第68話 渚のヴィーナス
シェアハウスの住人たちは、それぞれが思い思いに夏の海を楽しんでいた。
その日の気温はぐんぐんと上がり、午前10時には、32℃まで上昇した。
それでも、時おり吹く南風が心地よく、日陰に入れば快適に過ごせる状況だった。
明日奈はサングラスを掛け、パラソルの下でサマーベッドに寝そべり、ファッション誌を読みながら、色鮮やかなカクテルを楽しんでいた。
怜奈は、日差しを避けて海の家のテラス席に陣取ると、アイスティーを傍らに優雅に本を読み始めた。
瑞希は、SUPボードに乗り、巧みなパドル捌きで、あっという間に沖の方へと向かっていった。
祐希がビーチパラソルの下で海を眺めていると、自分を呼ぶ声が聞こえた。
「祐希~、ちょっとこっち来てぇ~」
それは砂浜にシートを広げ、寝そべっている里緒奈だった。
「ねえ、お願い……サンオイル塗ってくれない?」
そう言って、祐希にボトルを渡した。
里緒奈は派手なゴールドビキニの紐を解き、うつ伏せになっているが、その爆乳が横からこぼれそうだった。
「なんで僕が里緒奈さんに、サンオイル塗らなきゃならないんですか?」
「サンオイルは、男が塗るものって昔から決まってるの!」
「そんなの口からでまかせでしょ、まったくも~。
里緒奈さん……肌、焼くんですか?」
「そうよ、夏は小麦色の肌がモテるって、それくらい知ってるでしょ」
「そんなの知りませんよ……」
祐希は文句を言いながらも、里緒奈にサンオイルを垂らし、ゆっくりと塗りはじめた。
祐希が背中から太ももへと手を滑らせると、なぜか里緒奈が身体をくねらせた。
「ちょ、ちょっと祐希……
あんたの手つき、イヤらしいわよ」
ヌルヌルとした感触が性感帯を刺激するのか、里緒奈の白い背中が小さく波打った。
「そんなこと言われても、普通に塗ってるだけですから!」
「祐希、あんたの手つき卑猥……
なんか……本性が現れてる感じする……」
里緒奈の頬は赤く染まり、声には甘い吐息が混じっていた。
「ねえねえ、祐希くん、私にもサンオイル塗ってくれない?」
隣にいた、朱音が言った。
「はいはい、分かりました……」
祐希は朱音のくびれた腰から背筋に沿って、指を這わせるようにサンオイルを塗り広げた。
朱音の身体は、均整の取れたモデル体型だった。
張りのある滑らかな肌は、吸い付くような弾力があり、オイルはすぐに馴染んでいった。
「あ、ホントだ~。
手つきがいやらしい感じ、なんか分かる~」
朱音もサンオイルを塗られながら、身を捩り始めた。
「ね、朱音、私の言ったこと嘘じゃないでしょ……」
その時、波打ち際から祐希を呼ぶ声が聞こえた。
「祐希せんぱーい、こっちでビーチバレーしませんか~?」
振り返ると、ビーチボールを持った沙織、琴葉、未来、さくらが手を振っていた。
「今行くから~、ちょっと待ってて……」
祐希は、朱音のサンオイルを塗り終わると、その場を離れ、若手組の輪に加わった。
琴葉のアタックや、未来の回転レシーブ、沙織のジャンピングサーブ、さくらの可愛らしい空振りに一喜一憂し、汗を流した。
その後は、波打ち際で水を掛け合ってじゃれ合ったり、それぞれが大きな浮き輪に乗って波に揺られたり、童心に帰って本気の砂のお城を作ったりと、時間を忘れて楽しんだ。
しばらくして、祐希がビーチパラソルの下で、水分補給していると沙織が呼びに来た。
「あの、祐希せんぱい……ちょっといいですか?」
「ん、どうした?」
「せんぱいって……その……巨乳って好きですか?」
沙織は、上目遣いで聞いた。
「ま、まあ、男だったら、多分誰でも好きだと思うよ」
「じゃあ、ちょっとこっちへ来てもらえますか?」
祐希が何のことか分からないまま、沙織に手を引かれ波打ち際へ行ってみると、そこには深さ30センチほどの穴が掘られていた。
「せんぱい、この穴の中に寝て下さい」
彼女が指さしたのは、ちょうど祐希が寝そべられるような、人の形に掘られた細長い穴だった。
ご丁寧に頭の部分には、枕代わりの浮き輪が置かれていた。
「え、ここに寝ればいいの?」
祐希は、半信半疑のまま、そこに横になると、未来、琴葉、さくら、沙織の4人が、一斉に砂を掛けて祐希を埋め始めた。
すると乾いた砂が風で舞い上がり、祐希の顔に少しかかった。
「わっ、砂が……」
「祐希さん、ごめんなさい。
砂が掛からないように、これ掛けておきますね」
さくらは自分の首に掛けていたハンドタオルを広げ、祐希の顔に掛けてくれた。
祐希の視界は閉ざされたが、甘くフレッシュな女性の香りに包まれた。
(うわ~、さくらさんの匂いだ……いい匂い……)
祐希は思わず鼻の下を伸ばした。
「祐希さん、これで砂の心配はないですね。
すぐに終わりますから、少しの間我慢して下さい」
さくらはそういうと、作業に戻った。
タオルを掛けられ、視界が遮られた祐希には、彼女たちの会話が聞こえてきた。
「そこ違うよね、もう少し盛ろうか」
「下の方も、ちゃんと形作ろ」
などと怪しい会話が聞こえてきた。
そして、砂を盛り上げると、バケツで海水を汲み、砂の上に掛けて湿らせ、形を整え始めた。
水を含んだ砂は予想以上に重く、祐希の全身を締め付けた。
祐希は、彼女たちが何を作っているのか見当もつかなかった。
「せんぱい、もう少しで完成しますから、待って下さい」
それから5分ほど待っていると「完成~!」と言って未来と琴葉とさくらが大笑いした。
「せんぱい、巨乳、完成しましたよ」
「え、巨乳?」
沙織が祐希の顔からタオルを取った。
首を上げ自分の体を見た祐希は絶句した。
「え、もしかして……」
祐希は砂に埋められて、グラマラスな女性の砂人形にされてしまっていた。
特に胸のあたりには、うず高い2つの砂山が盛られていた。
「なっ、なんだこりゃあ!」
「せんぱい、凄い巨乳ですよ。
どうです? 巨乳になった感想は?」
「そんなこと言われたって、ここからじゃ全体が見えないよ」
「あっそうか、自分じゃ見えませんよね。
それじゃ、写真撮っておきますから、後で見て下さいね」
そう言うと、沙織はスマホを取り出して自撮りの構えをとった。
「みんなぁ、記念撮影するから、こっちに集まってぇ~」
4人の美女たちは、祐希の顔の近くに寄ってきて、思い思いのポーズをとった。
沙織は祐希の巨乳美女姿も入れて、5人全員が入る構図で写真を撮った。
あとで、沙織から祐希のスマホに写真が送られてきた。
それは祐希が巨乳のビキニ美女にされ、不安げな表情を浮かべ、周りには沙織やさくらが満面の笑みを浮かべて写っていた。
沙織が付けた写真のタイトルは「渚のヴィーナス」だった。




