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ドラゴンと―ばつ ②

 無限に広がるかとさえ思える広大な荒野。


 荒々しく削られた巨大な岩はあらゆるところに転がっており、平坦な場所など何処にもない。草木は申し訳程度に見えるぐらいで、荒れ狂う無数の竜巻や砂嵐などにより、いつ絶滅してもおかしくないほどだった。ちらほらと見える生物も、この悪環境の中生き残るためかほとんどが屈強な怪物であった。


 ここが、リ・ガロス荒野か。なんともまぁ、壮絶な場所である。


 こんなところに住み、主をやっているぐらいなのだから、デュオ・ケパレードラゴンはさぞかし屈強に育ったのだろう。


 思いつつ、全生物を合わせても最強の視力であろう目を凝らし、デュオ・ケパレードラゴンを探す。そして探し始めてから数秒後、俺は激しい砂嵐の先に巨大なドラゴンを見つけた。おそらく、あれだろう。俺の知るデュオ・ケパレードラゴンの魔力にも一致する。


「見つけたぞ。ここから約150m先だ」


 150mぐらいなら空間転移で一気に行けるだろうが、残念ながら空間転移ではユーリとシーナを運ぶことが出来ない。


 俺はやむを得ず普通に飛んで行くことにするが、いきなりドラゴンの前に現れたら、シーナとユーリがやばいことを思い出す。 


 そうだな。


 ――守障壁(トイコス)

 ――聖光防壁(アミユンテ)


 俺は一気に最強の結界魔法を二つ、ユーリとシーナの半径10mにかけた。さきほど風よけのために使った防御光陣(アミュンポース)も合わせ、この三重の防御壁を破れる者は全世界を合わせても数人と居ないだろう。


 まぁとにかく、これで二人の心配はまったくする必要が無くなった。


 俺はもう一度二人の手を握り、飛び立つ。


 空間転移を使わずとも150mという距離を一瞬で飛び抜け、すぐ目の前には巨大なドラゴンが現れた。


「シーナ、ユーリ。結界から絶対出るなよ。ここで見ててくれ。すぐ終わる」


 俺は二人が頷いたのを確認すると、デュオ・ケパレードラゴンと対峙した。


 ごつごつした岩肌に赤眼二頭が特徴的で、いきなり現れた俺を、灼熱の鼻息で威嚇する。


 ぶぎゃぁぁぁぁぁぁぁ!


 二つの頭のうち、右側がそう吠え、それが合図かのようにドラゴンは飛来する。そしてブレスを一度吐き、俺に突撃してきた。


 体長は俺の20倍ほどで、体積はおそらく千倍以上。当たったら普通の人間ならさぞかし強烈なのだろう。


 だが、この程度のパワーを持つ相手とは何度も闘ってきている。止めることなど造作も無いことだった。


 俺はブレスをバックステップで難なくかわし、両手に少しだけ魔力を込める。そして、突進してくるドラゴンの頭を押さえた。


 ぐぎぎぎぎゃぁぁぁぁぁぁぁ!


 最初に左側の頭を止めると、ドラゴンはそう悔しそうに吠え、今度は右頭で突撃してくる。俺はそれをも止めると、両手で二つの頭を持ち上げ、ふんっ、と真横に遠心力で投げつけた。


 体長30mにもなろうドラゴンを軽々20mほど投げ飛ばすと、


 ――炎轟龍巻(ケイクシス)


 心の中で呟き、砂塵の竜巻に負けぬ巨大な炎の竜巻を作り出した。


 それを魔力操作でドラゴンにぶつけると、ドラゴンは竜巻の回転力に負け、浮き上がる。ブレスを放ち、もがいても見せたが、そんなちんけな攻撃で俺の魔法が相殺されるはずもない。


 ドラゴンは今頃、炎の竜巻の中、無限の灼熱地獄を味わっている頃だろう。


 ぐぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!


「……」


 断末魔のようなその叫び声もしばらくすると聞こえなくなり、俺は炎の竜巻を消した。


 かなり上空まで浮かび上がっていたドラゴンは、どたっと地上に落ち、もう再び動き出すことはなかった。


「終わり、だな」


 俺はそう呟くと、討伐の証しにデュオ・ケパレードラゴンの赤眼を四つ持ち帰らなければならないことを思い出す。丸焦げになっているドラゴンに近づくと、俺は赤眼をえぐり取った。血で手が赤く染まってしまったが、気にはならない。


 荒れた地上で手を握り合いながら立つ二人の少女。そんな、ぽつんとこの荒野に取り残されてしまったような二人の元へ、俺は戻ることにした。


「あー、終わったぞ」


 そして二人の前に付くと、俺は頭をぽりぽりと掻きながらそう言った。

 すると、


「せ、セルにぃっ。その手どうしんですかっ?」 


 と、シーナの驚き心配する声。


「あー、大丈夫だ。シーナ。俺の血じゃないから」


「そ、そうなんですか……?」


 俺自身は気にならないが、少女の前で血まみれの手でいるのはやはり良くないことなのかもしれない。そう思い、魔力で消すことにした。


「ああ。――ほら。傷ないだろ?」


 浄化した手をシーナに見せると、シーナは安心した表情をし、


「……それなら、えと、良かったです」 


 と、控えめな笑みを零した。


 俺はその笑顔を脳裏に収め、ユーリとシーナの手を握る。


「んじゃ、さっさとギルドに戻るか。もう、夜遅いしな」


 そしてそう言って、俺はもう一度、超高速で飛び立った。


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