいるんだから、俺の顔にも何かいい影響を与えて欲しかったものだ。

 ちなみに鼻は俺のコンプレックスなので彼女の鼻を密かに羨んでいる。

 顔だけでなく、体つきも十四歳にしては十分な発育を遂げている。

 バストは……八十三。

 うん、眼福だね。

「あれ、なんでもう右侍が起きてんの? いっつもお腹出してだらし無い顔して寝てる時間なのに」

 性格についてはノーコメント。

 家柄か、俺の知っている女らしいには程遠い気がする。 でも見た目から性格を差し引いても全然プラスだと思う。

 主にバストが点高いと思う。

 なんでバストサイズとかが分かるかって?

 実はある集中状態に入ることでその人物の情報が頭に入る。

 俺は便宜上これを《分析》と呼んでいる。

 これは俺だけに出来るようだ、というのは検証済み。

 ちなみに枝梨のバストサイズは九十ジャスト。

 ちょっと激しいアクションをすれば揺れる揺れる。

「……ちょっとぉ、お母さんへの視線が怪しいよ、エロゆーじ」

 はっ、つい枝梨の胸元に視線が……。

 しかし当の本人、枝梨は咎めるどころか「いやん(はぁと)」てな感じで胸を隠しただけだった。

 とまぁこれが家主が起きて来るまでのいつもの掛け合いだったりする。

 ……朝から、それも朝餉前(もしくは最中)にするべき会話ではないと認識はしている。

「んで、エロゆーじは今日なんかあんの?」

 俺の向かい側に座った亜里沙が、朝餉に箸をつけるなりそう切り出した。

「あぁ。 白兵戦があるんだ。 今度の戦に初陣出来るかはこれの評価次第って感じかな」

 そう、これが俺が早起きしてしまった理由だ。

 白兵戦は昼からなので別に早起きする必要はなかったのだが、午前中に身体を動かしてあっためておこうという腹積もりでもある。

「ふーん。 ま、趣味で武術やってる私とはやっぱ違うよね」

 俺が毎日武術や魔法を稽古する中で、亜里沙も武術だけ稽古に参加しており、もう今の段階で大人が相手でも充分に与できる腕前だそうだ。

 流石に現役の兵士には勝てないみたいだが。

 ただ、同年代の女子の中では無類の強さらしい。

 ここまで全て断定でないのは全て伝聞で、俺は稽古漬けで夜はあまり長く起きていられないためだ。

 逆に俺は普段、現役の兵士達と稽古するので同年代の中での強さは分からない。

 が、今日は同年代でも腕に覚えのある奴が参加するというので緊張もするし、手合わせをするのが楽しみでもある。

「お、みんなおはよう」

 そこへ一家の大黒柱の宗玄が居間に現れた。

 普段は凛々しいナイスガイなんだが、戦場では戦鬼という二つ名持ちの武官だ。

 御歳四十ぴったしなのに身体は鋼みたいな筋肉で覆われている。

 男の俺でも惚れそうな肉体なんだが、俺にそっちのケはなくて良かったと思う。

「枝梨、言ってあった通り今日は昼から右侍と外府に行ってくるよ」

「はいはい。 右侍、頑張ってね。 選抜されたらお母さんいっぱいなでなでしてあげるからね」

 ……なんかご褒美が間違っている気がしたが、悪い気はしないので黙って享受することにした。

 ちなみに外府とは役所のことで、この国(魔物の侵入対策用の防壁の中にある一塊の都を国と呼ぶ)の中にある城の一番外側の城壁(高さが大体三メートルはある)の内側にあり、主に軍事を担当している役所で、演習場という広いグラウンドみたいなところが二つ程あり、今日の白兵戦もそこで行われる。

 外府から一つ城壁の内側に入ると内府という役所もあるんだが、そっちは内政担当で文官達の仕事場で、国王のいる宮殿はその城壁のさらに内側に位置している。

「……ふぅ。 ごちそうさまでした。 親父、先に稽古場で身体動かしてくる」

 食器を片付け、枝梨に軽く頭を撫でられてから稽古場へと向かった。

 どうにも緊張でじっとしていることが出来ないみたいだ。

 稽古場に着くなり使い古した木刀で素振り、技の型の確認。

 そして魔法を交えた自己流コンボ(親父にも内緒で編み出した)も練習する。

 ここで魔法についてだが、純粋な属性で分けるなら《火》、《水》、《氷》、《土》、《風》、《雷》、《光》、《無》、そして《闇》の九種類。

 そして一般的には生れつき自分に備わっている属性の素質がある。

 しかし、実戦などで活躍できるのはほんの僅かしかいない。

 理由は、魔法を鍛える環境が整ってないのもあるが、一番は純粋な属性でないことだ。

 例えば、《火》と《土》の属性の素質を半分ずつ持っていたとする。

 その人が《火》の魔法を使おうにも、純粋に《火》の属性の素質を持つ人の半分しかないのだから詠唱に手間もかかるし威力も半端、さらにまず習得するのにも時間がかかる、と言った具合だ。

 なので生れた瞬間に魔法で飯が食えるかがほとんど決まってしまう。

 なのに俺は何故か《火》と《雷》が両方とも問題なく使える。

 昔に読んだ資料のお陰で自分が中々異常な存在だと知ることが出来たので、家族の前であっても魔法は使わないように過ごして来てもう三年は過ぎただろう。

 我流でなんとか魔法を具現化することができるようになったが、ここでもまた一つ一般的とは言えないことが俺に起こっていることが分かった。

 それは、普通魔法とは、相手に向かって火を飛ばしたい場合、まずは頭上や目の前で火を作り出してからぶつける。

 しかし俺はなんと指定した事物に対象を合わせて魔法を発動すると頭上などではなく、その事物に直接魔法を発動させることが出来るのだ。

 つまり、火をぶつけたいと思って魔法を使うと、その相手がいきなり火だるまになるということだ。

 これも稽古場で検証済み。

 以上が自分の実験。

 異世界に生まれ変わって(なんでかは記憶にはないが)恐らく付加されているだろうチートは、ぶっちゃけると、え?そんだけ?wっと言った感じ。

 なんだか、せちがらいぜ。

 てな訳であっけなく午前は終わり、枝梨の作った少し早めの昼餉を頂いてから外府へ親父と一緒に向かった。


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