第66話 ボーリング
そして次に僕たちは別の場所に遊びに行く。そこは、ボーリング場だった。
「ここ行ったことなかったよね」
「うん」
正直ボーリングは人生で初めてだ。
ボーリングという競技に正直わくわくしている自分がいる、
「ボーリングかあ」
でも、少し不安な要素もある。
「上手くボーリング出来るかな」
そこが不安だ。
僕はボーリング自体初めてなのだ。
ガタ―連発とかになりそうで怖い部分もある。
大丈夫だよな、とこころに問いかける。
大丈夫そうじゃない理由がたくさん見つかって軽く憂鬱だ。
相手が鈴美だから、失敗をしても笑ってくれるだろうか。
そして鈴美が色々と入場手続きを済ませ、僕たちはいよいよボーリング場の中に入っていく。
中は少し楽しそうな雰囲気がする。皆がそれぞれのレーンにボールを転がしていく。
そしてピンが倒れる音が定期的にして、少し楽しい。
「じゃあ、早速やろっか」
「そうだね」
僕たちは互いに頷く。
そしてまず、鈴美がボーリングの球を持った。
「いくよー」
そう言って鈴美は早速ボールを投げる。
そのボールはどんどんと転がっていく。
しかし、吸い込まれるようにガターへと落ちてしまった。
結果は0ピンだ。
「なんでよ」
鈴美は憤慨する。悔しそうだ。その様子を見ているのが楽しい。
そして二投目も同じようにガターに吸い込まれた。鈴美が早速失敗例を見せてくれた。
僕が笑っていると、
「今度は陽太君が処刑される番だからね」
「分かってるよ」
それに処刑って何だそれは。
僕が上手く行かない前提で話してないか?
僕はボールを投げる。
そのボールは上手く転がっていき、そして端の一ピンを倒した。
二球目は残念ながらガターに吸い込まれたが、結果は初めてにしては上々だ。
「僕の勝ちだね」
そう、鈴美に誇らしげな表情を見せると、鈴美は目に見える様子で悔しがる。
「次は負けないから」
そう言って鈴美は再びボールを手に取る。
そして勢いをつけて転がした。
そしてそのボールは見事に真ん中に命中する、ことも無く再び無情にもガターに吸い込まれていった。
「なんで!!」
鈴美はその場で地団駄を踏む。
二投目も、またガターに吸い込まれていく。ピンが倒れる気配すら見えない。
「鈴美、小学校の時ここでボーリングしたって言ってなかった?」
「感覚を忘れたのよ」
焦っている様子だ。たぶん本人は、気丈に言っていると信じ込んでいるが。
「それよりも陽太君こそ、次は上手い事投げられるの?」
「鈴美以上のピンを倒すよ」
「分かった。見とくから私以上のピンを倒して」
とは言え、<|《より上》じゃなくて≦|《以上》という事は、0ピンでもいいという事だ。
だけど、今回もピンを倒したい。そして、鈴美相手にドヤ顔を披露したい。
僕はボールを持って勢い良く投げる。
そのボールは、地面を早い勢いで転がっていき、左のピンに命中。
合計6本のピンが倒れた。
「よっしゃ」
僕はガッツポーズを決めた。
鈴美の顔を見る。不満げな様子だ。
「もう、悔しいから陽太君の分も奢ったけど、やっぱりやめた」
「え、それ冷たくない?」
「なら、接待してよ」
「んな無茶な」
何安打今の会話は。
だけど、鈴美の顔をふと見れば、すっきりしている様子で。ストレスは解消できたのかな、と思った。
そして僕が二投目を投じると、それは残念ながら一ピンも倒せなかった。
鈴美が「一ピンも倒せてないじゃん」と言ってきたが、たぶんさっきの投球でピンが倒れてなかったら4ピンは最低でも倒れてたんじゃないかなと、思う。
そして再び、鈴美がボウリング球を持つ。
「今回はストライク宣言させてもらうから」
「は?」
ストライク宣言。何だそれは。
「絶対に、全部倒すから」
「やってみてよ」
「分かった」
鈴美、今まで四球連続でガタ―なのに、ストライクなんて取れるのか?
僕は、イスに座り、期待せずに鈴美の投球を見た。
だが、鈴美のボールは勢い良く転がり、八本のピンを倒した。
「どう? どう?」
鈴美はにやにやしながらオチらを見る。スコア場では並ばれた。
「これがわたしの実力だよ」
「ストライクじゃないけど」
「それは文句言わないでよ」
鈴美はもう、と息を吐く。
そして鈴美は再びボールを投げる。そのボールは見事に残りの一品をかすめ取った。
これでスコアは逆転されてしまった。(勿論鈴美が先行だから、正確には次の僕の一球が残っているけれど)
「じゃあ、陽太君、次引けるかな」
「急に調子に乗らないでくれよ」
次ぼくがストライクを取る可能性もスペアを取る可能性も残っているじゃないか。
そして僕は一球投じた。
そのボールは転がっていき、中央付近に当たる。
7ピンが倒れた。くそ、鈴美は8ピンだから、それには敵わない。
だけど、この次の一球で、ニピン倒してやる。
僕はボールを全力で投げた。
そのボールではピンは倒れなかった。
「やった、わたしの勝ち」
「くそっ、でも総合点数では僕の勝ちだから」
「でも、1回に倒れたピンはわたしの方が多いよ」
「そこが悔しいんだよな」
その後もボーリングはどんどんと続いていく。
鈴美も僕も必死にピンを倒していく。
そして最終的に、八セット目の終わりの時点で並んだ。あとワンセット。どっちが勝つかどうかに試合の流れは来た。
「まさか、わたしがここまで追い込まれるなんて」
鈴美は肩で息をしながら言った。
些か疲れていそうな様子だ。
だけどそれも当然だ。僕たちは必死の死闘をし続けてきたのだから。
「負けない」
そう言って鈴美が投げる。そのボールは真っ直ぐに転がっていく。
そしてそのボールは行きおそのままに、
と言いたかったが、途中で左に曲がっていく。
「うそ」
そう鈴美は言うがそのボールのカーブは止められず。
そのまま三ピンだけ倒しガターに堕ちた。
「そんな」
鈴美はがっくりと肩を落とす。
そしてそのショックは尾を引いているみたいで次のボールもガターに入り、合計三ピンのみしか倒せなかった。
チャンスだ。ここで沢山――4ピン以上倒したら僕の勝ちだ。
「行くよ」
そう言って僕はボールを投げる。
だけど、最後上手く力が入らなかった。
そのボールは僕の手を離れ、力なく転がっていく。
速度が遅い。これだと非常にまずい。
そして僕が危惧した通り、ボールは端のガターに落ちていった。
0ピンだ。先程まで沈んでいた鈴美の表情が明るくなっていく。それに対し、少しだけイライラを感じる。
「次こそ決めるから」
「やってみて」
僕はまたボールを投げる。
よし、今度は行けた。そんな感覚を抱いた。真っ直ぐ転がっている。まあgる気配もない。ボールは最後若干左に曲がったが、それでもだ、六ピン倒した。
これで、僕の勝ちが確定した。
「やった!!」
僕が万歳をすると、鈴美は不満げな様子で、僕の背中を掴んでくる。
「決めた。今日は、陽太君をかくまわない」
「え?」
「もう家におかない」
「それはずるいだろ」
それはまさに僕の弱みだ。それを言われては僕にはなすすべがない。
「勝ってごめんなさい」
「それも嫌味に聞こえるって」
「確かに、ごめん」
「煽ってるよね」
もう、と腕を組みながら向こうを見つめる鈴美。僕はそんな鈴美に許しを請い、ようやく許してもらえた。




