第59話 電車
そして僕たちはファミレスを出た。そして、次の目的地へと向かう。
そこは、駅だ。駅で電車に乗り、そこから目的地へと向かう。日も登ってきた。もう、職質される恐れはなくなってきた。
「電車だね」
鈴美が言う。
その言葉に僕は頷いた。
「陽太君とさ、電車乗るの久しぶりかも」
「前に乗ったのは、鈴美の家に行くときかな」
「そうだったね。そう言う意味では目的は一緒だね」
「今回は実家だけどね」
「うん」
そして電車がゆっくりと発射していく。
「鈴美の両親がどんな人か気になるな」
「普通の人だよ。そんな、驚く感じではないと思う」
「だけど、やっぱり気になるよ」
「気になるねえ」
鈴美はにやにやとする。
「言葉にするよりも、実際に見てもらった方が分かりやすいと思う」
「そんな感じなのか?」
「うん」
僕の言葉に、鈴美は頷く。
「なら、楽しみにしておくね」
鈴美がそう言うんだったら。
スマホなしでの電車はやはりだが、いつもと違う感じがした。
スマホが触れない。それだけで、なんと暇なのだろう。
だけど、外の景色がゆったりと流れていく。
電車の外の景色が流れる。
これも中々風情があると思った。
「鈴美、どれくらいでつくんだっけ」
「合計で三時間くらいかな」
「それなりの距離だな」
結構大変そうだ。
それだけの時間スマホなしか。
いかに、現代人がスマホ中毒なのかを思い返される。
というよりも、なんだか眠い。
そう言えば、僕は睡眠不足なんだった。
「鈴美、ごめん」
僕は鈴美の肩にもたれかかる。
「少し寝てもいい?」
「仕方ないなあ」
鈴美が笑う。
そして僕は、「ごめん、お休み」
そう言って意識を閉ざした。
★
「緊張したあ」
陽太が寝た後、鈴美はそう、小さな声で呟いた。
計画を立てたとはいえ所詮は高校生れべれるの物。
陽太と二人喋りながら目的地へは向かっていたが、その間も緊張が亡くなることはなかったのだ。
だけど、無事に電車に乗れて、さらに隣で陽太が気持ちよさそうに眠っている。
それを見ただけで、安心感がすごいのだ。
そんなことを思ったら、いつの間にか眠たくなってしまった。
前日は8時には寝たというのに。
鈴美もまた眠気に負けて、目を閉じた。
★
「陽太君、起きて、起きて」
なんだ、朝から騒々しい。いったい、どうしたっていうんだ。
「陽太君、もう終着駅に着いた」
「え?」
僕ははっと前を見る。そこには目的の駅、難波駅があった。
「ここで、乗り換えなきゃなの」
「そ、そうか」
僕はそう言って鈴美の手を取る、すると、鈴美は僕の手を引いて走って行った。
「あれからどれくらい経ったんだろう」
「1時間半」
「え?」
そんなに寝ていたのか。
予想よりも爆睡をしていたみたいだ。
「大丈夫、わたしも寝てたから」
そこからは地下鉄で難波まで行ってから、そこから南海電車に乗り換えることとなる。
すぐに地下鉄に乗り換え、難波に行く。
そして南海電車に乗った。
JRでもない、電車とは珍しいな、と思った。
僕が普段乗るのはJRばかりなのだ。
そしてそこでは眠らなかった。その代わりに、鈴美から小説を貰った。
暇つぶしにどうかなと言われて。
そして、小説を軽く読む。
100ページほど読んだ所で、駅に着いた。僕は電車を降りて、その足で鈴美の家に向かう。
バスに乗った。
山が沢山見える。
少し田舎めいた景色に見える。
「実家は山の方なの」
そう言う鈴美の言葉を聞き、僕はそのまま外の風景を見続ける。
「私ね、いじめられたって言ってたでしょ。私そもそも、毎日バスに乗って学校に通ってたんだよね」
「そうだったのか」
「うん。中学の時までだけどね。高校の時から一人暮らしし始めたんだよね」
「その理由は」
「聞いちゃう?」
「聞いちゃダメな事なのか」
「いや、そんな事はないけど」
「そんな事はないんだ」
そして、鈴美は息を吸う。
「普通に一人暮らしを体験したかったから、って言うのもあるけど、単にね、私、中学の人間関係が嫌になっちゃって」
「そうなのか」
という事は、鈴美は中学でも少しいやになって、高校ではいじめを受けて、激動の人間関係、だという事になる。
「鈴美も大変なんだな」
「うん」
「その、人間関係って言うのは、訊いたらだめな事?」
「まあ、言ってもいいんだけどね。でも、しょうもない事だから」
「なら、詳しくは訊かないようにするよ」
「うん。そう言う事でお願い」
そしてバスは目的地までついた。
バスから降りると、少し歩けば鈴美の家だ。
ああ、緊張してきた。
鈴美の両親に会うという事。
僕は鈴美の彼氏だ。
僕は、鈴美の両親になんて言われるだろうか。
もしかしたら、『どこの馬の骨かもわからんやつに、娘はやらん』なんて言われたりするのだろうか。
僕は不安になった。不安になり過ぎた。
だけど、僕は、結城を出さなくてはならない。
そして、鈴美の家に入っていく。
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