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今回はかなり時間を掛けた割に短いです。

理由としては自分の文章力のなさに嫌気が差しているからです。

でも、作品のゴールは何とか迎えたいと思います。



 地上では案の定と言うべきか、激しい戦闘が展開していた。

 これでは、一度も戦闘をせずに離脱というのは不可能だろう。

「安藤クンは平岩さんをお願い。 私が道を拓くわ」

 ここは梨絵さんの言葉に従うことにした。

 なるべく早く、かつ平岩さんの負担のかからない移動に神経を集中させる。

 苦戦している王国兵の援護をしたかったのは山々だったが、自分が行った所で死ぬのは分かっている。

 自分の力不足を呪ってやりたかったが、今は自分のすべきことをするのだと思い直す。

「ていうか、外府出たら何処へ向かうんですか?」

「……城壁外に、私の隠れ家がある。 そこへ向かってもらえんか?」

 答えたのは苦しい息をする平岩さんだった。

「それは、どの方角ですか?」

 尋ねたのは無理もない。

 北と南、東と西が逆だったならば、今の状況ならば戻るのに一日はかかるだろう。

「北東の峠の裾だ……」

「なら、王宮の北門から抜けて行きましょう」

「ダメよ」

 否定したのは梨絵さん。

 険しい表情をしており、恐らく何か理由となる根拠がありそうだ。

「この王宮の外れから北門に行くには、絶対に王宮の中を通らなければならないの。 きっとクエラの防衛線に引っ掛かるし、下手したらもう一度クエラと戦うことになるわ」

 それは、是非とも避けたい事態だ。

「なら、来た道を辿って南門から出ますか?」

「しょうがないけど、そうしましょう」

 そう言うと同時に、僕達は南へと撤退を開始した。






「はぁっ!」

 少し先で梨絵さんが複数の兵士相手に奮闘している。

 安全を確保しながらとなると、やはり足は鈍ってしまうが、こちらは怪我をした国の要人がいるので仕方ない。

 王宮前の兵士達は反乱軍に鎮圧されて

「キリがないわねぇ。 そろそろ疲れが出て来たわ」

 割烹着で槍を振るう梨絵さんはまるで接客中のような雰囲気で呟く。

「もうちょっとですよ。 ほら、外府の門です」

「でも、ただでは帰してくれないみたいね」

 まだ目の前には二桁近い兵士が立ちはだかっている。

 しかし、それは梨絵さんの前では壁の役割すら果たせずに吹き飛ばされる運命にあった。

「さて、やっと脱出ね。 一度食堂に寄って行ってもいいかしら」

「あ、はい。 あの、宰相様は」

「構わぬ」

 僕が言い切る前に返事をした。

 そう言うわけで、僕達は食堂へと向かった。






「あら、枝梨じゃない」

 食堂に帰還すると、そこには枝梨さんと、あの時の少女二人がいた。

「姉さん……。 どうしよう……亜里沙が……」

 昨日や今朝の様な明るい表情は無く、動揺と絶望が見え隠れしている。

 由ちゃんと玲ちゃんの表情も一様に暗い。

「どうしたの? 一体何があったの?」

「皆が行った後に、いきなり王宮の兵士が家に押し入って来て……私達を殺そうとしたの……。 それでね、何とか家から脱出してここに向かって逃げてたんだけど…………」

 枝梨さんは、涙を零し始めた。

 梨絵さんは頭を撫でて、続きを促した。

「……途中で追いつかれちゃって……亜里沙が囮になって逃げたの……。 私は止めたんだけど、もうそっちに兵士の注意が向いちゃって……」

 その結末は、今の状況。

 つまり、亜里沙は捕まったか、最悪殺されたということだ。

「そっかぁ……。 とにかく、今はあなたたちだけでも無事が確認出来て良かったわ」

 ついに、枝梨さんは梨絵さんの胸に顔を埋めて泣いた。

「あのー、お茶をいれたのでどうぞ」

 厨房から、盆にお茶の入った容器を持って遠慮がちに舞が現れた。

 姿が見えないと思ったら、そこにいたのか。

「ありがと。 カウンターにでも置いてくれる?」

 梨絵さんの指示に従って舞は盆から容器を降ろしていく。

「梨絵、慎也くんおかえり。 それに、平岩さんじゃないですか」

「おぉ早一よ、久しいな」

「あの、二人ともお知り合いですか?」

「そうだよ?」

「そうじゃが」

 僕の問いに、二人は同時に答えた。

 何故一国の宰相と食堂の主人が知り合いなのだろう。

「この男、こう見えて王国の若き料理長……になるはずだったんじゃよ」

「では何故今は王国務めじゃないんですか?」

「この食堂は家業で、僕は一人息子だったからさ。 そして、王国の厨房から去る時に、梨絵にプロポーズしたんだ。 それから僕達は……って、何故二人とも微妙な顔をしてるんだい?」

 この状況で人の惚気話を聞いていられる程僕には余裕がない。

 どうやら平岩さんも同じ考えのようだ。

「ごほんっ。 それより、怪我の手当をしてくれぬか?」

「あ、はいっ。 今すぐ止血薬と包帯持って来ますっ」

 そう言うと早一さんは厨房の奥に消えて行った。

 そして背後にちらりと目線を遣れば、恥ずかしさで顔を紅潮させ、同時に怒気を発する梨絵さんと目が合った。

 僕は苦笑いをしてまた前を向いた。






「とりあえず、準備をしながらここで過ごしましょう?」

 発案者は梨絵さん。

 ここに留まる理由は、反乱軍は白昼堂々と民家に戦闘を仕掛けるようなことはしないという読み。

 それと、この騒動によって国民は大きく動揺しており、これを鎮める為の情報操作に力を注がなければならないからだ。

 ただ、猶予はあまりないと言うのも事実だ。

「出来れば城壁は夜に越えたいけど、この先数日は警戒は厳しいはず。 だから、反乱軍が仕掛けて来るのと、警戒が緩むタイミングを計っていく必要があるわ」

「なら、火事なんかに見せかけて……といったことに注意すればいいんですね?」

「そうね。 一番手っ取り早いのは、結界を張ることだけど、その場合は一週間はずっと維持してもらいたいわね。 でも、そんな芸当が出来る人なんて居ないわよね……。 私は武闘だけだし、平岩さんも遣う魔法の系統が違うし……」

 次善策は、昼夜交代で見張ることだが、それでは限界がある。

「あの、私達なら出来るかも、です……」

 おずおずと発言したのは、由ちゃんだった。

「……舞は、賛成します」

 それを支持したのは、舞。

 場には困惑に似た空気が流れた。

「どういうことかしら?」

 厳しさを孕んだ声色で質問を投げ掛けたのは梨絵さん。

「前、私たちが賊に捕らえられた時、この子達二人が張っていた結界は完全に気配を消していたわ」

「じゃあ何で捕まったんだ?」

「そ、それは……」

 僕の問いに舞は二人の方を見た。

 そして、僕に向き直る。

「コケたからです……」

 場はまた静まり返った。

 どんだけドジなんだと。

「と、とにかく。 二人の結界は凄いんです」

 一通り主張し終えた舞に対し、梨絵さんを始めとする面々は思案顔。

 舞の話が嘘とは思わないが、それが本当に有効なのかという疑問。

「……由ちゃんに、玲ちゃん? 本当に高等な結界が張れて、かつそれが維持出来る?」

「は、はい!」

「むしろ当然……」

 梨絵さんの疑問に二人は是と答えた。

 皆も、それで腹を決めた様だった。


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