『お姉さまばかり』と言われました。
悲壮な美しい話が書きたかったはずなのに…どうしてこうコミカルな言葉が多くなった…?
・誤字報告ありがとうございます。
「ねえお母様!私に妹が生まれるの?とっても楽しみ!」
「ふふ。きっと可愛い子よ。良い姉になってね。リリア。」
母の丸いお腹を撫で、私はこれからの生活に期待を膨らませたのだった。
**
「ずるい!!お姉様ばっかり…!」
ルルレアはいつものように泣き叫んだ。もう、抵抗する気力もない。
あぁ、またか。
そう思った。
事が始まったのは、私の10歳の誕生日の時。
普段なら許してもらえないような豪華なドレスを、両親にもらった。とても嬉しくて、ルルレアにも見せに行った。
ドレスを見た瞬間、ルルレアの顔が嫉妬の色に歪んだ。
ルルレアが病弱で、あまり自由に欲しいと言えないのもあったと思う。ルルレアは、私が貰ったドレスが羨ましいと言った。
『私は、そんな素敵なもの持ってないのに。』
妹は泣き叫んだ。
「ずるい!!どうしてお姉様だけ!?私だって…!…ずるい!!」
私はそうそうに説得を諦め、両親も駆けつけてきた。
「どうしたの、ルルレアちゃん?そんなに泣かないで…。」
「お姉様がもらったドレス、私も欲しい。」
妹は泣き腫らした目で言った。
「あのドレス…でも…。」
両親が困ったようにこちらを見つめた。このドレスは流行りのもので、もう数が少ない。今すぐ代わりを探すのは無理だろう。
「ルルレアちゃん。また今度あげるから…」
今日は諦めてちょうだい。そう両親が言いかけた。
妹はまたみるみる目に大粒の涙を溜めた。
その様子を見て両親は慌てたようだった。あの大泣きがいつまでも続けば大変だと思ったのだろう。
「リリア…。あなたは姉だから譲ってあげられるわよね?」
「そうだ。また今度買ってきてあげるから。」
お父様も言った。
断れる雰囲気では無かった。お母様たちの目が言っていた。そうしてと。
私は震える手でルルレアにドレスを手渡した。
「…ルルレア。このドレスは、貴方にあげる。」
するとルルリアはぱあっと花のように笑顔になった。
「わあっ!ありがとうお姉様!」
私の手からドレスを素早く取り、機嫌が良さそうに自分の部屋に戻って行った。
私は思った。一度だけだし、また買ってきて貰えばいい、と。
**
一度、泣けば許されると知ったルルレアは暴走した。
私が持っている服、本、何でも欲しがるようになった。
「ルルレア、貴方はもっと良いもの持ってるでしょ?」
そう諌めようとしても無駄だった。
「私が欲しいって言ってるのに!!ひどい!お姉様なんて大っ嫌い!!」
そうやっていつも泣き出した。
そしてお父様とお母様はルルレアの味方ばかりするようになった。
「リリア。お前はルルレアと違って健康で好きなことをできるんだから、ルルレアが欲しがっているものくらいあげられるよな?」
「…はい。お父様。」
私は一度も抵抗しなかった。意味がないから。
そして私が抵抗できずに物を奪われていく様子を、ルルレアは楽しそうに見つめていた。
**
「リリア。お前の婚約者が決まったぞ。」
そんなこと今まで一度も相談されてない。初耳だ。
「…お相手はどなたなのですか?」
「お前には勿体無いような相手だ。侯爵家のレオ様だぞ!」
リナード侯爵家…社交界で名は聞いた事がある。
…私のこと、大事にしてくれるのかな?
少しばかり期待を持って私はレオ様に会いに行った。けど、そんなささやかな期待も打ち砕かれる。
「我はレオ・リナード!由緒あるリナード侯爵家の一人息子である!」
自慢しかしない自画自賛男。期待した私がバカだった。
確かにリナード侯爵家は由緒ある正当な家だが、後継がこれでは将来が不安である。
それからレオ様との交流の際はひたすら相手の話に相槌をうちまくる事に徹した。
何の話をしても一定以上の関係しか保とうとしない私はレオ様にとっても退屈だっただろう。
**
そのうちルルレアが羨ましいと言い出した。
「ねえお姉様。お姉様の婚約者のレオ様って素敵な方ねぇ。いいなぁ…羨ましい…。」
確かにレオ様は見た目だけ見れば秀麗で頼もしそうに見える。が、実際関わるとわかる。やばいナルシスト。
「リリア!レオ様がいらっしゃったわよ!」
そんな時に響くお母様の嬉しくない呼び出し。
すると私が向かうより先にルルレアが玄関に向かった。レオ様の驚くような声が聞こえる。
「っ、君は…?」
「わたし、リリアの妹のルルレアと申しますわ!一度お会いしてみたかったのです。レオ様。」
そこでルルレアがとびきりの笑顔を浮かべる。まさに天使のよう。これでおちない男を私は見たことがない。
その後、私とレオ様は庭園に出た。すると、レオ様の口からルルレアの名が。
「なあ。先ほどの女性はルルレアというのか?」
「えぇ。そうですけれど。」
レオ様はしばらく宙を見つめ、ぽつりと呟いた。
「…美しい、方だったな。」
「…そうですか。」
その後私たちは喋らなかった。レオ様はずっと遠い目で考え事をしていた。きっとルルレアの事だろう。
当たり前だ。ルルレアは、とても可愛い子。
私だって、愛らしい妹が生まれてとても嬉しかった。
**
次の週、レオ様が自主的に我が家へいらっしゃった。
珍しい。
今までは私が声をかけなければ来ることは無かったのに。
裏庭で待っていると言うので行ってみると、聞き慣れた声。
「これを私に…!よろしいんですか?レオ様。」
ルルレアである。そこにレオ様の声も。
なるほど、今日は私に会いにくると言う名目でしたけど。本当はルルレア目当てでしたか。
「君のために選んだんだ。受け取ってくれると嬉しい。」
物陰から2人をみると、真っ赤なバラの花束をレオ様がルルレアに差し出していた。
確か、赤いバラの花言葉って「あなたを愛しています」だったはず。
告白しているようなものね。
ルルレアはそう言った教養は受けていないので、全く意味がわかっていなさそうだ。
「嬉しいです!…でも、お姉様には良いんですか?」
するとレオ様は顔をしかめながら言う。
「あいつは表情が全然変わらない。つまらないんだ。」
私も貴方のことは全く好きではないので、お互い気が合いますね。
取りあえずこれ以上聞いていても意味はなさそうなので、そっと立ち去った。
**
その後、やることもないので市街に出向いた。活気な市場や人々を見ていると、あんな家でもあと少し耐えようという気分になれる。
お気に入りの本屋に入り、いろいろ物色する。
「楽しそうですね、リリア嬢。」
声をかけられ、振り向くと彼が立っていた。
「まあ、ヒアス様。お久しぶりですわ。」
彼はヒアス・ハルバント公爵。若くして公爵家の当主であり、陛下からも絶大な信頼を得ている。
銀髪に碧眼。見目麗しく、王国の貴族女性たちは彼の話で盛り上がっている。
そんな彼と私が知り合ったのは、舞踏会ではなく、この本屋だった。
お互い読書が好きで、蔵書が国一番多いと聞いてやって来たのだった。
「…何かあったのですか?」
彼は鋭い。表情でいつもと違うことを察したようだ。
「私が、リナード侯爵家のレオ様との婚約したことはご存知でしょう?そのレオ様と妹がやけに親密そうにしていたところを目撃したのです。」
「それは…彼らに聞くべきなのでは?」
あ、そっか。レオ様はあまり夜会に出席したことがない。
彼の人となりを知らないなら、そう言う考えになりますよね。
「うふふ。大丈夫ですわ。私、全く気にしておりませんから。むしろ婚約破棄して妹とくっついて欲しいくらいです。」
ヒアス様は少し驚いたように目を細めた。
「…そうなのですか。ですが、婚約破棄されてしまえば、貴方の評判は地に落ちてしまうのでは?」
そう。問題はそこである。
この王国で婚約破棄された令嬢は、家で一生質素に暮らすか、平民として暮らすしかない。
あの家にいたらルルレアにこき使われる日々が続くだろう。なので、平民として暮らすのが一番妥当だと思っている。
そう言うと、彼は複雑そうな顔をした。
「…何とかなります。それに、今は楽しいことを考えていたいのです。」
そう私が言うと、彼はある本を手渡してくれた。
「あなたが探していた本です。先日偶然見かけたもので。」
「まあ!ありがとうございます。」
それから私たちは本屋で長い間おしゃべりをした。
彼と話している間だけは家のことやレオ様のことを考えずにリラックスできる。
**
翌月。私はレオ様に呼ばれ賓客室に出向いた。
そこには、私以外の家族と、レオ様がいた。
その時点であらかた想像はつく。
「リリア・ランシュタイン!俺は、お前との婚約を破棄する!」
「理由をお伺いしても?」
間髪入れずに問うと、少しレオ様は驚いたようだった。
私が泣き叫ぶか何かすると思ったのだろう。
「お前はこの数年間、俺の愛しいルルレアを虐めていたそうだな!許せん!」
ルルレアも涙を浮かべしゃくりあげている。
「よってお前をこの家から追放する!二度と帰ってくるな!」
「私の物は全て持っていってよろしいですか?」
レオ様はめんどくさそうにうなずいた。
「お前のものなどいらん!全て持って今すぐ消えろ!」
「はあ。そうですか。それで私を婚約破棄すると。…どうぞしてください、さようなら。」
「は?……いや、ちょっと待て!おい!」
最後に私はルルレアに近づき、耳元で囁いた。
「婚約破棄するなら、私の役割だったことも全部変わってね?」
ルルレアは不審そうにこちらを見つめていた。
私は自室に戻り、荷物をまとめて家を出た。
**
とは言っても、特に行く場所もないので市街をうろうろする。どこか宿にでも泊まろうかな。と、ヒアス様が驚いたように声をかけてきた。
「リリア嬢。なぜこちらに?今の時間は本邸で夜会が開かれているはずでは…?」
「婚約破棄されたんです。だから、もうあの家には戻りません。」
そう言うと、ヒアス様は一瞬固まった。
「…行く当てはあるのですか?」
「そんなものありませんわ。平民として何か仕事を得たいと思っています。」
「それでは、我が家で財務の仕事をしてくださいませんか?」
…財務?
「我が家からの出費、そして入って来た金額を記録していただきたいのです。」
「構いませんが…私ではなく、一流の方をお雇いになった方が…」
困惑しながら言うと、彼は首を横に振った。
「あなたが計算や事務の仕事がお上手と言うのは国中に広まっていますから。」
「そこまでではないと思うのですが…じゃあ、甘えさせていただきます。」
こうして私はハルバント公爵家での財務の仕事をする事になったのだった。
**
ハルバント公爵家につき、部屋を案内してもらった。
綺麗な部屋で、家具もある程度揃っている。
「この部屋を使ってください。何か要るものなどありましたら言ってくださいね。」
「ありがとうございます。ここまでしていただして…」
彼は気にすることはありませんと言っていたけれど、やはり仕事でお返ししなければ。
もらった書類を手に、机に向かう。
ざっと確認すると、一部計算が合わない部分がある。申告されている分より少しずつお金が無くなっていた。
「ヒアス様。ここの部分が合わないのですが。」
「…本当ですね。気づきませんでした。」
彼は驚いたように言った。
「今までの方は気づいておられませんでしたが、さすがですね、リリア嬢。」
昔から計算や表を確認するのは得意だった。これなら私も役に立てそうだ。
**
リナード侯爵家では、混乱が起きていた。
「レオ様!もう財産が底をつきそうです!」
「なんだと!?数週間前まではまだ何百万かあっただろう!」
そう言うと、従者は言いにくそうに口ごもった。
「あの…ルルレア様がですね…投資に全財産を注ぎ込んでしまいました…」
「は…ルルレアが?」
「はい…」
暇そうにしていたルルレアは言う。
「え〜?だって、投資したらお金が増えるって誰かが言ってたんだも〜ん。」
まったく自分がやらかした事をわかっていない。
従者と2人して呆然と突っ立っていると、執務室の扉が乱暴に開かれた。
入って来たのはリナード侯爵だった。
「この……バカ息子ォ!!」
「ち、父上…!?」
ズカズカとレオに近づき、大声で言う。
「お、ま、えは!!自分の婚約者がどれだけ我が家に尽くしてくれていたか知らんのか!」
「は…?いや、あいつは何もしてなかったでしょう!」
なんでここでリリアの話が出てくるんだ?と困惑しながら反論したレオを、しかし侯爵はねじ伏せる。
「リリア嬢は、お前がどこぞの女性と話している間に外国の使節団と交渉してくれていたのだ!」
「し、しかしそんなところ今まで一度も…」
「お前が知ろうとしなかったからだろう!」
反論しかけたレオに、さらに侯爵が畳み掛ける。
「出費、収入、外国との交渉の取り付けなど、あの方は善意で我らの仕事を肩代わりしていてくださったのだぞ!」
「そ、そんな…」
「本当にお前は、なんて事をしてくれたんじゃ!」
レオはようやく、リリアが自分には消極的だったものの、婚約者としてはこれ以上ないほど働いてくれていた事を知るのだった。
**
「お手紙ですよ、リリア様。」
数ヶ月後。メイドが部屋に手紙を届けてくれた。署名は私の家になっている。
『戻ってこい。急ぎ確認したいことがある。』
レオ様からだった。めんどくさそうな背後を感じたが、行かないわけにもいかない。
リナード侯爵家には今までも何度か行ったことがあった。レオ様の執務室に案内される。
扉を開けた瞬間、ルルレアが泣きついて来た。
「お姉様!ずっと、ずっと会いたかったの…!」
涙を浮かべている。
これで落ちると思ったんだろうけど、ずっと両親に向けられるのを見て来た私には効かない。
「はなして。」
ルルレアの手を振り払い、横のレオ様に目を向ける。
「それで?私をこんな所にまで呼び出した要件は何ですか?」
「お前がいなくなってから仕事が進まない。金はやるから仕事をしろ。」
はあ。
「断固拒否します。」
まさか断られると思っていなかったのだろう。目を丸くしている。むしろ何故受け入れられると思ったのか。
「何故だ!?金はやると言っているだろう。」
「あなたの下で働くと言うのがいやなので。そもそも私、今別のところで働いておりますので。」
それに、いなくなるまで私がしていた仕事に気づかない程度の人、助けたくない。
レオ様は私の言い草が気に食わなかったらしい。
「ふん!せっかく人がお前を助けようと温情をかけてやったというのに、そんな気も失せたわ!さっさと去れ!」
言われなくてもそういたしますとも。
**
「レオ様ぁ。私、投資がこんなに難しいなんて知らなかったんです〜。」
ルルレアは渾身の泣きを見せる。
「大丈夫だ!これから仕事を頑張れば良い!早速だが、この計算表が合っているか確認して欲しい。」
すると、ルルレアは困ったように眉を顰めた。
「レオ様ぁ。何ですかこれ?数字がいっぱい書いてありますけど…私、計算とか得意じゃないんです〜。」
レオは絶句した。ルルレアに見せたものは比較的簡単なもので、出来ないとは全く思っていなかった。
これができないのでは、何も任せられなくないか?
「ル、ルルレア…計算とか、リリアは得意だったじゃないか?できないのか?」
リリアの名を出した途端ルルレアの機嫌は急降下した。
「…ひどい。お姉さまと比べるんですか?お姉さまとは違うからいいって言ってたじゃないですか。」
レオは慌ててルルレアの機嫌を取り出したが、不安になるばかりであった。
**
「リリア嬢。今度の夜会に一緒に出ませんか?」
ヒアス様からそう言われたのは、夜会の一週間前だった。
「夜会に…ですが、婚約者でもない私をヒアス様が同行すれば、嫌な意味で注目されてしまうのでは?」
そう聞くと、ヒアス様はわずかに顔を赤らめて咳払いをした。
「そうですね。あの…突然のことで驚かれるかもしれないのですが、私と婚約していただけませんか?」
「…はい?」
ヒアス様は真剣な表情で言った。
「実は、数年前からあなたのことをお慕いしていたのです。ですが、その時すでにあなたはリナード侯爵子息の婚約相手でした。いくら公爵でも、他人の婚約者を奪い取るわけにはいきませんから。」
「………」
沈黙する私にヒアス様はさらに語り掛ける。
「もちろん、婚約破棄されてすぐで、考えられないのも分かります。ですが、早くしないとあなたは誰かのもとに行ってしまうのではないかと…」
そこで私はようやく口を開いた。
「嬉しい、です。私も、ヒアス様と話している間だけは役目から解放されることが出来ました。あなたとなら、もう一度、婚約してみてもいいかもしれません。」
ヒアス様は嬉しそうに顔をほころばせた。
**
夜会当日。レオは疲れ切った表情で歩いていた。
ルルレアが何もできないということが発覚したためである。
どんなに簡単な計算や、交渉、はては洗濯物などいろんな仕事を任せてみたが、何もできない。今まで両親に何をやっても怒られず、欲しいものは何でも手に入れていたからだろう。
それでも、ルルレアの機嫌が悪くなると烈火のごとく怒りだすので、レオはルルレアを放り出すことが出来ずにいた。
これなら、リリアを婚約破棄しない方がよっぽどよかった…
そう思いルルレアと苦笑いしながら話していると、リリアが誰かと話している姿が見えた。
うす黄緑色のふんわりと広がるドレスが、彼女の纏う雰囲気にとても似合っていた。自分といたころは何を話しても笑うことがなかったのに、今はパートナーに微笑みかけて、心底幸せそうだ。
ふとリリアのパートナーを見た時、レオは危うく声をあげそうになった。
隣にいた男は、レオが普段から敵視していたハルバント公爵だった。彼もまた、普段はその手腕と冷徹なまなざしから多少恐れられている節があるのだが、今はリリアの話を笑って聞いている。
どこからどうみても、お似合いの二人だった。
そこでレオは気づく。
待てよ、なんであいつら一緒にいるんだ?別に婚約なんてしていなかったはず…
思っていると、少し離れたところで婦人たちが二人を見て話しだした。
「まあ…ご覧になって。ハルバント公爵とリリア様。美男美女でとてもお似合いよね。」
「確か、リリア様は数週間前までリナード侯爵家子息のレオ様と婚約してらっしゃったわよね?いつのまに解消されたのかしら。」
「なんだか、レオ様がリリア様を婚約破棄したらしいわ。でもその理由が理不尽で…それで、以前から彼女を心配していたハルバント公爵がリリア様に婚約を申し出たらしいのよ!」
「まあ!とても仲がよさそうよね。以前お見かけした時はリリア様は暗いお顔をしてらしたけど…あまりレオ様と上手くいってなかったのかしら…」
俺と婚約破棄して…ハルバント公爵と婚約しただと?あいつ、前々からリリアのこと狙ってたのか…
「リリア様は財務の仕事が得意でいらっしゃるから、ハルバント公爵家は前にもまして力が増しているらしいわね。」
「ハルバント公爵様も、いい婚約相手をお見つけになったわね。幸せそうで何よりだわ。」
あいつは、……婚約破棄していなければ、俺の支配下だったのに。
そうすれば、父上からも………見限られずに済んだのだろうか…
「レオ様…!私、今度欲しい宝石があるの!買って下さるでしょう?」
癒しを求め、リリアと婚約破棄した末に手に入れたルルレア。だが…毎日一緒にいるようになって、悪い点しか見当たらない。
今も、わが家の資産はつきかけているというのに、宝石をねだっている。彼女は、本当に俺にとって必要な女性ではなかったんじゃ…
後悔しても、もう遅かった。
**
「リリア嬢!」
振りむくと、夜会場から一人の男女が追いかけてきていた。以前は私の義父と義母だった人たちである。
「リナード侯爵様、侯爵夫人様、何用ですか?」
二人は、私に向けて深々と頭を下げた。
「わがバカ息子が、迷惑をかけて申し訳なかった。」
「今まで、あなたは私たちの家で努力してくれていたのに…息子の行動に気が付けなくてごめんなさい。」
「…顔をあげてください。お二人が悪い訳ではありません。ですが、私はもうレオ様に会う気はありません。」
そう言うと二人は顔をあげた。
「もちろんだ。本当に、すまなかった。今までリナード侯爵家の発展に力を尽くしてくれたこと、礼を言う。」
「あなたと、ハルバント公爵様の幸せを願っています。」
「ありがとうございます。それでは。」
「…彼らを憎んではいないのですか?」
「確かに、レオ様を育てたのはあの方たちです。けど…お二人は、私にいつも優しくしてくださいました。本当の父と母のように。ですから、感謝しております。」
レオ様は婚約破棄の一件で、廃嫡されたようだ。
ルルレアは伯爵家という身分でありながら侯爵家の方に夜会で馴れ馴れしく声をかけたらしく、両親ともども社交会では馬鹿にされているらしい。
リナード侯爵家がうまくやっていけるかは不安だが、侯爵と夫人の手にかかれば大丈夫だろう。
ヒアス様は納得したように前を向いた。
「さすが、リリアですね。そんな優しいところも大好きです。」
「…少し、恥ずかしいですわ。」
私たちは微笑みあい、馬車に乗った。
どうだったでしょうか?今回は、全てを奪っていく妹、そしてそれに加担(?)する婚約者をぎゃふんと言わせるストーリーでした。
もしよろしければ、☆や感想を送ってくださると幸いです。数ある作品の中から読んでいただきありがとうございました!




