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壮大な嘘告白をされ人間不信になった僕、後ろの席の女の子が付きまとってくるようになる  作者: 有原優
第七章 文化祭

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第94話 メイドカフェ

 そして、夏休みが終わりを迎えた。つまり二学期の始まりだ。


 ちなみに芹原は別の学校に転校した。

 僕がいないことに寂しさを覚えていたらしいが、流石に一度退学処分になった生徒がここに復帰できるはずもないのだ。


 それに僕としても毎日顔を合わせるのは、あの悪魔の顔がちらついてしまい、学校生活を楽しく送れそうにはない。


 たまに会うくらいなら、平気かもしれないけれど。

 そこは記憶が喪失されたと言っても変わる者ではない。


 それに、


 そもそも、この学校はそこそこ偏差値がいい。

 記憶喪失でも基礎的な事は覚えているらしいが、それでも、勉強についていくのに困難を極めるだろう。

 そういう意味で、あまり良くはないのだ。


 そして新学期だが、僕は学校に戻るのがもはや二年ぶりみたいな気分だ。

 夏休みは色々とあった。楽しい事も大変な事も。


 鈴美とデートが出来たのはいい思い出に入るだろうか。

 それでもマイナス要素、芹原(喪失前)や母さんに痛めつけられた記憶も残っている。


 そう考えれば、辛い事も沢山あった夏休みと言えよう。

 とにかく複雑なのだ。


 そして、もう一つ残念なことがある。

 二学期と言えばなにが行われるか。

 そう、席替えだ。


 席替えのせいで、鈴美の近くから離れてしまった。

 勿論元々席で色々と話すことはそこまで無かった僕たちだけど、残念な気持ちも確かにしっかりと持っている。


 勿論鈴美と隣じゃなかったら学校生活なんて楽しくない、なんていうつもりはないけれど。



 そして――

 早速行われたのは文化祭の話し合いだった、


 文化祭で何をやりたいかは自分たちで考えてきてください、とのことだったのだ。


 そして夏休みが終わってから、訊き出して何をやるかの準備をする。ただ、例外もあって。劇だとかそういう練習時間のいる物の場合は、夏休みにも集まる必要性のある以上、夏休み前の前もって決めておくのだが、今はそれは別に構わないだろう。


 劇は不人気でやりたいと言った生徒がまずいなかったからだ。


 文化祭で何をやりたいか、


 僕は実の所そこまで決めてはいなかった。


 しかし、それはあくまでも僕の話だ。

 鈴美はどうやら違うらしく。


 いの一番に手を上げた。

 僕は驚いた。鈴美が一番に手を上げるとは思っていなかったのだ。


 そして、鈴美が手を上げた者は、メイドカフェだった。

 僕は吹き出しそうになった、


 だって鈴美がそれにするとは思ってもいなかったのだから。

 しかしある意味鈴美らしいなとも思った。

 僕は携帯をこっそりと触る。そして、鈴美にその意味を淘汰。


 その時隣から、


「スマホ駄目だよ」


 と、笑いかけて来る女性の声。

 鈴美ではない。鈴美はもう別の席に移っているのだ。となれば、今現在僕のいる女性だ。

 僕はそちらをちらりと見る。


 そこには、クラスでも人気者の一人である、福沢葵さんの姿だ。彼女は僕に笑いかけてきた。

 そうだった。鈴美が今ここにいないことですっかりと忘れていたが、彼女が僕の隣の席だったと、すっかり忘れてしまっていた。


 僕は彼女の顔を見る。

 そして小さな声で、


「彼女と連絡の取り合いをしているんです、何がいいのかなって」


 そう言うと、


「どういう理由でもダメでしょ」

 なんて言ってくすくすと笑う。


「まあ、私には咎める権利なんてないからいいのだけれど」


 一瞬スマホを取りあげるポーズを見せ、そして僕の元に再び返した。その瞬間だ。

 視線を感じた。僕たちをジーと見る視線だ。その視線の主は見なくても分かる。鈴美だ。鈴美が僕の今の状況を深いと感じているらしい。

 そりゃ当然だ。


 鈴美が同じ状況を作り出したとすれば、僕からしたらそれは明らかに不快なのだ。


 鈴美の方を軽く見やる。

 そして、軽く手を合わせた。

 文章で書いても良かったが、こういうのは誠意が大切だ。

 僕は鈴美に対して、講堂で示すしかないのだ。

 無論、その後に一方的に話しかけられたという事だけを言っておいた。


 ちなみに鈴美がメイドカフェがいい理由は単純にメイド服を着てみたいという物らしかった。


 僕はどちらかと言えば、


 メイド服などという物は、男子が女子に着てもらいたいもの、だと思っていたから驚いた。


 だけど、別に鈴美が期待と言ってもなにもおかしなことなど無いだろう。


 僕はそこまで意見があるわけではない。このようなことを言うと何だが、別に何でもいいというのが正直なところ。よほどの物では無かったら、別に何でもいいのだ。


 その時だ。


 隣の席の福沢さんが手を上げた。

 今まで手を上げていなかったのに、今手を上げるとは意外だ。


 そして、その発言は、


「幽霊屋敷を作りたい」と言い出した。


 幽霊屋敷は今まで出ていなかった。

 多少意外だという気持ちは抱きつつも、確かにそれもありかもなと思った。

 しかし、幽霊屋敷か。

 作るとしてどんな感じなのだろうか。部屋の中を改造して暗くするのだろうか。

 まあ、色々考えて多少面白そうだという気持ちもある。


 でも僕は鈴美のしたい物をさせてあげたい。

 そう考えればやはりメイドカフェ以外の選択肢はない。


 結局僕たちに選べる選択肢は一つしかない。

 幽霊屋敷とメイドカフェ、兼ね合わせる事は出来るのだろうか。

 まあ、出来るとしてメイド服を着た幽霊? 案内人?

 まあ、少し無理がある気がする。


 それなら一つだけの方が確実に良いはずなのだ。

 そして、そのまま話し合いは翌日に持ち越されることとなった。というのも、今日は意見を出しあうことがメインで、決めるまではいかない予定だったのだ。

 


 


 その帰路。


 僕たちはそのまま近くのハンバーガーショップに行った。

 ポテトとコーラを買い二人で座る。


「ねえ、鈴美」


 僕は早速切り出す。


「どうしてメイドカフェなの?」

「さっきも言ったじゃん。メイドカフェで、メイド服着て働きたいの」

「なんか珍しいね」

「珍しくないよ。だって本当のメイドカフェで働くのは何となく嫌だけど、こういう学校内でのメイドカフェってなんかいいじゃん」

「そうなのかな……」


 しかし、懸念点もしっかりとある。

 前例がないのだ。


 そもそも、メイドカフェという物は生徒が色目で見られてしまう可能性がある。

 最悪ストーカー被害に会う可能性もある。

 出会った当初の鈴美は僕に対してストーカー行為をしていたというのは今はひとまず置いておいて、

 メイドカフェは、言い方は良くないけれど、節度のない大人が来てしまう可能性もある。それこそ女子高生、JKを恋愛対象として、いやもっと言えば性欲の対象として見てしまう残念な犯罪者予備軍の大人だ。


 勿論性欲を向けるだけならまだましだ。それを口に出さなければ、メイド服のJKたちにばれなければ。

 だけど、性欲を向けることでメイドさんたちが不快に思ったり、最悪襲われたりしたら。


 そう、


 あまりにもリスキーなのだ。


 僕たちの学校は校則が緩いから、そこまで反対されるってことは無いかもしれない。

 ただ、リスクは説明されるだろうし、メイド服を着て接客するという人が出てこなければ、そもそもが否定されるかもしれない。

 そこが非常に難しいところだ。

 そもそも、男性からの票を受けても、女性票が伸びなければ終わりだ。


「陽太君の言いたいことは分かるよ」


 鈴美は小さな声でそう言い放つ。


「だってさ、学生らしくないもん。それに危険だし」

「そうだね」


 僕は言った。


「同意しないで否定してよ」

「え?」

「……」


 鈴美は黙って僕の顔を見て来る。

 それを見て、僕は耐えきれず、「ごめん、僕が間違っていた」と言った。


 すると、


「意地悪しただけ」


 と言って笑った。



「でも、学校でやるには説得力が少し足りないって言うのは事実だけどね」

「うん」

「だけど、私やってみたい。……所で陽太君はやりたいの内の?」

「今は、ないかな」


 今は、というよりも文化祭でやる者が何なのだろうか。それが分からない。

 僕は何がやりたいのだろう。


 それがよく分からない。


 だから、


「でもそれって私がやりたいから?」

「そうかな」



 鈴美のやりたいものをやればいいと、思う。


「陽太君もやりたいのをさがしてもいいんだよ」

「それは、そうだけど……」


 それがいまいち見つからないのが、今現在の状況だ。


「まあ、好きにしたらいいよ。もう私たちを縛る者なんてないし」

「そうだね」


 自由に決める権利は僕たちにはあるはずだ。


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