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壮大な嘘告白をされ人間不信になった僕、後ろの席の女の子が付きまとってくるようになる  作者: 有原優
第七章 文化祭

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第99話 下山

「土砂降りだね」

「ごめん」


 僕は謝る。

 急に暴風のような雨風に見舞われたのだ。

 なんで、天気予報では貼れって言ってたのに、外れたの?


「いいよ、天気予報が間違ってたみたいだし」


 そう言って鈴美はスマホをいじる。


「ほら」そう言って僕に見せつけたのは、天気予報だ。

 どうやら、雨は今日の23時から振る予報だったのだが、雨が降る予定が早まったらしい。

 こればかりは、天の意思だから、僕たち人間にはどうする事も出来ないが、


 大変なことになった。こんな豪雨の中で山を下りるとなれば、

 ――いくら登山路として道が軽い舗装をされていたとしても、遭難もしくはがけ崩れの危機になる。


「本当にごめん」

「謝らなくていいよ」


 鈴美は笑顔で言った。たぶん強がっている。鈴美も不安なのだ。

 謝らなくていい、とは言われたが僕には罪悪感でいっぱいだ。

 まさかこんなことになるなんて、思ってもいなかったのだから。


 はあ、とまたため息をつく。


「ため息は幸せが逃げるよ」


 怒られてしまった。確かに今しなければならないのは、後悔よりも先の事を考える事だ。


 道が滑りやすくなってきた。水が地面に浸水してきたからだろう。

 ヌルヌルの地面では、全力で駆け降りる事が出来ない。

 飴足はさらに強まる一方だ。雨宿りなんて、出来ないだろう。


 不幸にもこの山道のベンチは屋根がない。屋根さえあれば雨宿りも可能だったかもしれない。

 いや、其れは違う。雨は暫くやまない。となれば、雨宿りしても、体力は多少買う服するかも位知れないが、そこからが問題なのだ。



 ――一瞬ピカッと空が光った。


 その数秒後に、轟音がした。

 その音に鈴美はひっと怖がるそぶりを見せた。


「苦手なの?」


 この鈴美の怖がり用を見てたら、この質問は空質問になってしまうかもしれないが。


「苦手だよ」



 その声はかすれていて、耳を傾けないと聞こえないようなか細い声だった。

 その声から不安な気持ちは伝わった。


 後山を下りるのに、どれくらいかかるだろうか。


 僕の体よりも鈴美の事が心配だ。

 雨に濡れると体の体温が冷水に奪われていく。

 そして、体は弱り、体の免疫は落ちて、風邪を引くリスクが高くなってしまう。


 そうなれば、悔やんでも悔やみきれない事になるだろう。


 鈴美の苦しみは僕の苦しみなのだから。


 三十分ほど降りてきたとき、ずっと無言だった鈴美が、「ねえ」と言った。

 僕は振り返る。

 鈴美の今日のために着て来たであろう一張羅はもう雨でぬれてめちゃくちゃになっている。


「もう、無理かも」


 鈴美は小さな声で言った。

 足が震えているのを感じる。


「そうだね」


 鈴美も決して無敵ではない。

 飴にもうすっかりと体力を奪われてしまったのだろう。


「休みたいところだけど」


 周りを見渡す。相変わらず土の道は木々に囲まれていて休めそうな場所はない。


「もう、歩けそうにない?」


 その言葉に鈴美はただ、黙って無言でうなずく。


 くそっ、僕の体力がどれ久禮もつのかは分からないけれど、


「鈴美、おんぶするから乗って」


 そう、僕は言った。


「え、でも」

「それしかないでしょ」


 鈴美を山の上に連れてきてしまった僕の責任だ。

 山を下りようという時には既に暗雲は立ち込めていたのに、それにさえ気が付かなかった僕の愚かさが招いた結果だ。


 だからこそ、これ以上鈴美に迷惑はかけたくないという気持ちでいっぱいなのだ。



「ほら」

「大丈夫なの?」

「何とかなるよ」


 僕はそう言って鈴美を背中に乗せた。

 思い、


 ――重いなんて言う言葉を女子に言ってはいけないかもしれない。

 だけど、人ひとりの退場はそれだけ重い物だ。

 鈴美がしっかりと背中につかまってくれているおかげで、だいぶましだ。


 だけど、だからと言って、40キロほどの物を背負う体力が僕にあるわけもなく。


 はあはあ、はあはあ、はあはあ、


 方から息を常にしていた。

 ああ、僕は、重い物を背中に持つことに対して長けていないらしい。



「大丈夫?」


 そう、鈴美が訊いたが、僕は「大丈夫」とそのたびに返した。

 これは、ただの強がりなのかもしれない。

 だけど、それでもいいじゃないか。


 それで力が出るのなら。


 正直言うと、それから先の事はあまり覚えていない。

 ただ、無我夢中にこけない様に気をつけながら山道を降りて行っていたのだから。


 地上に着くと、僕は安心感を覚えた。


 ああ、無事に地上に降りれた。鈴美の安全を確保できた。

 その気持ちでいっぱいだった。

 そして僕は、その場で倒れてしまった。




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