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友人に教えられたので、チェックしてみたところ、日間ランキングがベスト5目前まできてました!

これも拙作を読んで、お気に入り登録や評価、感想をして下さった読者様みなさんのおかげです。


さて、暗い展開が予想されるのですが、どうかお付き合い願います。



 扉を開けると、中には手枷と足枷をされ、少しばかり痩せた亜里沙がいた。

 着ているものもボロボロだが、間違いない。

「誰……ううん、誰でもいい……」

 投げやりにそう言うなり、体育座りのまま俯いてしまった。

 まるで、死を目前に控えているかのような痛ましい姿。

 そして、もう一つ俺の胸に痛みを与えたのは、もしかして、俺が誰なのか分からないのか、という疑い。

「亜里沙……」

「な、なんで私の名前を知ってるの……?」

 少し近付いて名を呼ぶと、怯えながらこちらの顔を凝視した。

 疑いは確信へと変わった。

 恐らく、魔法による記憶抹消だろう。

 前はあまり上手く出来なかったが、亜里沙から魔法の痕跡を感じることが出来る。

 魔法の痕跡、通称魔痕とは、魔法を発動したり受けた時に身体に残る魔力の残滓のこと。

 規模の大きい魔法や影響力の大きい魔法であればあるほど長く濃く残っている。

 魔痕は、《闇》属性を示している。

 亜里沙が遣える魔法属性はポピュラーな《火》属性だ。

 前述した通り、魔法は生まれながらに持っている属性のものしか遣えない。

 つまり、亜里沙に《闇》属性の魔痕があると言うことは、他人から魔法を受けたという証拠になる。

「お前の、家族だからだ」

 無駄かもしれないとは思いつつ、俺は亜里沙の問いに答えた。

「嘘……。 私の家族はお母さんと妹二人よ……っうぅ!」

 途端、亜里沙はこめかみの辺りを手で押さえて苦しみ始めた。

「大丈夫か! しっかりしろ!」

 しかし亜里沙は苦しそうに呻くばかり。

 そうだ、俺は今、全魔法属性が遣えるじゃないか……。

 《光》属性魔法で治癒魔法を創造して……、と。

「これで、どうだ……?」

 俺の手から発せられた光を浴びた亜里沙は深い息をし、やがて目を開いた。

「……あ、ありがとう」

 俺は控えめに礼を言われて、安堵の息を吐いた。

 とりあえず助かったみたいだ。

 ……て、あれ?

 さっきよりも亜里沙の魔痕が濃くなってる……?

 《分析》で魔痕を調べると、《光》属性とさっきよりも大分と濃い《闇》属性のものが残っている。

 もしかして、亜里沙の体内に魔法が施されているのか……。

 そう推理した俺は、亜里沙には無断でだが、薄い魔力を身体に込んだ。

 すると、やはりというべきか、頭の辺りで魔力が消えた。

 昔に本で見た、魔法の自律というやつか。

 もっとも、精度はあまり高くなさそうだが。

「……今のは……?」

 流石に、頭の中で微弱な魔力の衝突が起きたことには気付いたようだ。

 亜里沙が不安そうな、消え入りそうな声を上げた。

「……君の頭痛は一定周期で起こり、その度に記憶を失う魔法がかかっている。 治そうと思えば治せると思うんだが、どうする?」

 俺の申し出に、亜里沙は少し躊躇うが、本当に小さく頷いた。

 俺は荷車の中に入り、亜里沙の隣に腰掛けた。

 そして、治療の前に亜里沙を戒める手枷と足枷を外した。

 こちらは魔法もなにもなく、ただの鉄製だった。

 さて、一番亜里沙に負担のないやり方は、やはり魔法を上書きすることだ。

 例えば、今回の魔法で言えば『一定周期ごとに記憶を消す』という内容の魔法を、『一定周期ごとに記憶を復活させる』という魔法に書き換えたりすることだ。

 例え、それが出来る出来ないに拘わらず、だ。

 無効化などは、人の頭の中で実行すればほぼ百パーセントの確率で頭が消し飛ぶ。

 なので必然的に却下した。

「じゃあ、行くよ?」

 目を閉じている亜里沙の身体に高密度の《闇》属性の魔力を大量に流し込む。

 一瞬顔をしかめている亜里沙の顔が見えたが、俺も目を閉じて魔力を操ることに集中する。

 ただでさえ高密度な他人の魔力は人体には良くない。

 それも最も危険とされる、《闇》属性の魔力を大量に流し込んでいるのだ。

 後遺症が残らないとも限らないしな……。

 一瞬たりとも気は抜けない。

(……これか……やはり魔法の構成自体はかなり粗い。 よし、一気に書き換えるっ)

 意識領域に感じた、大きな違和感の塊を俺の《闇》属性の魔力の流れで包み込む。

 擦り減る精神で魔力を操り、魔法をすり替えて行く……。

 ここでミスをすれば、魔法同士が反発し合い、亜里沙の頭が消し飛ぶか精神をやられてしまう。

 そんなヘマは絶対にしない……。

 そう肝に命じつつ、迅速かつ慎重に魔法を書き換えていくが、ついに相手の魔法が反撃――俺の魔力を消そうとする。

 しかし、幸運にも魔力の密度の差がそれを阻む。

 即ち、敵の反撃はあまり意味を成していない。

 それでも、魔法に自爆なんかされたらたまらないので、さらに書き換える速度を加速させる。

(…………………………完了)

 書き換えた魔法は『精神面に対する干渉、その類の魔法を一切受け付けない』。

 亜里沙はこれで、精神に干渉されることは無くなった。



 書き換えが終わると、亜里沙はそのまま眠ってしまった。

 負担が少ないとは言え、精神的には疲れたはずだしな。

 頭を撫で、ひざ枕をして亜里沙を寝かせた。

 さて、めでたく復活してすぐに亜里沙と再開したが、記憶がないとは……。

 俺が死んでから復活するまでに何があったのか、そもそも俺が死んでからどのぐらい経っているのか、など聞きたいことは沢山あるんだがな……。

 それから少し経って、俺も魔力の消費が激しかったせいかは分からないが眠った。

 とにかく、疲れた……。




 僅かな隙間から朝日が差し込む荷車の中で俺は目を覚ました。

 もう朝か……って亜里沙がいない。

 荷車から出たところで、亜里沙が昨日俺が殺した兵士の死体の側に立ち尽くしていた。

「これ、あなたがやったの……?」

 俺が歩み寄ると、立ち尽くしたまま問われた。

「……あぁ」

 隠しても意味が無いと分かっていたので、素直に肯定する。

「そっか……。 じゃあ、何の為に?」

「……」

 その問いに、俺は答えを詰まらせた。

 得体の知れない殺戮の衝動に駆られた。

 そう素直に答えて良いものか……。

 俺は恐れていた。

 亜里沙に嫌われたり、否定されるのを。

「……答えないならそれでもいいです。 でも、結果的にあなたに救ってもらったので、お礼を言わせて下さい。 ありがとう」

 正直、面食らってしまった。

 非道いとかと言われて責められるものだと思っていたのだが、まさかお礼を言われるとは。

 俺が何も言わずに見つめていたせいか、亜里沙は首を傾げた。

「……何かついてますか? って、今は多分すごい汚れてるんで、あまり見ないで下さい」

 そう言うなり、顔を両手で隠してしまった。

「いや、その……嫌われるかなって、思ってさ……」

「なんで嫌うんですか?」

 あっけらかんと言い放った亜里沙を、また見つめてしまう。

「だから、見ないで下さいってば」

 今度こそ怒られてしまったっぽい。

「ごめん。 いや、人を殺したからさ……」

「あなたは冒険者でしょ? なら、殺しには慣れているはずよ…………人はまた別だけどね。 でも、この兵士達は最低よ……。 人の貞操を遊び感覚で弄ぼうとしたのよ……」

 亜里沙は、憎悪の篭った視線を足許の死体に向けた。

 俺は、無言で亜里沙の身体を抱き寄せた。

「胸、貸すから……」

 そう言うと、亜里沙は俺の胸に顔を寄せて泣きはじめた。

 始めは小さな嗚咽だったのが、頭を撫で始めると、大泣きに変わっていった。

 俺は、胸の中の亜里沙が泣き止むまで頭を撫で続けていた。


文の書き方を良い方向に変えていけたらと思うのですが、ちょっと難航しています……。


出きるだけ、お気付きの点や要望がありましたら、どれだけ小さいことでもよろしいので、感想としてお願いします。

読者様の力をどうか貸して下さい。

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