第46話 謎
僕たちが次にとった選択肢。それは、父さんたちの所に行くことだ。
勿論打算的な意味はある。
それは、父さんが隠している事について知るためだ。
父さんと姉ちゃんは僕に情報を隠している。
それはもう確定だ。
だからこそ、僕たちはその秘密を探らないといけない。
それがなければ、何も始まらないのだ。
僕は、学校終わりに、父さんと姉ちゃんに会いに行った。
「おかえり」
姉ちゃんは急にやってきた僕たちに、驚くことなく、迎えてくれた。
「時間は何時まで大丈夫?」
「あまり長くは居れないかな」
実は昨日、帰りが遅かったことについて責められたのだ。
鈴美の名前を出せなかったからこそ、学校の用事を済ませたかったと言ったが、
今度からは一八時までには変えることを強要された。
「それで、単刀直入に効きたいんだけど」
「なに?」
姉ちゃんは優しく微笑む。
「姉ちゃんは、何か僕たちに隠し事でもしてる?」
姉ちゃんはその言葉を聞いて、少し固まった。
「鈴美ちゃん」姉ちゃんは静かに言葉を発した。
「美咲さんにこんなことを言うのは申し訳ないと思ってるけど、でも、教えて欲しいの」
その鈴美の言葉に、姉ちゃんは静かに首を振る。
「言っちゃったら、きっと私の事が嫌いになる」
嫌いになる。
姉弟の絆とかそんなものが関係ないくらい酷い過去なのか。
ただ、そんなことを言われたら、ますます知りたくなってしまう。
そもそも、教えてくれないという事で、僕の中の姉ちゃんに対する不信感が出てしまっているのだから。
そもそも、裁判で負けた、とかいう嘘で騙し通せると思ってる。そう思われてる方が屈辱的だし、
真実を教えてもらえないというのが悔しい。
僕たちは姉弟のはずだ。
血は半分しか繋がってないけど、それでも姉弟のはずだ。
僕が真剣な目で姉ちゃんを見つめていると、姉ちゃんが一瞬怯んだようなしぐさを見せる。
チャンスだ。そう、僕は思った。
「姉ちゃん、お願いします。僕に真実を教えてください」
もう一度、頭を下げる。
「今のまま、僕だけが知らない状態が続くのが嫌なんだ。そもそも今の僕にとって姉ちゃんはもう信用足る存在じゃない。父さんも、みんなして酷いよ。僕に隠し事をして」
「陽太……」
「今は僕が一方的に、その弱みのつけを払わされている状態なんだ。なのに、その弱みが何かを知れないなんて、僕は何のために頑張っているんだ」
僕がそう言うと、姉ちゃんはまた黙った。
そして、静かに「明日話すわ」と言った。
僕は静かに、「うん」と頷いた。
その日は帰ることにした。門限が迫っていることもあるし、何より、姉ちゃんとは気まずい。
鈴美と、駅で解散して家に戻る。
「陽君おかえりー!!」
そう言って僕に抱き着いてくる人が一人。当然芹原だ。
僕は、彼女に抱き着き返す。
嫌だけど。死んでも嫌だけど。
「ねえ、一つ訊いていい?」
「なに?」
「今日も、御堂さんといたよね」
その言葉に僕は唾をのんだ。
怖い。
まるで、メンヘラみたいだ。
今度は僕を支配しようとしている。また、恐怖の鎖を巻こうとしている。
せっかく、鈴美が解放してくれたんだ。それに屈するわけにはいかない。
「うん、いたよ」
僕は、しっかりとそう答えた。
「ふーん。やめないんだ」
「やめないよ。僕は自分のこの選択を信用してるから」
「そっかあ。でも大丈夫。あたしはもう陽君を虐めないから、ね」
「その代わりに、鈴美に手を出すとでもいうのか?」
「うん。そうだね」
「鈴美は対策してる。前みたいにすんなりと誘拐なんてできないよ」
それに前回も鈴美は、GPSを付けていた。
そのおかげで、あの人が僕たちが誘拐されていることを察せたという訳だ。
今回もGPSをONにして、誘拐されたらそれで誘拐された場所を分かる。
そうなれば今度こそ、芹原は終わりだ。
未成年とは言え、2度も誘拐したら今度は厳重な罰が下されるだろう。
そもそも今芹原が一緒に住んでいる状況自体が謎なんだけど。
「そう。まあいいよ。陽君がそれが望みなら」
そして、そのまま、僕の手を取って、ベッドに向かう。
手は強く握られており、中々外せない。
「なんでベッド……」
僕がそう呟くと、芹原は僕の目を真っ直ぐに見る。
「そう言えば、完全に忘れてたけど、あたしたちって既成事実作ってないよね」
「え?」
その言葉に、僕は声を漏らす。
「いつかしようね」
「それを言うために、ベッドに?」
「違うよ、それは」
そう言って上からベッドの上に降り立つ人物が一人。
紅葉だ。
「昨日早く寝ちゃったじゃん。だからその続きの話をしようかなって」
「……なに?」
恐る恐る訊く。すると彼女は笑顔で、
「お兄ちゃんさ、恵奈ちゃんと結婚してあげてよ」
「は?」
話が飛びすぎだろ。
どうしてそうなった。
「恵奈ちゃんはさ、お兄ちゃんの事が本当に好きなんだよ。だから付き合ってあげてよ」
芹原は、僕の事が、好きだった。だけど、いじめに屈する、苦しむ僕の姿はもっと好きだ。
そして今は、鈴美に僕を近づけさせないように、そっちの意味の既成事実を作ろうとしているのだ。
「今付き合ってる子よりも、お兄ちゃんの事を大事にしてくれるよ」
数で攻めるか。
そもそも、僕には逃げ場がない。
どうしようもない状況だ。
だけど、最大の防御は攻め、という言葉がある。
「僕は鈴美しか眼中にない」
僕は鈴美と本当の意味で付き合った。
昨日、互いの気持ちを確認し合った。
「早く子ども作ろうよ」
芹原が言う。
本当にやめて欲しい。
これ以上泥沼化させないで欲しい。
「僕にはそんな気はないから」
「ああ、もう!」
僕は勢いで撥ね退けて、リビングに行く。
そして、漫画を読み始めた。
ああ、早くこの状況から解放されたい。
明日、秘密について知りたい。




