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寝不足解消は病院で。

https://kakuyomu.jp/works/822139841307342761

ユキさんの活躍は上記『百物語が終わるまで』にて連載中です。なろう版を大改造していて若干設定が変わっているので、カクヨム版もお読みいただけると嬉しいです。

「俺、今日寝てくるわ。明日起きたら帰ってくるから」

 朝、弁当を定位置に置きながら、ユキさんが言う。

杞冬(こふゆ)はライブだそうだから、夕飯適当に頼むね」

「わかった。昨日のグラタンまだある?」

「弁当に分けて入れちゃったよ、ごめん。おとといの混ぜご飯なら冷凍庫にあるよ」

「じゃあそれもらうよ。お大事に」

「ありがと」

 ちょっと疲れてきてる気配はあったので、異論はない。

 ユキさんは、あまり長く眠れないのだそうだ。

 昔ケガした傷痕が痛くて、毎日疲れ果てるくらい働いて家事してそれでようやく眠れるのだという。それも、一時間半とか、長くて三時間。

 傷痕はほぼ常に痛くて、集中していたり忙しければ気にならないこともあるし、強弱はあるらしいが、眠るときなどは気がまぎれないので寝つきも良くない。体だけでも休めた方がいいんじゃないかと思うけれど、横になっていると痛みだけが気になってしまうので目が覚めたら起きることにしているのだそうだ。

 だから、家は広い割りにユキさん一人で綺麗になるし、結構凝った料理も出て来たりする。今日の夕飯だって主食は冷凍だけど、作り置きのおかずは色々あるのだ。

 さすがに疲れは溜まるらしく、月に一、二回まとめて眠ることにしているらしい。

 そして、その寝に行く先は病院だ。

 病院に、いつでも来てっ! と言われているという。

 一応、定期的に一泊入院という形らしい。

 眠り続けるために、強めの薬を点滴で入れるのだそうだ。それだけなら普通、病院からいつでも来てとは言われないだろう。

 ユキさんは、三度死にかけたことがあるのだという。

 一度目は、山で修業していた七年前、十八才になる頃。師匠がその時に消えたので、修業を終わりにしたという。『死んだ』ではなく『消えた』のだそうで、その余波で吹っ飛ばされたとかいうよくわからない話。

 二度目は、杞冬と一緒にケガをした四年前、二十一才になる直前の殺人事件のとき。後頭部から背中側の上半分くらいは傷だらけ。特に右側がひどく、眠れないほどずっと痛いのは、右肩の骨が砕けた傷だという。ほかはおおむね、皮膚が引き攣れて動きに合わせて痛いとか、季節によって痛いとからしい。

 三度目は、二年前の二十三才になる直前に仕事で参加したイベント会場が火事になったとき。そのときの火傷はすぐに治ったらしいけど、殺人事件の時の傷が再発したり内臓もやられたりしたのだそうだ。何故転落したわけでもなく内臓破裂や昔の傷痕が破裂するのかは全くもって理解できないのだけれど、ユキさんは殺人事件からこの事件までの二年間の記憶を失っている。

 今の家に杞冬と共に転居したことも、俺が同居していることも忘れていた。

 その間のことは、その時々に一緒だった人から聞いてだいたいわかっているけれど、思い出せてはいないらしい。俺の親とも通話していたし、俺と杞冬もいっぱい話をした。

 ユキさんが言うには、火事のときのことは思い出さない方がいいと、一緒に被害に遭った人達に言われているんだそうだ。状況的にそのダメージが大きくて記憶が消えた可能性が高いそうで、何が起きたかは話を聞いて知っているけれど、思い出す努力は放棄することにした、と。

 別に、ユキさんが何か悪いことをしたとかそういうことではないので、問題はないけど。

 最初、同居を始めた頃のぎこちない空気とか、そういう積み重ねたものも忘れちゃったんだなあと思うと、ちょっと寂しい。まあ、同居して二か月で忘れられたので、杞冬に比べればたいしたことないんだけど。

 ユキさんは、三度目に死にかけて入院したときから、不思議な能力を発揮するようになった。

 周りにいる人の治癒力を向上させるのだそうだ。

 集中治療室にいる間、周りの人たちが次々と回復していった。

 病院では、患者の並び順を変えて試してみたり、ユキさんをいろんな大部屋に放り込んでみたり、とにかく入院期間を長めに引っ張ったらしい。道理で、一見元気なのにいつまでたっても退院させてもらえないと思った。

 そして、時々病院に来てくれと頼まれ、定期健診の度に病院内で昼寝したりしていたらしいけれど、傷の痛みで眠れないことも多いため、今は月に一、二回集中的に眠るために病院に行って眠る。そのときに病院の希望する場所で眠るということで落ち着いたのだそうだ。

 ユキさんが言うには、ケガだろうが病気だろうが寿命の人にはほぼ効かないらしく、数時間程度死を引き延ばすのがせいぜいだという。

 寿命ではない場合は、いわゆる『峠』とか『山』とかを越えられたらというようなタイミングに、威力を発揮するらしい。

 そんなわけで、昼寝や泊まりは集中治療室のど真ん中ということもあるらしいが、寝ているだけなので気にしないという。

 ちなみに、同居している俺たちは風邪も引かないし、転んだケガくらいなら翌日にはきれいに消えている。

 ただし、この話は絶対秘密ということになっている。ユキさん以外の人間は、迷うまでもなく一切口外不可。それでも、知っている人は知っているので、たまにユキさんは強制的にどこかに連れて行かれることがある。ただ、寿命のない人には効果がほぼないし、劇的に治るわけではなく『峠を越える』手伝い程度なので、なんとか秘密は守られているらしい。

 翌日、ユキさんは元気になって戻って来た。まあ、元気になるなら、問題はない。

https://kakuyomu.jp/works/822139841307342761

ユキさんの活躍は上記『百物語が終わるまで』にて連載中です。なろう版を大改造していて若干設定が変わっているので、カクヨム版もお読みいただけると嬉しいです。

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