第52話 勉強会
そして夏休み前の最後の関門。
定期テストの時期がやってきた。
前回の中間テストではそこそこの点数を取れた。
今回も赤点を回避したいところだ。
何しろ、夏休みが短くなる、だけじゃない問題が生じてくるのだ。
そう、夏休みの逃避行が出来ない可能性も出て来る。
「陽君、一緒に勉強しよ!」
テスト前の土日。
早速芹原が僕の元へとやってきた。
「なんで?」
「え、テスト前だからじゃん」
それは分かってる。だけど。
「なんで芹原と勉強しなきゃいけないんだ?」
「えななんって呼んでよ」
「なんで呼ばなきゃいけないんだ」
「ケチ」
なぜ、お前にケチなんて言われなきゃならないんだ。
まあ、そんな事は関係ない。
「僕は一緒になんか勉強しないからな」
「子作りするかどっちかと言われたら」
「勉強」
「やったー!!」
結局その後は紅葉ちゃんを巻き込まれ、一緒に勉強することになった。
本音を言えば、鈴美と一緒に勉強したい。しかしその願いが叶う事など無い様だ。
そして、僕たちは教科書を開いていく。
テスト内容はそこまで難しくない。
だからこそ、教科書の内容さえ理解すれば高得点は取れるはずだが。
それでも難しい部分もある。
というのも気が散って中々勉強に集中できないのだ
そう、悪の根源、芹原恵奈のせいで。
困ったものだ。好きでもない女に肩を寄せられながら勉強するなんて。
でも後少しの辛抱だ。
それは分かっているけども、中々集中など出来るものではない。
心でため息をつく。
「ため息つかないの」
しまった、漏れていたようだ。
「もう、あたしのどこがそんなに嫌なの?」
「別にそこはいいじゃないか。それよりも勉強に集中しないと」
そう言って僕はシャーペンを握り、数学の問題を解いていく。
「ねえ、勉強会もしたよね」」
「ああ、一応したな」
毎日イチャイチャしながら勉強会を舌。あの出来事は今も忘れ去りたい黒歴史だ。
「また、あたしが教えてあげよっか」
あの頃はただ、教わるのがメインだった。
家庭教師えななんの手によって。
「いや良いです」
僕はそう返す。
あの頃のトラウマが掘り返されるからやめて欲しい。
「えー、あたしのどこがそんなに嫌なの?」
「全部」
「えー、辛辣―」
そう言ってぎゃははと転げまわる。
「お兄ちゃんそんなこと言うの酷いよ。ボク怒っちゃうよ」
そう言って紅葉は頬を膨らませる。
「起こるなら怒れよ」
今はもう頭がパンクしそうなんだよ。
「えー」そう言って、えななんがぶーぶーという。
そんな中僕は数学の問題を解いていく。
芹原が僕の姿を見ている。
不気味だ。
なんかやだな。
「陽君陽君」
芹原が僕のノートをトントンと指でたたく。
「ここ間違ってるよ」
芹原が笑顔で言った。
「ほら、因数分解間違ってる。ここ、プラスじゃなくてマイナスだよ」
確かにそうだ。間違っている。間違ってはいるんだが、なんとなくむかつく。
「もう、やっぱりあたしいないとダメじゃん」
さっきからずっとイラっとするな。
僕はバタンと教科書とノートを閉じ、カバンに入れる。
「出かけて来る」
僕は静かにそう言った。
付き合ってられない。我慢していたがそれもそろそろ限界だ。
そもそもここで、ストレスを植え付けられるわけにはいかない。
「あ、それいいね。じゃああたしたちも外で四日」
「好きにしてくれ」
「分かった、じゃあ洋君どこ行く?」
「は?」
「え、スタバとか」
こいつらまさか僕について来ようとしている?
そういう、事だよな。普通に考えて。
いやすぎる。
「僕は鈴美と一緒に勉強がしたい」
「え、御堂さんと? それよりあたしとしてよ」
「嫌だ」
どうしてこうなってしまったのだろう。
僕の隣には鈴美。これは別にいい。いや、別にいいというよりも最高の状況だ。
だけど、その正面が問題だ。
僕は顔を上げる、すると芹原がにひひーと笑った。
「鈴美、ごめん」
僕は鈴美に向かって頭を下げた。
まさかストーキングされているなんて知らなかった。
今更別々の席でお願いします、だなんて言える感じではない。
店内もそこそこ混雑しているのだから。
「じゃあ、テスト勉強やろっか」
鈴美は淡々とそう言った。
その裏で、スマホに通知が来る。僕はそれを見た。するとそこには、
『気にしなくてもいいよ』
という通知が。
『そもそも勉強に誘ってくれたこと自体が嬉しいし、あまり気にしなくても大丈夫。二人の世界を作って行こうよ!! それに、気になることもあるし』
『気になる事?』
『それは今は考えなくていいよ。とりあえず二人で勉強に集中しよ』
ああ、鈴美は優しいな。そう思い『うん』と返した。
そして、鈴美の顔を見ると、鈴美は微笑んで見せた。
そしてそのまま僕は鈴美と一緒に勉強会を始めた。
そのたびに芹原が邪魔してくる。
これはもう仕方ないのかもしれないが、それでもモヤモヤっとはする。
だけどそんな生活もいつか終わる。
そう、言えで計画を実行できれば。
『私ね』そんな事を考えていた時、また鈴美からメールが届いた。
『もっと知りたいのこの家族の事が。だから、むしろナイスプレーだと思ってるの』
『どうしてそう思うんだ』
『だって、敵を知らなかったら何もできないでしょ』
『確かにそうだな』
俺がそう返信したタイミングで、鈴美が。
「ねえ、ちょっといい?」と二人でたいして聞いた。
僕はぎょっとしながら鈴美を見た。
まさかいきなり仕掛けるなんて思ってもいなかった。
もう少し様子を見ると思っていた。
「なに?」
そう、あざとっぽい感じの声で芹原が答えた。
「ボクたちと一緒に勉強してくれる気になった?」
そして、それに対して鈴美は、
「家ではいつもどんな感じなの?」と訊いた。




