83話 事態
「良かった、目が覚めてくれて」
鈴美は安堵の表情を浮かべていた。
「鈴美」
僕は呟く。
僕は数回息の素って吐いてを繰り返し、
「鈴美が生きててよかった」
と言った。本心。紛れもない本心だ。
「それは私のセリフだよ。陽太君の方が危なかったんだから」
「そうだね」
僕は危険な橋を渡り続けた。
死んでいてもおかしくなかったのだ。
「ねえ、陽太君、もう私を置いて行かないでよ。私あと少しで、私の知らないところで、陽太君を失うところだったんだよ」
「おいで行かない?」
「うん、そう。
一人で戦いに行くなんて、わたしを危険に巻き込みたくないのは分かるけど、でも」
「でも」
「おいていかれるほうの気持ちを考えてよ」
その目を見て、少し申し訳なく思った。
鈴美にとって信用されていないと思ったのだろう。
「反省してよ」
「うん」
僕はそう言った。
申し訳なく思ったのだ。
そこから暫く僕は、そこで休むこととなった。
幸いそこまで傷ついていなかったみたいで、
一日だけ検査入院をして、退院という事になった。
だけど僕は鈴美には訊けないでいる。
あの後、芹原はどうなったのだろうか。
本来芹原の心配なんてしたくはない。
しかし、彼女は僕をかばって狂刃に倒れた。
罪悪感、というような物があるのだ。
芹原の事はあくまでも嫌いだ。
きらいだけれど、でも、僕をかばって狂刃に倒れたんだ。
気になるのも当然なのだ。
そしてしばらくたった後、僕は退院した。
その後、姉ちゃんに家に呼ばれた。
ちなみに鈴美も一緒だ。
「鈴美」
「なに?」
「今日は、何があったかの事後報告で呼ばれたってことで、いいんだよね」
「うん」
「良かった。訊きづらかったから」
「それは当然だよ。でも、わたしもあまり知らないから」
知らないんだ。
「全て、美咲さんが知ってるから」
「分かった」
そして僕たちは家に来た。
狂からはこの家に戻ることが出来る。
その事実だけで嬉しいけど、後処理がどうなったのか。
それが訊きたいのだ。
「姉ちゃん」
姉ちゃんは、硬い顔をしている。
シリアスな顔だ。
祈里と僕、父さんと姉ちゃんと言った感じで、向かい合わせに座る。
「まず、後処理だけど、とりあえず私は罪には囚われなかった。そこまで恐れる必要はなかったんだって思ったわ」
それにほっとする。
「お母さんの件があるから、まだあのバーに雇ってもらえるかは分からない。でも、何とか頼み込むつもり。それと、お母さんと、私の異父姉妹になる紅葉ちゃんは一緒に過去の罪も暴かれて逮捕されたらしい。たぶんお母さんは暫く戻ってこない」
「殺人犯ですからね」
多分、懲役15年は硬いだろう。
勿論僕は法律の事はあまり知らないから、たぶん、という言葉がついてしまうけれど。
「それと一番知りたいであろうこと」
来た、と僕は思った。
「芹原恵奈に関しては、まだ目を覚ましてないらしい」
目を覚ましてないか。
「それにまだ、死の可能性もあるんだって」
死の可能性も十分にあるのか。
芹原の事は嫌いだ。だけど、死んでしまったらそれは僕の中で呪いとなるだろう。
芹原の命を使って生き延びたことになる。
「病院には行けるらしいけど、行く?」
その言葉に、僕はどう返したらいいのかはあまり分からないけれど。
「今はその時じゃない気がする」
僕はそう答えた。
僕が今病院に行ったって、何も変わらない。
それに、
「僕には鈴美がいるし」
そして鈴美を見る。
「陽太君……」
そして、僕を眺めた後、
「でも、行くべきだと思う」
「え?」
祈里がまさかそんなことを言うなんて思っていなかった。
「陽太君が病院に行かないままだったら、たぶん陽太君の心が救われない」
「どういう事?」
「陽太君は、芹原さんに負い目を感じてるんでしょ?」
その言葉に、僕は静かに頷く。
「だからこそ、芹原さんに借りを作ったらだめ。わたしに遠慮してなら、もっとだよ」
「分かった」
僕は頷いた。
祈里がそう言うのならば、僕は行くべきなのだろう。
だけど、その日は明日にすることにした。
そして、今日は僕たちは一緒に寝る事にした。
僕たちが一緒に泊まる。つまり一緒に寝るのは、あの日。つまり僕が芹原に決戦を挑みに行った時以来だ。
「鈴美」
そう言って僕は鈴美の手をギュッと握りしめる。
恋人つなぎだ。
隣同士で僕たちは今寝転がっている。
床に布団を敷いて寝転んでいる。
「鈴美と再びこんな日常が遅れるなんて幸せだよ」
「うん、わたしも」
そう、鈴美も頷いて。
「すべての問題が解決したしね」
「そうだね」
「うん」
そして、僕たちは抱き合った。
鈴美が隣に寝ている瞬間。僕は嬉しく感じている。
隣の鈴美を抱きしめている。
そんな時間が幸せだと感じている。
鈴美は僕よりも先に寝た。
その鈴美の寝顔を見ると、幸せだ。
可愛らしいな、と思い。僕は眠りについた。
夢を見た。
鈴美と一緒に楽しく遊んでいる夢だ。
夢の中という自覚は無かった、
だからこそ、幸せだった。
鈴美と一緒にやりたいことはまだたくさんあると、感じた。これから鈴美と一緒なのだ。
やれることは沢山ある。
夢の中でそう感じた。
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