服の共用にも限度がある。
洗濯担当は、基本的にはユキさんだ。
男三人暮らし。洗濯は一緒くただ。
ドラム式洗濯機で乾燥までフルコース。洗面所にある着替えの仕分け籠に畳んで分別して入れておいてくれる。
ただし、洗濯機に入れるのは各自。ポケットの中身を抜くのは自己責任。下洗いが必要なものは各自。乾燥不可や普通に洗っていいかわからないときや、手に負えないときはユキさんに相談。シーツなどの大物はユキさんの都合で洗うので、声掛けがある。そういうルールだ。
うっかり土汚れだらけの体操服を投げ込んでも注意されるし、制服のズボンをネットに畳んで入れておかないとユキさんの目の前で自分でアイロンがけをさせられる。
ポケットにティッシュを入れておいたら、このときばかりは滅多に怒らないユキさんからも怒られる。
問題は、ユキさんが出張やら残業やらで洗濯が止まった時だ。
俺たちは、ほぼ体型が同じだ。
ユキさんは自称『百七十にちょっと足りない』身長で、薄っぺらい。肩幅は一応あるので、上半身はLサイズ。
杞冬は自称『百七十をちょっと越えた』身長で、やせ型。後ろ姿はユキさんとほぼ同じだ。
俺は身長は百七十三センチ、体重はほぼ標準の六十五キロ。ピアニストにも体力は必要なので毎朝ランニングもしているし、ウェイトトレーニングもしているので筋肉もちゃんとある。でも、サイズはLサイズ。
そんなわけで、服は共用できるのだ。
そして、洗濯が三日も溜まれば、問題が発生する。
「祥平! 俺のパンツ履いただろっ?」
風呂上がりの杞冬から苦情が出た。ユキさんは月曜から出張で、帰宅は土曜である明朝だ。一応、火曜に杞冬が一度洗濯をした。
「なかったから借りた。おまえはユキさんの借りればいいだろ?」
「借りたけど、ユキちゃん下はMだからちょっときついんだよ」
「俺はM入らないもん」
足りなくなった理由については、特にお互い突っ込まない。下洗いはきちんとするルールだ。
ちなみに、パンツはユキさんは色が薄目、杞冬は濃い目、俺のは黒系と決まっている。
「ああもう、洗濯するかー。でも、明日、ユキちゃん帰って来るしなあ」
「ここまで耐えたし」
「そうだよなあ。もう夜中だし。今週忙しかったから、明日は寝たいしなあ」
そうして、五泊の出張から戻ってきたユキさんは、ぎゅうぎゅうに詰め込まれた洗濯機を見ることになった。
もちろん、洗濯物を一部出さないと洗濯機が回らないことを承知のうえで入れた。ごめんなさい。
帰って来たら、ちゃんと洗濯は各自の籠に入っていた。ユキさんは、これくらいじゃ怒らない。
怒られたのは翌日の朝だ。俺の分のパンツがなくて、杞冬のパンツが一枚、ユキさんのパンツが二枚だったから。
「パンツの共用はやめようよ」
これまでも何度かやっていたのだが、今回はユキさんが出張からの朝帰りで一回まとめて洗濯された後だったために、バレたらしい。
夕方帰りなら洗濯機を複数回回しても、その日の洗濯も入るし、ユキさんは全部終わってからまとめて洗濯物を畳む。パンツの共用は想定外で、気づかなかったらしい。
新ルールが発生し、各自のパンツが買い足された。
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