第120話 現役女子大生AV女優
祐希は空になったグラスを片手に、カウンター奥のドリンクディスペンサーの前に立っていた。
次に何を飲もうか迷っていると、背後から女性の甘い香りが漂ってきた。
振り返ると祐希の後ろには、新人バイトの星野澪が立っていた。
「先輩、パーティー楽しんでますか?」
澪は愛くるしい笑顔で、祐希の顔を覗き込んだ。
タイトなニットワンピースが澪のボディラインをくっきりと浮き彫りにし、豊かな胸元をより一層際立たせていた。
「うん、十分楽しんでるよ」
「篠宮先輩って『星城の英雄』って言われてるんですよね?」
「いや、そんな大したものじゃないよ……」
「今度、先輩の武勇伝、聞かせてくださいね……」
「うん、今度、時間のあるときにね……」
そこで祐希は、澪の顔をじっと見た。
どこかで見覚えがある……そんな感覚にとらわれた。
「先輩……私の顔に何か付いてますか?」
「いや、そうじゃないんだけど……
前に……どこかで会った気がするんだけど……」
「いえ……篠宮先輩とは、このカフェで初めてお会いしましたけど……」
「やっぱり、そうだよね……
でも、前にどこかで……見た気がするんだよ……」
すると澪は、なぜか冷や汗をかきながら、必死に否定し始めた。
「そ、そんなわけないじゃないですか……きっと気のせいですよ……」
この整った顔立ちと抜群のスタイル、そしてアンバランスなほどの巨乳。
間違いなく、どこかで見たことがある。
大学ですれ違ったのではない、もっと強烈な印象として。
(どこだろう……つい最近会ったばかりの気がする)
なぜか祐希の脳裏には、病院の特別個室が浮かんだ。
澪は首を傾げて微笑んでいるが、その笑顔を見た瞬間、祐希の頭の中でパズルのピースがカチリと嵌った。
それは、コジケンが見舞いと称して置いていったアダルトビデオ『現役女子大生AV8時間スペシャル2枚組』のDVDパッケージだ。
そこに映っていたAV女優の笑顔と、目の前の澪の笑顔が完全に重なった。
そして祐希は名前のアナグラムにも気がついた。
「ほしのみお」を並べ替えると「しおのみほ」。
間違いない。彼女は、現役女子大生AV女優の「志生野美帆」だ。
「思い出した……
もしかして、星野さんて、エーブ……」
言いかけた瞬間、澪の表情から笑顔が消え、慌てて祐希の口を塞いだ。
「せ、先輩……ちょっと、場所を変えて話しません?」
彼女は、強引に祐希の手を引き、有無を言わさず男性用トイレの個室へ連れこんだ。
後ろ手にカチャリと鍵を掛ける音が狭い個室に響いた。
祐希は便座に座らされ、目の前には仁王立ちした澪がいた。
さっきまでの清楚な雰囲気は消え、そこには苦虫を噛み潰したような渋い表情の女がいた。
「先輩って……記憶力、いいんですね……」
「やっぱり、そうなのか……」
「シッ。大声出さないで」
澪は扇情的な笑みを浮かべると、慣れた手つきで祐希のズボンのベルトに手を掛けた。
「な、何するんだ!?」
「口封じです。……いい思いさせてあげるから、私のこと、黙っててくれますか?」
抵抗する間もなくズボンと下着が下ろされ、露わになった祐希の「息子」を、澪の熱い口腔が包み込んだ。
そのテクニックは、まさに「プロ」のそれだった。
舌の動き、吸い付く強さ、喉の奥での締め付け。
素人のそれとは次元が違う、計算し尽くされた快楽の波状攻撃に、祐希の理性は瞬く間に消し飛んだ。
「んっ……ふふ、先輩のって、おっきい……」
上目遣いで祐希を見上げながら、澪は激しく頭を上下させる。
わずか2分も経たないうちに、祐希は限界を迎えた。
「うっ、だめだ、出る……ッ!」
祐希の体が跳ね、澪の口内へと全てが吐き出された。
彼女は一滴も漏らさずそれを受け止めると、ティッシュに取り出し、口元を拭ってニヤリと笑った。
「……任務完了」
呆然とする祐希の耳元で、澪は小悪魔めいた微笑を浮かべて囁いた。
「先輩、これで『2人だけの秘密』ができましたよね?
私の正体、誰にも言わないでくださいね。
……もし秘密にしてくれたら、今度はもっといい事、してあげますから」
そう言い残すと、澪は何食わぬ顔で個室を出ていった。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
身だしなみを整え、祐希がホールに戻ると、パーティーはさらにヒートアップしていた。
トナカイ姿のコジケンとサンタの衣装を着たマスターが肩を組み、クリスマスソングを歌って爆笑をさらっていた。
誰も祐希と澪の不在になど気づいていないようだった。
だが、沙織だけは違った。
戻ってきた祐希の顔が紅潮していること……
そして澪が、艶めいた表情で唇を拭っているのを、鋭い視線で捉えていた。
「……先輩、顔が赤いけど、どうかしましたか?」
沙織が探るような視線を向ける。
「ト、トイレに行ってきただけだよ……」
「ふ~ん、そうなんだ……
でも星野さんも、同じタイミングでいなくなってましたよね」
「偶然だろ、偶然。
それより見ろよ、すごいケーキが出てきたぞ……」
祐希は冷や汗をかきながら、話題を逸らした。
美里ママ特製の高さ30cmのクリスマスケーキがワゴンに載せられて運ばれてきた。
3段重ねのクリスマスケーキには、宝石のように散りばめられたイチゴに加え、マジパンで作られたサンタとトナカイの人形、「祝・祐希完治&Merry Christmas」のチョコレートプレートが飾られていた。
「何これ……すご~い!」
「可愛い! 食べるのがもったいないくらい」
女子たちの歓声が上がり、沙織の疑惑はかき消されていった。
祐希は冷や汗をかきながら、グラスに残っていた烏龍茶を一気に飲み干した。
まさか、あんな事態になろうとは予想もしていなかった。
その後、全員が輪になって各自が持ち寄ったプレゼント交換を行った。
最後は、明日奈のポケットマネーから出された賞品総額10万円の「クリスマス大抽選会」で盛り上がった。
そして、さくらが見事1等の『旅行券5万円分』を当てるとパーティーは最高潮に達した。
予定がすべて終了したところで、明日奈がパンパンと手を叩いた。
「は~い、みんな注目! 現在9時半です。
未成年の良い子たちは、お家に帰る時間よ。
みんなで後片付けしたら、タクシーに乗って帰りましょうね」
その言葉に従い、参加者全員で手分けしてパーティーの後片付けを行った。
16人もいるので、役割分担したら30分もかからずに清掃まですべて終了した。
「今日はとても楽しいパーティーでした。
また機会があれば、ご一緒したいですね、明日奈さん」
「はい、美里ママ、ぜひまたご一緒しましょう」
すっかり意気投合した美里ママと明日奈が握手してお開きとなった。
さくら、沙織、琴葉、未来、澪、キャンディの未成年組は、美里ママが手配したタクシー2台に分乗して帰ることとなった。
「私もみんなを送って帰るから、怜奈ちゃん後はお願いね」
明日奈自身も未成年組の引率のため店を出て、タクシーに乗り込んだ。
「さあ! じゃあうちらも移動するよ!」
里緒奈が上機嫌で言った。
店に残った祐希、コジケン、怜奈、里緒奈、瑞希、朱音の6人は、七ツ森一家に礼を述べ星ヶ丘駅へと向かった。
電車に乗って向かう先は、柏琳台駅前の『スナック茜』だ。
祐希たちの長い夜は、まだ終わらない。
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