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書き上がったので投稿です。
外府に着くと、もう兵士の方々は到着して整列済みだった。
いやぁ、見てて壮観だね。
千人の人が縦から見ても横から見ても、斜めから見ても綺麗に並んでるのな。
と、隊列の中心には平岩がいた。
「宰相様。 戦鬼、以下三名到着しました」
「うむ。 では馬の装備を整える間、待っていて貰おうかな」
兵士が何人かがかりで馬を奥へ連れていった。
さて、もうすぐ初陣だな。
なんか緊張もするし、少しだけ照れ臭いなぁ。
いや、イメトレとかは結構してたんだぜ?
血肉湧き踊る戦場で、華々しく父さんのような戦功を挙げる――そう、今にも血の臭いがしそうな――――
「――――……………………え」
俺の頬に、血がついた。
しかも、隣の父さんの首が無くなっていた。
自分の視界が、横になり、反転し、そして、地面に――――――堕ちた。
そう、斬られたのだ。
そう自覚した時にはもう俺は絶命していた。
あれ………………………………?
俺は…………チートを駆使して……この世界で、何かを為すために転生……したんじゃ……あ、あ…………。
ん。
ここは……。
「起きたか」
誰だ?
視界が真っ暗で何も見えない……。
いや、目が開いているのかも分からない……。
起きているのか眠っているのかも分からない。
「今、お前は世界が歪んでしまった為に殺されてしまった」
そうか、やっぱり死んだのか……。
そしてこの"声"に主は誰だろうか。
「お前は、天児には珍しく前世の記憶が曖昧なまま召喚された」
確かに、そうだな。
で、天児ってなんだろう。
「いいか? 前世でのお前の名は、沖田 右侍。
親父さんと、お袋さんは死んでいる。 そんな中で高校生という職業をしていてだな、十六歳で事故死。 そしてここへ喚ばれた……。 ただ、事故の衝撃が強すぎたためか、あらゆるものが曖昧なままこの世界に来てしまった。 それが、歪みの原因だ」
分かるような分からないような……。
「まずは、この記憶の話だ。 そして、本来は生まれながらにして付与されるはずだった、超人的能力がなかなか発現しなかった。 いや、まだ発現していない能力の方が断然多い」
確かに、チートもほとんど実践出来ずに死んだしな……。
くそ……亜里沙や枝梨、由ちゃん玲ちゃん、梨絵さん早一さん……そして、安藤兄と舞ちゃん……遺して来ちまった人が多すぎる……。
そもそも何で殺されたんだ……。
「少年、生き返りたいか?」
「え……?」
思いもよらぬ言葉につい聞き直してしまった。
いや、確かに生き返りたいよ。
みんなの安否が気になるし、俺と父さんを殺した相手とかも知りたい。
「生き返りたいか?」
「……本当に出来るのか?」
「あぁ」
"声"は、あっさり肯定してみせた。
「……もちろん、あの世界にだよな?」
「もちろんだ。 ただ、高校生だった世界にも還れる」
俺は、迷わなかった。
「殺した奴に復讐してやる」
「分かった。 だが、その為にはまず、お前に本来付加されているはずの能力を全て開眼させる」
すると、身体にいきなり何かが流れ込んできた。
それも、尋常じゃない量だ……これは、情報……?
「そうだ、全部吸収しきって貰う。 別に何もしなくていい。 ただ、気が触れないようにだけ注意しろよ」
その言葉を最後に、さっきとは比べようのない量の気――情報が奔流となって俺の身体を巡って頭に流れ込んできた……。
あぁ……気が遠くなる……くそ…………これさえ耐えれば、復讐してやれるんだ……。
そし、て……みんなの……安否を…………。
『おい、ここが【封印の棺】の墓地か?』
男の声……。
『あぁ。 ったく、なんでこんな僻地にこんな面倒なもん作ったんだか……。 おい、魔力玉寄越せ』
『おう、これだな』
上の方で、何かが置かれた。
途端に、なにかに締め付けられたような気がした。
『さて、用事も済んだし、奴隷娘を王国に運ぶか』
『一応要人の娘だからな。 逃げられねーようにしねぇと』
足音が、遠退いて行く。
『よう、目覚めたみたいだな。 いいか? お前はもう自由だ。 こっからは自分の意思で生きていけよ。 お前に付加したチートについて説明してやるからよく聞け。 まず、お前は魔法が全く効かない体質になった。 それから、全魔法属性が使え、さらに魔法創造も思いのままだ。 中でも、特化属性は《闇》だ。 ただし、街中では無闇に《闇》魔法を使うなよ? あと、基礎体力なんかも全部格段に上がってる。 でも、昼間はある程度性能が落ちるから気をつけろよ。 そして最後に、武器は一緒に埋められてるから好きに使え。 以上、復讐の人生に幸あれ』
瞬間、俺は創造《闇》魔法、〈爆〉を使った。
イメージ的には、辺り一面を闇の魔力で爆ぜさせる感じ。
そして、俺は生き返った。
目の前には腰を抜かした兵士が二人。
とりあえず足元の刀を拾い、二人の許へ歩み寄ると、恐怖で顔が引き攣っていた。
「な、なぁぁ……」
「ひぃぃぃ……」
ふと彼らの足元を見れば地面が湿ってきている。
失禁か。
「なぁ」
「は、はひぃぃ!」
俺が一声かけると、兵士が悲鳴の様に答えた。
「お持ちの金と身ぐるみ全部寄越してくれないか?」
穏便に話しかけると、兵士は震えるばかりでアクションがない。
きっとくだらない葛藤をしているのだろう。
彼らは動き、考え、抵抗するから面倒だ。
そんなかつてたどり着いたことのない思考にたどり着いた瞬間、殺戮の衝動が俺を襲った。
そして、堪えきれずに目の前の兵士の首を空いている左手で凪いだ。
「あぁっあああぁ!!」
半狂乱に陥ったのは相棒と思われる兵士。
「……さぁ、身ぐるみを全部寄越せ」
自分でも信じられない程低い声。
穏便に話しかけたつもりが、全く逆効果になってしまったようで、兵士は腰砕けになりながら剣を俺に向かって振った。
やはりと言うべきか、俺はまた左手で男の首を――次は握り潰した。
それを、他人事のように俺は見ていた。
結局回収出来たのは僅かな貨幣の入った袋二つ。
正気に戻り、戦利品を見つめながら、自分のしたことに非現実感と吐き気を覚えた。
足下に転がる死体を、改めて見た俺は盛大に嘔吐してしまった。
何も胃には入っていなかったことが今は幸いだった。
「はぁ……はぁ……」
魔法で精製した水で顔と口と左手を洗浄した後、周りの景色を見渡す。
現在は夕方から夜になると言ったところの時間帯、か。
少しきょろきょろすると、小振りな馬車があった。
さっきの兵士達のものだろうか。
そういえば、奴隷娘がどうのって言ってたから、この中にいるのかな?
馬車の扉を開こうとした時、自分の身体を見ると、見事に素っ裸……ではないが、ほとんど裸だ。
埋められたときに元々下着しか着せられてなかったみたいだ。
とんだ嫌われ者だな、おい。
と、御者席に雨避け用と思われる黒色の地味な外套があったのでゲットして早速装備。
気を取り直して馬車の扉へ戻り、開けようとするが開かない。
ちょっと《分析》してみると、魔法で鍵がかかっているみたいだ。
解錠の魔法とか知らないな。
なら作ろうと言うことで、さくっと《無》属性魔法〈解錠〉を創造して唱える。
あれ、魔法を口にしないでも魔法使えるじゃん。
小気味いい音と共に鍵が外れた。
そして、中にいたのは――。
誰が中にいたんでしょうねぇ。
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