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壮大な嘘告白をされ人間不信になった僕、後ろの席の女の子が付きまとってくるようになる  作者: 有原優


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第92話 話し合い

 SIDE鈴美


「芹原さん」


 私はふすまから出た。芹原さんと話をするために。


 陽太君が出て行ってしまった以上、私が彼女の相手をしなきゃだめだ。

 陽太君を追いかけるか、それとも芹原さんの相手をするか、私は非常に迷った。

 だけど、熟考ののち、今しなければならないのは芹原さんの相手なのかな、と思った。


 何しろ家に誰もいなくなっては不都合が生じてしまう。

 美咲さんは今日ここにはいないんだもん。


 それに、今の芹原さんを放っておくわけにはいかないんだもん。


 私が飛び出したことに対し、芹原さんは驚いた表情を見せる。

 分かりやすい。たぶん記憶を失う前の芹原さんよりもだいぶわかりやすいのかな、と思う。


 そして、芹原さんは最初は驚きを見せていたものの、すぐに冷静になってくれた。

 それに軽く安心した。冷静じゃなかったら話し合いなんてできないんだもん。


 そして、わたしは芹原さんに向き直り、


「陽太君はたぶん、貴方の事を悪く思ってないよ」


 そう告げた。

 私だって、答えは出ていない。

 それだけ今の芹原さんに対する扱いは難しいんだもん。


 私だってさじを投げたくなる。でも、陽太君が今いない中対する事の出来るのは私しかいない。


「芹原さん、私たちの気持ちを伝えるね」


 だから、正直になったらいいと思う。

 陽太君には芹原さんへのトラウマがある。

 それは私も同じ。芹原さんに危機に陥らされたことがある。監禁状態になった時もある。

 トラウマとかはないけれど、あの時は確かに怖かった。

 死ぬかもしれないと、思ったのだ。


 

 だからこそ、私も芹原さんの事は怖い。怖いけれど、

 それは陽太君の持つそれに比べれば大したものじゃない。


 だって私は、陽太君の傷の十分の一すらも受けていないのだから。

 




 ……陽太君はたぶん言葉を選べなかったのだろう。


 いや、たぶん本人では言葉を選べていたつもりだと思う。だけど、芹原という人に対しての恐怖感に対して、あまり元気ではいられなかったのだろう。

 私は陽太君に笑って欲しい。

 それが私の願いなのだから。


「芹原さん、陽太君の言葉は意地悪だったと思う。それは謝る。でも、陽太君も言いたくて行ったんじゃないと思う。以前のあなたは陽太君に対して怖かった。だから陽太君も、恐怖感から、心無い言葉を言ったんだと思う。だから多分あれが本心ではないと思ってる。でも、それと同じようにわたしも思う事があるの」

「なに……」


 消えそうな声で彼女が言う。


「あなたは悪くないってこと。今のあなたは人に危害を加えそうには思えないから」

「ありがとう」


 そう返事を返される。


「それを踏まえて一つ確認しておきたいことがあるの」


 わたしはそう言って、こぶしを握り締める。

 これだけは確認しておかなければならない。


「私は陽太君の彼女何だけど、それに対してはどう思ってる?」


 その言葉に、芹原さんの顔が強張ったのを感じた。


 ――許せないかもです。


 そう、彼女が言った。


 その言葉は恨みがましい言葉だ。

 だめだ。もし、こう言われてしまえば、彼女をかばえなくなってしまう。


「でも」だけど、彼女はつづけた。その言葉にわたしは芹原さんの目を真っ直ぐに見る。


「恨めばいいという訳じゃないことも分かっています。私はゼロからじゃなくて、マイナスからのスタートですから」


 少し力なく言った。

 その言葉を聞くと、彼女の気持ちは分かる気がした。


「でも、私は諦めたく無いです。愛人でもいいから、陽君の隣にいたい」


 その言葉自体が、彼女の気持ちなのだろう。


「つまり、私を害して、奪い去るつもりは」

「まさか」


 そこまで聞いて、私は安心した。


「以前のあなたは――、いやなんでもない」


 それを言っても、仕方のない事だ。


 彼女を傷つけるだけの結果になってしまう。

 それは私も望むところではない。


「私は、鈴美さんには申し訳ないですけど、私の運命の人を奪いに行くつもりです」


 宣戦布告だ。

 

 返す言葉なんて、最初から決まっている。


「かかってきなさい」


そう、わたしは告げた。



 



「じゃあ、陽太君の所に行こっか」


 話が済んだところで、私は笑顔でそう言った。


 二人で行く。それが一番いい方法なのだと、私は勝手に思う。


 だって、そしたら陽太君も罪悪感を無くしてくれるだろうから。


「ごめんなさい、無理です」


 彼女は小さな声で言った。


「私が言ったら、たぶん陽君を怖がらせると思うから」


 やはり、自信がなくなっているのだろう。


「大丈夫」


 わたしは言った。


「自信もって」


 そう言うと彼女は小さくうなずいた。


 でも、結局だ。結局だめらしい。

 結局お留守番するという言葉に、わたしは何も言い返すことも出来なかった。

 それにしても、わたしは言わなくてもいいだろうか。


 陽君が、芹原さんと絶縁をしようとしていたしていたことを。


 そんな事を考えれば、今陽太君の所に連れて行こうとしている私はクズなのだろうか。


 分からないけれど、

 そう考えれば、結局来なかった彼女の選択は正解だったのだろうか。

 その答えは、陽太君にしか分からないだろう

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