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壮大な嘘告白をされ人間不信になった僕、後ろの席の女の子が付きまとってくるようになる  作者: 有原優


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第46話 パンダVSレッサーパンダ


 そして僕たちは手を繫いで、動物たちを見ていく。


 全員可愛らしい。

 先程のような落ち込みの気分がなくなっている。

 鈴美の魅力のおかげか、と思うと感謝の気持ちでいっぱいだ。


 そのまま僕たちは様々な動物を見た。

 鈴美と一緒に動物園に行くのは初めてだ。

 遊園地なら、あるけれど、実はそこまで、デートらしいデートをしたことがない。

 だからなのだろうか、今をすごく楽しく思える。


「鈴美」


 僕はレッサーパンダを見て、そして鈴美を見る。


「なに?」


 そう返す鈴美。


「可愛いな」

「へえ、どっちが?」

「どっちが!?」

「私とレッサーパンダか」


 僕は鈴美とレッサーパンダを見比べる。

 いや、比べる物ではない気がするけれど。


「レッサーパンダかな」

「ひどい、別れる」

「別れるって……」


 僕たちはついさっき付き合ったばかりじゃないの。

 偽カップル時代を含めなかったらだが。


「えんえんえん」


 鈴美はわざとらしい泣きまねをする。


「もう、分かったから」


 僕が鈴美の頭をポンポンと叩くと、「ごめんは?」などとふざけた言葉をのたまってくる。


「はいはい、分かったから。ごめん、鈴美の方が可愛いよ」


 僕がそう言うと、ようやく機嫌を取り戻してくれたようで、


「ありがとう」


 そう、言ってくれた。


 しかし先程までのシリアス感はどこへやら。すっかり平和な空気に納まった。


 これも、鈴美の配慮なのかな、とふと思った。


「鈴美、ちょっと聞いてほしい事があるんだけど」


 和やかになったところで、またシリアスに戻すのも申し訳ない。

だけど、これは話したほうがいいだろう。

そう、必要な事だ。


「なに?」

「レッサーパンダの前でするのも失礼な話なんだけど」

「うん」

「あの家族についての話なんだ」

「詳しく聞かせて」


 鈴美の目、覚悟が決まったかのような目だ。


「言うよ」


 即がそう言うと、鈴美は小さくうなずいた。


 スケールが大きすぎる話だ。いざ離しても、信じてくれるかどうかは――


 いや、僕は決めたじゃないか。鈴美を信じるって。

 鈴美が信じてくれない。そんなの杞憂に終わる事だろう。


 僕は、小さな声で話し始めた。

 そう、あの山であったことだ。


 僕の話を鈴美は黙って、真面目に聞いてくれた。


「あり得るとは思ってた」


 僕の言葉を聞いた後、鈴美は小さくそう呟いた。


「陽太君が、一時的に私を避けていた理由が分かった気がする」

「うん」

「人を殺せるってすごいよね。それだけで、怖い人になるもん」


 確かにそうだ。

 三人の人を病院送りにしたヤンキーとかよりも、一人殺したことのある人の方が、僕は怖い。


「そうだよな」


 僕は小さく口を開く。


「僕はもう理解できないと思う。たとえどんな事情があったとしても」

「うん」

「僕は、人殺しだけは絶対にしちゃいけない事だと思ってるから」

「それは私もだよ」


 そう、鈴美もうなずく。


「ごめん」

「どうしたの?」

「急にこんな話をして」


 急に怖い話をして。

 楽しい空気になっていたのに、壊したんだ。


「ううん、聞けて嬉しかったよ。それに、今日は楽しんで後の事は後で考えればいいから」

「うん。そうだね」

「だからさ、まずは、楽しもう」そう言って鈴美は僕の手を握った。しかもそのつなぎ方は普通のそれではなく、恋人つなぎだ。


「これは?」

「愛を伝えたから、今度は行動で示すの」


 それを言う鈴美は、楽し気な笑みを浮かべている。


「鈴美には癒されるよ」

「癒されるなんて、嬉しいね。最初はあんなに嫌がってたのに」

「最初って……」


 最初はそりゃ、半ストーカーと化してたから仕方ないだろ。


「そう言えば、鈴美は、僕のどこを好きになったんだ?」


 タイミング的に、あまりそういう話は聞けていなかった。


 そう、鈴美が言ったのは僕が好きだから守りたい、という事だけ。

 好きな理由を聞いていない。


「え?」鈴美は目を丸くする。そう、まさに言葉の如くだ。


「聞いてなかったなって思って」

「ああ、そう言う事」


 鈴美は一瞬髪を整え、それから口を開く。


「なんで好きかって考えてなかった」

「え?」


 僕はがっくりと肩を落とす。


「ごめん、言い方が悪かったよ」そう言って鈴美は僕の肩を優しく撫でる。


「私にとっては陽太君と一緒にいるのが一番楽しいの。だから特別な理由なんてないんだよ。だけどさ、これだけは言いたいの」

「つまり鈴美の言うのは、友達の延長戦という事?」

「うん。それもあるよ」

「それも?」


 なんだか気になる言葉だ。


「だけどさ、私今恋人つなぎしてるでしょ」

「うん」

「なんだか、楽しいなって」

「何だそれ」


 僕のその言葉に、「本当に思ってるんだからね」と、頬を膨らませる。


「実際、ハグとか気持ちよかったし」

「流石に、公衆の面前では恥ずかしかったけどね」

「ふふ、そんなこともあったね」

「そうだな」



「ねえ見て、ペンギン可愛い」


 そして、鈴美がペンギンを指さす。それを見て、可愛いなと思った。


 勿論、鈴美の事だ。

 今まで、そう言う気持ちで鈴美を見たことがなかった。

 ああ、そう言う事なんだな。


「うん、そうだね」


 多分鈴美の言う好きよりも僕の言う隙の方が大きい。

 勿論それは、鈴美の心の中を見られないわけで、ただの憶測でしかないんだけどね。

 だけど、それでも。


 今日は、鈴美への恋心を本当の意味で自覚できた。

 それでいいじゃないか。

 うん。


「可愛いね」


 僕は鈴美の言葉にそう返した。


「私とどっちが可愛い?」

「鈴美」


 今度はそう返した。


「レッサーパンダよりも、パンダの方が可愛くないんだ」


 そう言って鈴美は僕の背中を叩く。


「いや、そうというよりも、僕の中での鈴美の評価が上がった」

「なにそれ」

「鈴美はどっちの方が可愛いと思うんだ。ボクとパンダ」

「そうだねえ。冗談を言うならパンダで、本音は陽太君かな」

「なにそれ」


 そして僕たちは互いの顔を見て、そして笑った。


 最近、苦しみの中で生きてきた僕にとっては、ここ最近で一番楽しい日だ。

 こんな日があれば、あの地獄にも耐えられる。僕はそう感じた。


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