第52話 相席ラウンジ
メイドカフェを存分に堪能したコジケンは、1時間ほどで店を後にした。
祐希は、コジケンがメイドカフェに満足したと思っていたが、そうでもない様子だった。
「あぁ~、なんか、釈然としない!」
駅へ向かう途中、突然コジケンが大きめの独り言をつぶやいた。
「何が、釈然としないんだ?」
祐希は、呆れた様子でコジケンに聞いた。
「あんな可愛い子が、祐希と同居してるってことが、釈然としないんだよ」
「そんなこと言ってもなぁ、事実なんだから、しょうがないだろ……
それに彼女は僕の幼馴染みでもあるんだし……」
「事実はそうかもしれんが、その『恵まれたラノベみたいな状況』が、俺は気に食わないんだ!」
「はぁ……さようですか」
「よし、祐希、次行くぞ」
「今度は、どこ行くんだよ」
「俺はな、手の届かない美少女よりも、手の届く少し可愛い女子がいいんだよ」
「コジケン、お前の言ってること、意味不明だぞ……」
「祐希、俺はな、女をナンパしに行こうぜって言ってるんだ。
分かったか?」
「ナンパって言ったって、お前ナンパしたことあるのか?」
「ない……ないけど俺はナンパできる店は知っている……」
「え、なんだよ、そのナンパできる店って……」
「祐希、相席ラウンジって、知ってるか?」
「いや、初めて聞くな」
「そうか、じゃあ教えてやるよ。
相席ラウンジってのはな、運命に導かれた男と女が出会う場所なんだ」
コジケンの話では、出会いを目的として男女のグループが集まる社交スペースだそうだ。
2人が入った相席ラウンジ「DEAI」は、高級感ある内装と落ち着いた雰囲気の店だった。
料金は女性が完全無料、男性はチャージ料と時間に応じて課金される仕組みだ。
「いらっしゃいませ~、お客様、当店をご利用されたことはございますか?」
女性スタッフが笑顔で迎えてくれた。
「いや、初めてだ」
コジケンが答えると、スタッフは手際よく身分証の確認とシステムの説明を始めた。
促されるままにスマホで会員登録を済ませると、スタッフは恭しく料金表を提示した。
「本日はどのプランになさいますか?」
「せっかくだから、VIPルームにしようぜ」
競馬でボロ儲けしたコジケンは、心もリッチだった。
VIPルーム利用料は決して安くないが、今のコジケンにとっては端金だ。
2人が案内されたのは、フロアの奥まった場所にあるVIP専用エリアだった。
そこは周囲の視線から遮られた半個室になっており、革張りのソファがいかにも高級な雰囲気を漂わせていた。
2人がVIPルームで飲みながら待つこと数分、スタッフに連れられて女性2人組が入ってきた。
「初めまして、よろしくお願いしま~す」
やってきたのは、女子大生風の2人組だった。
コジケンの向かいに座ったのは、小柄で愛嬌のある「かんな」。
胸元の開いたニットを着ており、推定Fカップはあろうかという巨乳だった。
巨乳好きのコジケンの視線は、かんなの胸元に釘付けとなった。
祐希の向かいに座ったのは、ロングヘアが似合うスリム系美女の「さおり」だ。
モデルのようなスリム体型で、少し大人びた雰囲気を漂わせている。
「すご~い! VIP席って初めて~!」
かんなが座り心地の良さそうなソファを撫でて声を上げた。
「ここ、結構高いんでしょ?
私たちラッキーかも……」
さおりは、驚いたように目を丸くした。
まずは備え付けのタブレットで、飲み放題のドリンクを注文し、乾杯を済ませる。
少し場の空気が緩んだところで、自己紹介が始まった。
「俺は小島健太郎、コジケンって呼んでくれ。
こいつは篠宮祐希」
「祐希です、よろしく」
「私は『環奈』です。こっちは『沙織』。よろしくね」
「2人は学生?」
コジケンが聞いた。
「はい、学生です」
環奈が答えた。
「どこの大学?」
「それは内緒で~す」
環奈と沙織は顔を見合わせて笑った。
「え~、ケチだなー。
俺らは星城大だけど」
「へ~、星城大学なんだ、頭良いんだね」
環奈が言った。
「ふふ、あなた雰囲気あるね。モテるでしょ?」
沙織が感心したように祐希を見た。
「いや、ぜんぜんモテないよ。
いまだに彼女いないし……」
無自覚な祐希は、本当にそう思っていた。
「へ~、あたし彼女に立候補しようかなぁ」
そう言うと、沙織はグラスを傾けながら、上目遣いで祐希を見つめた。
沙織は祐希を気に入ったようだ。
「実はさ、俺、昨日競馬で万馬券当てたんだぜ」
コジケンは得意げに言った。
「え~、すご~い、いくら当てたの?」
環奈が興味を示した。
「知りたい?」
「うん、知りたい知りたい」
環奈も沙織もその話に食いついた。
「じゃあ、見せちゃおっかな~」
コジケンはポケットから分厚い封筒を取り出した。
「見たい、見た~い」
環奈も沙織も興味津々といった様子で、その封筒を見つめた。
「ほら、これだぜ」
コジケンは封筒の中身を取り出して見せた。
「えっ、すっご~い、1万円札、何枚あるの?」
環奈が身を乗り出した。
「60枚」
「え~、競馬でそんなに儲けたんだ。凄いよね」
沙織も感嘆の声を上げた。
「凄いだろ、3連単が的中したんだぜ」
「いいな~」
2人は羨ましそうに声を揃えた。
「実はさ、この後ステーキハウスに肉食いに行こうと思ってるんだけど、一緒に行かない?」
「行く行く~」
女子2人はその話に食いついた。
「ただし、一つ条件があるんだけど、その後デートしてほしいんだよな、オレ達2人と……」
コジケンはニヤリと笑い、交換条件を口にした。
「いいよ~、デートする~」
女子2人はノリノリで答えた。
「よし、そうと決まれば、早速行くか!」
コジケンは席を立った。
「でもステーキハウスって、予約しなくても入れるのか?」
祐希が疑問を口にした。
「まあ、当たって砕けろだ。
もしダメだった時は、別の店にすればいいさ」
こうして4人はラウンジを後にし、近くのステーキ有名店へと向かった。
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