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第123話 2人きりのクリスマスイブ

 12月24日(水曜日)深夜11時。

 シェアハウスの住人たちは自室へ戻り、思い思いの時間を過ごしている頃だ。

 祐希は自室で、落ち着かない様子でドアを見つめていた。


 きっかけは、昨夜さくらから届いた『LINK』のメッセージだ。

『明日の夜、お部屋に行ってもいいですか?

 クリスマスイブを2人で過ごしましょう』


 もちろん祐希に断る理由はない。


 コン、コン。

 控えめなノックの音が響き、祐希は(はや)る心を押さえてドアを開けた。


「祐希さん……メリークリスマス!」


 ドアの外には、サンタのミニドレスに身を包んださくらが立っていた。

 真紅のベルベット生地には、真っ白なファーがあしらわれている。

 普段の清楚な私服とは違い、肩は大胆に露出し、ミニスカートから伸びる白い太ももが眩しかった。


「さ、さくら……その格好って……」


「これですか……?

 少しでも、クリスマス気分を味わえればと思って……」


 さくらは顔を真っ赤にして部屋に入ると、慌ててドアを閉めた。


「いや! すごく……可愛いよ。

 まともに見られないくらいだ」


 祐希の言葉に、さくらは嬉しそうにはにかんだ。


「よかった……

 このドレス、美里ママに作ってもらったんです。

 あ、それとこれも……」


 さくらが見せたのは、小さなケーキの箱だった。

 中には、直径12センチほどの可愛らしい4号サイズのホールケーキが入っていた。


 真っ白な生クリームの上に、苺が散りばめられ、「Merry Christmas!」と書かれたチョコレートプレートとサンタの砂糖菓子が乗っていた。


「わあ、美味しそうだね。

 美里ママがこれを?」


「はい……2人で食べたいなと思って、内緒でお願いしちゃいました。

 あ、それと魔法瓶にお湯を入れてきたんです。

 祐希さん、マグカップをお借りしてもいいですか?」


「気が利くなぁ。ありがとう」


 さくらは、2つのマグカップに紅茶のティーバッグを入れお湯を注いだ。

 するとダージリン特有の、マスカットのような華やかな香りが漂い、部屋を温かく包み込んだ。


「ありがとう。じゃあ僕も……

 ちょっと待ってて」


 祐希はクローゼットの奥から、高さ30センチほどのミニクリスマスツリーを取り出した。

 それをテーブルの端に置き、部屋の照明を消す。

 スイッチを入れると、ツリーに巻かれたLEDイルミネーションが七色に点滅し、薄暗い部屋を幻想的に彩った。


 2人はローテーブルの前の2人掛けソファに並んで座った。

 光に照らされたさくらの横顔と、サンタドレスの白肌が透き通るように浮かび上がる。


「よし、じゃあケーキ切ろうか。

 ナイフあったかな……」


「あ、待ってください!」


 祐希が立ち上がろうとすると、さくらが慌てて袖を掴んだ。


「切っちゃダメです」


「え? でも、どうやって食べるの?」


「……ケーキを2つにカットするのって、『分ける』=『別れる』に繋がる気がして……嫌なんです」


 さくらは上目遣いで、少し不安げに言った。


「だから……このまま、2人でつつき合って食べませんか?」


 その乙女心に、祐希の胸がキュンとした。


「分かった。じゃあ、フォークでそのまま食べよう」


 2人はそれぞれフォークを持ち、1つの小さなホールケーキを食べ始めた。

 肩が触れ合うほどに距離は近い。

 さくらは、美味しそうにケーキを口に運んだ。


 ケーキをあらかた食べ終えて、祐希がさくらを見ると、彼女の頬に、生クリームがちょこんと付いていた。


(無防備だなぁ……)


 その様子があまりに愛らしく魅惑的で、祐希の理性を一瞬ショートさせた。


「え……どうしたんですか……?」


 祐希が不意に顔を近づけると、さくらは驚いたように目を見開いた。

 そして祐希はペロッとさくらの頬のクリームを舐めた。


「っ……!?」


 さくらが一瞬固まり、ビクッと肩を震わせた。


「……ほっぺに、生クリーム付いてたよ」


 祐希の眼の前には、神々しいまでの透明感と気品を たたえた超絶美少女がいた。

 完璧なまでのフェイスライン、形の良い桜色の唇、整った鼻筋、潤んだ大きな瞳。

 腰までの美しくサラサラな長い黒髪、フラワーブーケのような甘い香り。

 理想的なボディライン、豊かな胸の膨らみ、透き通るような白い肌。


 さくらの顔が真っ赤に染まり、驚いた表情で祐希を見つめ返した。


「ゆ、祐希さん……」


 2人は見つめ合い、ゆっくりと顔を近づけると唇を重ねた。

 最初は軽く触れ合うだけの優しいキス。

 しかし、次第にそれは激しく、濃厚なものへと変わっていく。

 祐希はさくらの背中に手を回し、優しく抱きしめた。

 互いの吐息が混じり合い、甘いクリームの味が溶け合う。


「んっ……ふぁ……」


 熱に浮かされたように、祐希の右手がさくらの柔らかい膨らみへと伸びる。

 サンタドレスの上から胸に触れると、さくらは思わず甘い声を漏らした。


「ぁっ……!」


 その声に、祐希はハッと我に返った。

 今はまだ、その時ではない。

 彼女の父親が認めてくれるまでは――。


「……っ、ごめん……」


 荒い息を整えながら、祐希は名残惜しそうに彼女の胸から手を離した。


「……祐希さんと離ればなれになるの……私、寂しいです」


「え?」


「だって、年末年始、また実家に帰らなきゃいけないから……

 1週間、会えなくなるのが辛いです」


 抱き合ったまま、服越しに伝わる彼女の温もり。

 その健気な言葉に、祐希は彼女を押し倒したいという衝動を、必死に押さえた。


「僕もだよ。……でも、1週間なんてすぐだから。

 それに、離れていても繋がっていられるよ……

 そうだ、クリスマスプレゼント渡してなかったね」


 祐希は用意していたプレゼントをさくらに渡した。

 すると、さくらも「私もあります」と祐希に紙袋を差し出した。


「一緒に開けようか」


 パッケージを開け、プレゼントを確認した瞬間、2人は顔を見合わせて吹き出した。


「「あはは!」」


 祐希の手には、さくらからの「チャコールグレーのカシミヤマフラー」。

 さくらの手には、祐希からの「白のカシミヤマフラー」。

 色は違えど、選んだ素材もアイテムも同じだった。


「お揃いですね」


「ああ。これがあれば、離れてても温かいね」


 偶然の一致に微笑む2人。

 時計の針は、いつの間にか12時を回り、日付が変わっていた。


「……そろそろ、寝る時間だね」


 名残惜しいが、これ以上一緒にいると本当に一線を越えてしまいそうだ。

 さくらは、もらったばかりの白いマフラーを大切そうに胸に抱いた。


「祐希さん、メリークリスマス……おやすみなさい」


 最高の笑顔を残し、さくらは静かに部屋を出ていった。

 甘いケーキの香りと、彼女の残り香が漂う部屋で、祐希は温もりの残る唇に触れ、天井を仰いだ。

※創作活動の励みになりますので、作品が気に入ったら「ブックマーク」と「☆」をよろしくお願いします。

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