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壮大な嘘告白をされ人間不信になった僕、後ろの席の女の子が付きまとってくるようになる  作者: 有原優


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第69話 謎


「上がったよ」


 その瞬間だった。

 そう言って鈴美が上がってきた。


 それを見て、僕はアルバムをとっさに閉じる。


「なにか見てたの?」

「ううん、なにも」

「ああ」


そう、僕たちは言い訳をする。


「そ」そう言って鈴美は僕の手を取る。


「部屋に戻ろ」

「ああ」



 そして僕たちは一さんに頭を下げ部屋に戻る。


 鈴美が出て来る。


 だけどその姿が、少し無防備だ。

 パジャマの前ボタンを最後まで止めていないせいか、胸が軽くはだけている。


「鈴美さん、あまりそう言うのはしないでもらえませんか?」


 僕はそう訊いた。

 いくら何でも、色々と問題があるようにおもえるのだ。


「だめー、いいじゃん」

「だめだよ」

「分かった」


 そう言って彼女は胸元を直していく。


 その姿もまた美しい物だ。


「でもさ」


 鈴美が真剣な口調で口を動かす。


「私たちこのままでいいのかな」

「え?」


 急にどうしたんだろう。


「わたしたちカップルなんだからもう少しやってもいいのかなって」


 どういう事?

 そう、一瞬思ったが、スグに意味が分かった。


「僕は鈴美とならそう言う行為してもいいとかはないんだ。僕にとってはそう言う行為はだめで」

「でも……」


 鈴美が俯く。


 

 僕はその顔を見て、


「大丈夫、芹原なんかよりも鈴美の方がずっと大切なんだから」

「それ貶し言葉」

「え?」

「貶し言葉でしょ」

「まあ、確かにそうだけど」


 確かに比べるのも良くないレベルだ。

 戦いにすらならないのだから。


「そう言えばアルバム見てたでしょ」


 鈴美が唇を尖らしながら言った。


「私も陽太君のアルバム見たらよかった」

「そう言えば見せてなかったね」


 とは言って見せてもいい事なんてなかっただろうが。

 そもそも僕のアルバムにはそこまでの写真は入っていないのだから。



 そして僕もお風呂に入る。


 ★


「お父さん」


 鈴美が初めに話しかける。


「どうしたんだ?」

「陽太君にアルバム見せたでしょ」


 その言葉に一は黙って頷く。


「だめだった」

「いや、いいんだよ」


 鈴美はそう言って一の隣に座る。


「陽太君どんな反応してた?」

「良好な反応だったよ。ずっとかわいいって言っていた」

「ならよかった」


 そして、一は咳ばらいをした。


「お前がいじめられた時の事訊かれたよ」

「そうだよね」

「あの時は鈴美が一人で解決策を持ってきたんだからすごかった」

「私も弱いから、ただただ逃げて、そこで助かっただけだよ」

「俺も親の責務を全うできているとは思っていないからな」


 一は頬杖をつく。


「俺、いや俺たちの手を頬tン度介さずに立派になった」

「わたしはそんなに立派じゃないよ」

「立派だよ。俺たちの誇りだ」


 その言葉に、鈴美は小さくうなずいた。


「だから」続いて口を開く。「今現在の鈴美の幸せを守りたいと思った」

「そう言う訳で陽太君を受け入れてくれたんだね」

「ああ」

「ありがとうお父さん」


 鈴美はそう言って笑う。それを見て、一もまた笑った。



 実のところを言えば、鈴美にはまだ誰にも行っていない秘密があった。しかし、あくまでも言う訳にはいかない。言うのが怖いのだ。


 この山から逃げた本当の理由を。


「孫が早く見たいなあ」


 その初めの言葉に、


「陽太君がその気になったらね」


 先程は少し不安になって、陽太に変なことを言ってしまった。そのことを恥じている。


 陽太は子作り関係で少し苦しんでいるのだ。



 今、その追い打ちをかけるわけにはいかない。


 鈴美は、そう思った。



 ★


 お風呂でゆったりとお湯につかっている。

 気持ちがいい。お風呂の温度が昨日と同じように気持ちがいい。

 なんとなくほっとする。

 僕を包み込んでくれているような感じがする。


 芹原の脅威は怖いが、結局それを恐れ過ぎたらだめだ。

 それに芹原が来た後の行動は考えてある。

 だから大丈夫だ。そう僕は思っている。


 そしてお風呂からがった。


「陽太君、おかえり」


 先程よりも。少しだけ弱々しい声で言った。その言葉に僕は少しだけ不思議に思った。

 何かあったのだろうか。



「大Ýぞ初心?」


 そう僕が聞くと、「全然大丈夫だよ」と、鈴美は答えた。


 なら、僕の思い過ごしなのだろうかと、ふうと息を吐く。


「ねえ、陽太君、明日は山を下りてどこに行く?」

「どこに?」


 明日も出かけるのか。

 いや、出かけるより。


「鈴美と二人でのんびりしてたいな」


 僕はそう返事をした。


「そう」


 鈴美はそう言葉を発し、僕の隣に座った。


「でも、どっかで行きたい場所があるんだよね」

「行きたい?」それは白浜だった。


 白浜。海岸だ。和歌山県の下の方に位置している。


 なるほど確かに、面白そうな場所ではある。


「プールはさ、一緒に行ったと思うけど、海は一緒に入ってないなって思って」

「確かにな」


 確かに僕たちは一緒には海には行っていない。それも楽しみだ。


「鈴美はさやっぱりここが嫌いなの?」

「どうして?」

「山から出ようとしてるから」


 鈴美は確かに言っていた。


 明日どこに行く?じゃなくて、明日山を下りてどこかに行く?と。

 その言葉には何か含みが隠されている。そんな感じがしたのだ。


「やっぱりばれた?」


 そう鈴美が言う。


「だってさ、山にいたって観光場所があまりないもん」

「鈴美、正直に答えて欲しい。鈴美はこの山が嫌いなのか?」

「嫌いではあるよ。だって何もないし、陽太君と一緒じゃなかったらこんなところ長くはいたくはないし」


 もしかして鈴美は小学校の時も嫌な思いをしていたのかな。


 それならば色々な辻褄が会う気がしてくる。


 一さんのあの言葉からも、


 もしかしたら鈴美は一さんの事もあまり信用していないのかもしれない。


 だけどその答えはおそらく鈴美しか知らない。

 僕には分からない。


 鈴美は本当はここには来たくなかったけど、僕のために来た、そう言う事なのだろう。

 そこは感謝すべきなのかもしれない。


 だけど、それならば他の選択肢もあるかもしれないだろう。


 そんな時、僕は香奈さんの姿を思い出した。彼女ならば何か知っているのかもしれない。


 僕は彼女の連絡先を知らない。否、連絡を取るためのスマホがない。だけど、やりようはあるはずだ。


 僕は、鈴美の過去についてもう少し知るべきなのだ。


 僕は軽く伸びをした。

 そして、


「明日、少し僕主体でこの山を歩きたい」と言った。そこでまた香奈さんに会えるかもしれないという薄い希望のためだ。


「難波とか白浜とか行かないの?」

「鈴美は難波とか行きたいの?」

「まあね」


 そう言って鈴美はふふっと笑う。


「冗談だよ。明日は陽太君の行きたいところに行こう」


 

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