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壮大な嘘告白をされ人間不信になった僕、後ろの席の女の子が付きまとってくるようになる  作者: 有原優


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第51話 作戦会議

 鈴美の家に入って早速僕が感じたことと言えば、質素な家だという事。

 勿論一人暮らしだから当然の事ではあるけれど。



 僕はどうぞと敷かれた座布団の上に座る。


 すると、鈴美が紅茶を入れてくれた。

 

 その紅茶を見る。きれいなカップに入れられたおいしそうな紅茶。

 さぞ味も美味なのだろうか、

 そう思いながら紅茶をそっと飲む。上品さを意識しながら。


「美味しい」


 心の底からそう思った。

 そもそも僕は紅茶なんてほとんど飲んだことがなかった。

 だけどこれは、そんな僕でも分かる。上品なものだ。


「良かった」

「鈴美って紅茶を入れられるのか。すごいな」

「うん。ちょっと贅沢だけどね。今日は陽太君が来たから特別」


 鈴美はそう言って笑った。

 贅沢という事は、恐らくはそれなりに高価なものなのだろう。


 そして、鈴美もまた席について。


「じゃあ、話し合おう」


 と言った。


 楽しい時間も束の間、真剣な話し合いの開始だ。




 さて僕たちが話し合わないといけないのは、逃避行をどうするかだ。


 行き場所、目的地、そしてどういう感じで逃走するのか。

 今日一日だけでは全ては決められないとは思う。

 だけど、ある程度までは話を固めておきたい。


「まず僕はどうしたらいいの? なんて、人頼りすぎるよね」僕はポリポリと頬をかきながら言った。


「そうだね、そこは二人で話し合おうよ。まずどこに行くかとかさ」

「どこに行くか」


 たしかにその視点が抜けていた。

 パスポートももってないし、言語能力もかけている僕たちが向かう先は必然的に国内にはなるが、そこでどこに行くか。


 例えば、沖縄。例えば福岡、例えば奈良。様々な選択肢が取れる。

 どこも僕たちの住む長野県からはちょうどいいくらいの距離だ。

 そう、遠くもなく、近くもなく。


 僕は、スマホを開く。

 どこか、いい場所はない物だろうか。


 僕は一つの場所に引っかかった。


 金澤。そう石川県だ。

 一度行ってみたいなとも思っていた。

 底ならば、楽しめるかもしれない。


 僕はゴクッと唾を飲み込む。


「石川県とかどう?」


 そして一言言った。


「石川県?」

「うん」


 僕は頷く。

 この前だったかネットニュースで見た。

 最近結構人気だと。


 ここに行きたいと、なんとなく思ったのだ。


「分かった。陽太君がそこがいいのならそこがいいんでしょう。これで決定ね」


 こんなにあっさりと決まるものなのか?


「と言いたいんだけどね」


 やっぱりすんなりとはいかないみたいで、鈴美がすっと目線を落とす、


「問題があるの」

「なに?」

「生活費の事」

「あ」


 僕はそう声を漏らす。

 確かにそうだ。


 僕たちは生活費を稼げない。

 バイトとかできたらいいだろうが、それには必ずしも親の許可が必要になる。

 となると現実的ではなくなるのだ。


「だからね、ここしかないのかなって」

「どこ?」

「私のつてを頼るの。和歌山よ。両親が住んでるの」


 なるほど。鈴美の両親にかくまってもらうのか。



「でもそれって可能なのか?」

「なんで?」

「迷惑がかかっちゃうんじゃ」

「そんなの構わないでしょ。だから私の家に行こ」

「もしかしてきて欲しいからとかじゃないだろうな」

「うん。来て欲しいからとかじゃないよ。陽太君を助けたい気持ちに嘘はないもん」


 そう言って鈴美はトンっと胸を張った。


「なら、ありがたく頼ろうかな」

「私の彼氏だと紹介したらあっさりと受け入れられそうだしね」

「え?」

「彼氏でしょ」

「……親に公表するってことでしょ」

「うん」



 その状態で鈴美の両親に会うなんて。


「恥ずかしすぎる……」


 僕の顔は赤くなっているだろう。


「それに、もう一つ問題がないか?」

「なに?」

「僕は家出でしょ。それを正直に伝えて受け入れてもらえるのかな」

「それは大丈夫でしょ。それに私を信じて。上手く説明するから」

「うん」


 僕は頷いた。

 

「それで、決行日だけど、夏休みが始まってから二週間がたった時でいい?」

「うん。いいと思う」


 元々家出をするなら夏休みしかないし、夏休み開始直後だと難しい問題が生じて来る。

 なぜ二週間後という単位を決めたのかは分からないが、鈴美が決めたものだからそれに従おう。

 

 そして、そこまで話し合ったところで、

 時間が来た。

 そろそろ帰宅しなきゃならない時間だ。

 最後に時間があったら

 だけど、その前に。


「少しだけ探検していいか?」

「私の家を?」

「うん。もうそろそろ帰らないといけないから」

「いいよ。でも、お風呂と部屋はだめ」

「分かってる」


 部屋、つまり寝室の事だろう。

 誰だって見せたくない物はある。

 鈴美の部屋には僕にさえ見せたくないものがあるのだろう。

 それとも単に、部屋を見せたくないのか。


 まあ、嫌がってるものを無理に見る必要はない。

 僕は、鈴美の家を探検してから家に帰った。



 家に着いたのは17時1分。一分遅れだ。

 とはいえ、何も言われることがなく、安心をした。


 ベッドに寝ころぶと、また芹原からお願いをされる。

 小作りだ。

 嫌だいやだ。そう思いながら断った。


 僕は夏休みまで耐えられるのか。

 そんなことを思い、憂鬱だ。

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