第95話 進路
その翌日、僕たちは一緒に学校に登校する。
学校への道は当然鈴美と一緒に歩いていく。
そして手をつないで。
電車から一緒だ。
鈴美は昨日も今日も僕の家まで来ると言っていたけれど、それは二度手間過ぎるし断った。
そもそもそれは鈴美に一方的に負担を強いる事になる。
それは正直対等じゃないし、そもそも駅からで十分、なんていうつもりはないけれど、全然駅から出大丈夫だと思うのだ。
それだけでも満足に話せるのだ。
むしろ僕の家に来るまでの時間一人にさせる方がよくないのだ。
その時間は暇になるのだから。
そして僕たちはその足で、学校に向かっていくが、
その道中で意外な人物に出会った。
芹原だ。
それも当然か、と思った
芹原も実はそこまで遠くない学校に通っている。
そんな芹原と会うのも別に無理のない話なのだ。
「おはようございます、運命の人っ!!」
そう、いつものテンションであいさつされる。
ここは電車の中、正直気恥ずかしいという気持ちがある。
「電車の中ではやめてくれないか」
僕はおずおずとそう申し上げる、と。
彼女は非常に不服そうに、
「いいじゃないですか」
と言った。
「鈴美」
「いいじゃん、ほほえましくて」
鈴美もそっちの派閥なのかよ。
鈴美に関しては妹とでも思っていそうだ。
そう、鈴美の芹原に対する扱いはまるで妹に対するそれなのだ。
その扱いは本当に正しいのかという疑問がある。だけどそれを言ってしまうほど僕は野暮ではない。
僕は鈴美を真っ直ぐに見て、
そして、鈴美の手を取る。
「あっ」
そう、芹原が言う。
「妬いてるの?」
鈴美が言うと彼女は静かにうなずいた。どうやら妬いているので正解みたいだ。
「芹原さんも陽太君の手を握ってみる?」
「それは大丈夫です」
そう、笑って言う芹原。
「そう言えば芹原さんはどこの学校に通ってるの?」
そう鈴美が訊いた。
「C高校に」
そう言うと、鈴美は「あそこね」と静かに頷いた。
「知ってるの?」
そう、芹原が訊いた。
「うん」
鈴美は一言でそう返す。しかし、その言葉には憂慮が隠されていると、僕は思った。
一体芹原の通っている高校はどんなところなのだろうか。
僕にはそれを知る事は出来ない。
そんな会話をしていると、いつしか目的地までたどり着いた。
「まだ電車に乗るんだよね」
鈴美が訊くと、芹原は頷いた。
「ここから、あと二十分」
かなり乗る。多分僕たちの高校よりも遠い。
大変だな、と思った。
そして電車を降り、再び鈴美と一緒になった。
二人きりだ。ほっとする。まだ苦手な事には変わりがないのだ。
電車を降りてから暫くの間無言の時間が続いたが、三分ほど歩いた時、鈴美がふと口を開く。
「陽太君」
そして彼女は僕の手をギュッと握る。
「元気そうでよかったね」
僕はその言葉に返す言葉を持っていない。
「やっぱりなの」
「そうだよ」
僕は口をすぼめる。
「僕はまだ彼女と笑顔で話すビジョンが出来ていないんだ」
「それが当たり前だけどね」
その言葉に僕は頷いた。
「鈴美」
僕は一言。
「明日土曜日でしょ」
僕がそう訊くと、
「うん」
鈴美が頷く。
「明日出かけたい場所があるんだ」
「陽太君から誘うなんて珍しいね」
「まあね」
僕はそう言ってくすっと笑う。
「大丈夫、僕が行きたいだけだから」
「うん」
そして学校についた。
今日はまだ文化祭の話なんてない。
文化祭の話し合いがあるのは、来週の火曜日だ。
という訳で普通に進んでいったが、そんななかある紙を渡された。
それは進路調査書だ。
ああ、なるほどと、僕は思った。
確かに二年生の二学期ともなると進路を本格的に決めなくてはならない時期か。
僕はその紙を見ながらふんふんと考える。
だけど答えは見えてこない。鈴美と一緒に話したい。
僕は早速昼休みに、鈴美のもとに行った。
「鈴美、今日は外で食べない?」
と言った。
いつもとは違う雰囲気で食べたい。
「いいよ」
二つ返事で鈴美は言った。その言葉に軽く感謝をしつつ、二人で外へと行った。
僕はパンをかじる。鈴美はおにぎりを。
「それでどうしたの?」
「まあ、そこまで複雑なわけがないんだ。ただ、二人で外で食べたかっただけで」
「言いたいことは分かるよ」
そう言って鈴美はカバンから一枚の紙を取り出した。
「これでしょ」
「うん」
流石は鈴美だ。よくわかってくれている。
「将来の進路、鈴美はどうするつもりなの?」
「大学に行くよ」
鈴美は一言で返した。
やけにはっきりしている。その言葉にびっくりした。
「なんでって顔してるね」
「そりゃ、はっきりと言い切るものだから」
だから意外だった。
もっと迷っているのかと思っていたのに。
「そりゃ私だって、迷いはあるけど、でも私賢くなりたいから」
「まあ、そりゃ僕だって」
「これはね、私から言い出しても良かったかもしれない事だけど」
「うん」
「一緒の大学に行こうよ」
その言葉には驚きはない。もちろん元から言われるかと思っていた言葉だからだ。
「国公立しかないと思うけど」
「いけると思うよ」
鈴美ははっきりと言い切る。
「そうだね。僕はあと一押しが欲しかったのかも」
僕の道は一つしかなかった。
そう、勉強を続けて国公立大学に行くこと。
高卒で働くのもありかもと思っていたけれど、その考えは今は捨てている。
勿論高校までの勉強でも色々と学ぶことはできる。だけど、専門的な学問となれば、大学生にならないといけない。
だからこそ、大学で学びたいのだ。
ちなみに姉ちゃんも国公立のかなりいい方の大学に言っている。
いわゆる旧帝大だ。
「勉強会も定期的にしようよ。そして、美咲さんが通う大学に行きたい」
その言葉に僕も頷いた。
「決まったね」
鈴美は総言って空を指さした。
「なんのポーズ? それ」
「勿論、やったるぞっていうポーズだよ」
その言葉に僕ははははと笑う。
鈴美とならどこまでも走っていけそうだ。




