第67話 夜ごはん
そして、映画、ボーリングと続けて楽しんだ僕たち。
そんな楽しい時間が過ぎたからか、いつの間にか外は暗くなっていた。
「そろそろ帰ろ」
鈴美のその言葉に、僕は頷いた。
夕焼けがきれいだ。
僕は空を見て、そう思った。
「鈴美、今日はありがとうね」
僕はバスの隣に座る鈴美にそう言った。
「何が?」
「楽しかったから」
「私も楽しかった。陽太君が隣にいてくれてるからかな」
「そうかも」
まだ芹原の脅威は消え去ったとは言えない。
ただ、鈴美と一緒に楽しい事をしていれば、きっともう大丈夫だと確信できる。
芹原の脅威からは逃れられる。そう、僕は確信している。
バスに揺られることに十分。再び鈴美の家に帰ぅて来た。
「ただいま、お父さん、お母さん」
鈴美がそう言うと、
「おかえり鈴美」
そう、一さんが言った。
そして鈴美の家の番ご飯を食べる。今日はハンバーグらしい。
きっとこれもおいしいのだろう。
少しワクワクしている気持ちもある。
そして、料理が出来るまでの間、鈴美の部屋で二人して寝ころび、漫画を読む。
鈴美の部屋の本棚には漫画が沢山ある。
恐らく概算で出したものだが200冊程度あるのではないだろうか。
僕はその中から一つ気になった本を選ぶ。
鈴美の本棚には少女漫画もそれなりに置いてあったが、そのほかにも少し中二感あふれる表現が使われている漫画があった。
僕はそれを手に取り、読み始める。
うん、これだ。
僕は読んで早速そう思った。
なにが、うんこれだなのか。それは決まっている。この漫画に中二感あふれる表現が沢山なされているのだ。
多分これは音読していくと軽く恥ずかしい気分になるだろう。
「鈴美」
僕は呼びかける。
「鈴美の中2病ってここから来たの?」
僕が問うと、鈴美は咄嗟に僕から漫画を奪ってくる。
「どうしたんだ?」
「っやめて」
よほど黒歴史になっているらしい。
「その漫画に影響されたのは事実だから、やめて。掘り返さないで」
これが鈴美の弱みか。そう思うと少し楽しくなってくる。
そう、鈴美をもっとおちょくりたくなったのだ。
「鈴美もかわいいところあるんだね」
「っうるさい」
まあ、鈴美もとかじゃなくて可愛い所しかないのだが。
そして僕たちは食卓に座る。
目の前の料理はどれも美味しそうで少しワクワクしている。
ハンバーグ以外の料理。そう総菜やみそ汁も美味しそうだ。
正直、手作りの愛情のこもった料理が一番おいしいと考えている。
姉ちゃんの料理も今となっては懐かしいな、と思う。
もう姉ちゃんの料理をもう何日間食べていないだろうか。
また姉ちゃんの料理を食べたいなと思ったところでえ、今僕がとんでもなく失礼なことを考えていることに気が付いた。
今、僕たちは鈴美のお母さんが作ってくれた料理にありついている。そんな中で、そんな事を行ったら明らかに失礼だ。
勿論口に出したわけじゃないけれど。
「何も言わないけど、美味しいの?」
鈴美がそう言ったのに対し、僕は即答で頷いた。
「美味しいよ。2000円出してもいいくらい」
「なら頂戴」
「鈴美に対してじゃないよ」
「えーーー」
鈴美は文句がありそうに口を尖らす。そんな姿も可愛らしい。
「まあ仕方ないよね」
「え?」
「お母さんの料理は美味しいんだもん」
そしてそう鈴美は言った。
「そう言えば、陽太君」
「どうしたの?」
「ついさっきメールが届いた」
それは芹原のメールだった。
それを見た瞬間、心臓がドクンと大きな音を立てた。
「なに?」
楽しい食事だったのに、一瞬でシリアスモード突入だ。
そして鈴美が見せてくれたそのメール。
それは、『陽君の居場所わかっちゃったかも』という物だった。
それを見た瞬間、背中に寒気がした。
「とりあえず私は、『どこなの?』と言ったけれど、それは既読スルーされてる」
その言葉だけで恐ろしさを感じる。
ああ、芹原の恐怖がまたやってきたのか。やだなあ、本当に嫌だなあ。鈴美と一緒に永遠に暮らしたい。
「陽太君、変に驚かせてごめん」
「え?」
「たぶんこれは脅しだからさ、毅然としたらいいと思う」
「そうか」
そして僕は一さんを見る。
「大丈夫だ。俺は君を守る。鈴美の大切な人なんだから」
「ありがとうございます」
そう、一さんが言ってくれたのを聞いて、少し安心した。
どうだよな。何も恐れる必要なんてない。
僕には頼れる見方が沢山ついていてくれてるのだから。
その後、僕が食事を終えたという事で、部屋に戻る。
今日も一日が過ぎた。まだ鈴美の家に来てから二日しか経っていないのが嘘の様だ。
勿論正確にはまだ七時。まだまだ色々と出来る時間帯ではあるんだけれど。ここからすることと言えばだらだらしてお風呂に入って寝るだけだ。
そんな時、
「今日一緒にお風呂入る?」
「はああ?」
その発言に驚いてしまう。
「なんでマジになってるの。わたしそんな痴女だったっけ」
「いや、そんな事を芹原が言ったことがあるから驚いてるんだよ」
「実際にあったんだね」
「ああ、あれは嫌な思い出だよ」
そうあんなのほんとうに嫌な思い出だ。
「そうなんだ。なら上塗りしよっか」
「それは本当にやめて欲しい」
「流石に攻め過ぎた?」
「うん」
「でもさ、いつか一緒にお風呂に入りたいね」
「まあな」
そもそも水着越しとは言え、鈴美の胸は見ている。その事から考えたらそこまでたいそうな事じゃないのかもしれない。
いや、冷静に考えたけれど、普通に考えてだめだろう。
「それは保留で」
「はーい」
鈴美が調子よさそうに言った。




