第18話 ここではない
補修された窓から朝日が差し込んできます。
わたくしは窓辺に立ち、じっと外を見つめていました。空に昇る輝かしい太陽の光、それはまるで、今のわたくしたちを応援してくれているかのようで。
祝福してくれているかのようで。
――勇者の胸の中で眠ってしまいましたわ。
ひび割れた床。
炎で焦げた壁。
傷ついた勇者の肩。
もうここには住めません。
だけど、ちょっと楽しい場所でもありました。
調理室へ行き、焜炉に火を起こしました。ありものの野菜と肉で野菜炒めをつくります。油をしいて具材を投入しました。ジュージューと炒める音がして、かぐわしい香りが漂います。味見をしながら塩加減を調節しました。
気づけばテーブルの椅子にはマコトがいて、微笑みを浮かべています。黒髪に白い肌、石鹸の匂いのする男。すらっと背が高くハンサムな顔立ち。まるで絵画のよう。
こんな凜々しい男に選ばれたのかと思うと、誇らしさが胸に湧き上がりました。
出来上がった野菜炒めとパンを食器に盛って、テーブルに並べます。
わたくしは笑みを浮かべました。
二人の距離感は、もう戻っており。
「マコト、朝食よ」
「ああ、ありがとう」
「残さず食べなさいね」
「そうさせてもらう」
わたくしも椅子に座り、いただきますを言ってご飯を食べ始めます。フォークを持ち、野菜炒めを口に運びました。
あら、美味しく出来たわ。
コップにつがれた水道水を口に含み、パンを千切ります。
そして決意を胸に、つぶやきました。
「マコト、朝食が終わったら、ここを出ましょう」
「そうだね」
「ここはもう王国に知られています。それに、ここに住んでいれば、以前利用していた人々が嗅ぎつけるかもしれません」
「うん」
「わたくしたちの居場所ではありませんわ」
「分かった、そうしようか」
朝食が終わると、シンクで食器を洗い、棚に返しました。それから荷物をまとめます。
心の中で、仮の住居に別れを告げました。
短い間でしたが、ありがとう。
楽しかったです。
それからマコトと目を合わせて頷き合いました。
「行くか?」
「はい」
「どこへ行くんだ?」
「どこまででも」
マコトが苦笑しつつ、しかし頼もしい表情です。
言葉は冗談ではありません。
ただ、行き先はまだ決めていませんが。
床と壁の焦げ跡が目に入りました。
わたくしたちは、一緒に室内後にします。扉の閉まる音がしました。通路を歩き、シャッターの裂け目から外へと出ます。
温かな外気に触れて、足取りが弾みました。
振り返りません。
「ここではありませんわ」




