第63話 帰路
「そう言えば、鈴美が僕に過去を話したくなかった理由っていったい何だったの?」
僕はそう訊いた。
その答えがまだ帰ってきていない。
「え」
鈴美は軽く顔を赤くする。
そして、その顔を見てにやにやする香奈さん。
何か言いたくないことがあることは間違いがないだろう。
「えっと」
「お願い」
僕はそうお願いした。
まさかここまで気にならせて離さないなんてひどい話だ。
訊きたい、という気持ちは段々と大きくなっていくのだから鹿らがない。
「分かった」
鈴美も観念したようで、静かに口を開く。
「でも私から話すの恥ずかしいから」
「はいはい、分かりました」
そう言って手を上げるのが香奈さんだ。
「じゃあ、私から話すよ」
「鈴美はね、こう見えて結構中二病に罹患してたんだよ」
「中、中二病?」
中二病と言えば、あの厨二病だろうかとも言うあの中二病だろうか。
中二病と言えば、あの中学生半ばに罹患し、自分を特別な人間だと思い込み過ぎたり、「神の雷よ降り注げ」だとか「我に傷をつけたのは貴様が初めてだ」などと、漫画のラスボス系敵キャラのセリフ(だけど、少しダサい)を言うのが大好きなあの?
「仕方ないじゃん」
僕が鈴美の顔をじっと見ていると、鈴美は恥ずかしがりながら言う。
「だって、かっこいい言葉だと思ってたんだもん」
その鈴美の表情が可愛らしくて、僕はドキッとした。
「ありがとう」
僕はそして一言そう言った。
「え?」
鈴美はそう不思議そうな顔をして、僕を見る。
「鈴美のかわいらしい一面が見れて嬉しかった」
「きゃー」
その言葉に一目散に反応したのが、香奈さんだ。
「二人尊いよ」
「うるさい、香奈」
そして、もう7時とだいぶ日が落ちてきたので、帰ることとした。
だけど、帰りに鈴美の言っていた学校に寄ることとなった。勿論中には入れないから、外から見るだけにする。
「奇麗」
そう、僕は呟いた。夜になって、神秘的な星が多数みられる。
この星全てがきれいだ。
「ここがいい所なの」
その言葉に、僕も静かにうなずいた。
「学校もいいところだから」
そして学校に着く。少し一般的なイメージされる学校とは少しだけ違う様子だった。
小さい学校だ。だけど、立派に地面に立っている。
少し山を登った先にあったその学校を見て、鈴美が「懐かしい」と呟く。
僕は、そんな鈴美と一緒に学校の景色を目に焼き付けた。
そのまま僕たちは、戻る。
鈴美の家に戻ると、一さんが「おかえりなさい」と言った。
「鈴美、もう少し早く帰ってきなさい」
少し厳しめの声で言った。僕は思わず、びっくりした。
「大丈夫だって」
「熊とかイノシシが出るかもしれないんだぞ」
「そうだった」
そう言って鈴美は軽く舌を出す。
その表情が可愛らしい。
「全く」
そう言って一さんは、ミカンを置いた。
「食べるか?」
その言葉に、僕は「いいんですか?」と訊いた。
「陽太君、ここに来てからから質問多いね」
「そう?」
「多いよ。ずっと言ってるもん」
「気を使いすぎてるかな」
「そうだ。俺たちのことは実の家族のように思ってくれたらいい」
「ありがとうございます」
僕はそう言って頭を下げた。
確かにずっと気を使っていた。それも謎に、必要以上に。
だけど、そっちの方が失礼なのかもしれない。
「ねえねえ、陽太君見て」
「どうかしたの?」
「これ」
それは、香奈さんからのメールだ。
『今日は楽しかった!!』
その一言のメッセージと、可愛らしいクマのスタンプが送られてきた。
「僕も楽しかったって送っといて」
「うん」
そして鈴美は手慣れた手つきで、『僕も楽しかった。BY陽太』と書いた。
そして、お風呂につかる。
とは言っても、鈴美と一緒に入るわけじゃないからいつもと変わらない。
ことも無いや。いつもの方が大変だ。何しろ、
『あたしも陽君と入りたい!』って言って裸を見せてきたからな。
僕も思春期の男子だ。それを見て、思わず反応してしまい、
「え、陽君照れてる」
なんて言われたからな。乱入リスクがないだけましだ。
あの時、胸を初めて見た。それも、水着越しじゃないものだ。
初めては鈴美とがいい。
勿論鈴美の裸をめっちゃ見たいとか、そう言うわけではないが、
鈴美とか。胸にタオルでも巻いてたら混浴も出来るのだろうか。
何しろ、お風呂はそこそこでかいのだから。
そしていよいよ寝るタイミングとなった。
僕と鈴美は寝室に向かう。
「たぶんまだ眠くないよね」
鈴美が訊く。
「うん」
僕はそう答える。
昼間に寝過ぎたのもそうだけど、もう一つ問題点がある。
今日色々とありすぎて、少し心がざわついているのだ。
「寝たふりして、ゲームでもしちゃう?」
「それっていいの?」
「ばれなきゃいいの」
鈴美は小さい声ながらも、ハイテンションで言った。
「確かに、イケない事をしているみたいで、楽しそうだね」
僕がそう言うと、鈴美が「そうそう」と元気よく言った。
「ゲーム用意するね」
そう言って、DSを取り出してきた。
「DSなの?」
こういう時ってテレビゲームなのかと。
最新ゲーム機かと思ったけど、それではないのだろうか。
ただ懐かしいようなゲームと鈴美と一緒にするのは、楽しいのだ。
「光が反射しちゃうから、見えちゃう」
「確かに」
とはいえ、DSでもしっかりとゲームができる。
二人で、カートレースを楽しむ。
布団の中で二人争うのは楽しかった。
そしてその次は某ポケットのモンスターゲームを嗜む。
懐かしい気分になる。
今も父さんの家の奥底で眠っているのだろうか。
二人で一緒に四天王を倒す。
今度は、アクションゲームだ。
二人で亀の大魔王に立ち向かった。
そこで、軽く睡魔が来た。もう1時だ。
「じゃあ、そろそろ寝よ」
「そうだね」
そして、僕たちは寝た。




