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壮大な嘘告白をされ人間不信になった僕、後ろの席の女の子が付きまとってくるようになる  作者: 有原優


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第76話 戦い

 その日、ずっと陽太は気分が悪かった。少なくとも、鈴美にはそう見えた。

 表面的には楽しそうだけど、やはり相沢に言われたことが気になっているのだろう。

 あの、敗北者という言葉、確かに今の陽太には効きそうだ。


 鈴美は陽太の今の状況を気にしていた。

 陽太は和歌山に来てからずっとではないが、気にしている様子を見せるそぶりもあった。そのたびに鈴美は慰めてきたが、そもそもが無理だったのかもしれない。

 そう考えると少し悲しくなる。


 だけど、完全に無駄だったなんてそんな悲しい結末にはなって欲しくないと彼女は思う。


 鈴美は自分に対して不甲斐なく思うけれど、でも陽太はもっと元気なはずだ。彼はもっと、人生を楽しまなくてはならない。


「ねえ、陽太君。気にしなくてもいいんだからね」

「分かってるよ」


 返ってくるのはそんな言葉ばかり。

 もっと本心をぶつけて欲しいのに。



 信用されてないのかもしれない。



「わたしは陽太君の彼女だから何でも言いたいことは言っていいんだよ」

「分かっているよ。鈴美が心配してくれてるのは嬉しいけど。大丈夫なのは本当だから」

 そう言って笑う陽太。


 そんな中鈴美にある事が思い浮かばれる。


 もしかして、陽太はもう達観しているのではないかという思いだ。


 それならば心配し続けるのも、失礼にあたるのかもしれない。


「陽太君、私決めたよ」

「決めたって何を?」

「もう、陽太君の事は気にしない。遊ぼう!!}


 もし、自分が気にしすぎて陽太の事が心配になりすぎていて、それを陽太が気にしているとすれば。それはもう本末転倒だ。そんな馬鹿らしい話はない。


「陽太君もう大丈夫だよ」

「うん」


 そして鈴美たちは精いっぱい遊んだ。

 鈴美たちをじろりとにらんでいる相沢の事は目下無視して。



 そして、二人で遊んでいくこと暫く。夕陽が落ちかけて来たので帰ることにした。



「今日は楽しかったねえ」


 帰りの電車の中、鈴美は陽太に言った。


「はい、楽しかったです」


 そう言う、陽太の表情は鈴美には先程よりも明るい物に見え、少し安心をする。


「陽太君、今日は何食べる」

「家じゃないんですか」

「今日はねなんとね、外食許可貰ってます!! 和歌山市で何か食べようか」

「いいですね。……何が食べたいです」

「ラーメンとかかな」

「ラーメン、いいね」


 そう言って陽太が唾を飲み込む。


「そうと決まれば、待ち遠しいね」

「うん」


 そして二人で笑った。



 そして、電車での一本道の中、いつの間にか陽太と鈴美は肩を寄せ合って寝ていた。それは終点につくまで続いた。



 ところが、事件が起きたのはその翌日の事だった。



 ★


 私は、ぐぐっと伸びをした。

 そして、枕もとのスマホに手を伸ばす。


 9時。結構遅くまで寝ちゃった。


 そして私は起き上がり、隣の陽太君に抱き着こうとする。


「え?」


 そこには陽太君はいなかった。

 先に起きたのかな、と思い、私は起き上がり、布団から出てリビングに向かう。


「鈴美、ちょうどよかった」


 お父さんが慌ただしい様子でこちらにも勝ってくる。


「陽太君の事なんだが」

「何かあったの?」

「書き置きを残して消え去ったんだ」


 書き置きを残して?

 机の上を見る。そこには小さな封筒と、そこから出たであろう、軽くしわのついた一枚の紙が置いてあった。

 私は恐る恐るその紙の方に近づいていく。


 やっぱり陽太君は大丈夫じゃなかったのかも。


 私が、もう大丈夫と勘違いしてしまった。だって、ラーメンをおいしそうに食べてたんだもん。

 陽太君はラーメンを食べている間何を思ってたのかな。

 私、取り返しのつかない事をしてしまったのかな。


 もしかして、私が生みにつれてきたせい?

 私がナンパ男たちに絡まれたせい?


 考えれば考えるほど、後悔の念が出て来る。


 私は、恐る恐るその紙を触る。書き置きの紙だ。


 手が震えて上手くつかめない。

 だけど、かろうじてつかんだその紙の中にあった文章とは。



『家に帰ります。今までありがとうございました。僕はもう相沢に見つかった以上、ここにはいれません。僕は自分の手で芹原と決着を付けに行きます。今まで迷惑をかけました。本当に感謝しています。だからこそ、逃げ続けて敗北者なんかではいられないと考えましたし、もうこれ以上迷惑はかけたくありません。僕は戦いに行きます。もし無事に戻ってきたら、鈴美とまた出かけたいです』という物だ。


「どういう事?」

「僕にも分からないなあ」


 そう、お父さんは言う。


「でも、あの子はたぶん思い詰めていた。……鈴美はどうしたい?」

「陽太君の所に行きたい」


 もしそれで、私まで被害が被ることになっても構わない。

 今のわたしにとって陽太君が一番大事なんだもん。


 陽太君と一緒にいられる時間を奪われるなら、それはもう生きていないのと同じ。


 私はすぐに、美咲さんたちにも連絡を入れ、そしてバスに乗り、そのまま陽太君の元へと向かった。


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