第31話 結末
「どうしてここに」
「助けに来たのよ」
「なぜここが分かって」
「そんな事はいいから」
そう言って、山下さんは僕たちの縄を解き始める。
「ありがとう」
「それより警察呼んだから、逃げよう」
「うん」
「ええ」
そして僕たちは家の外に出る。そして遅れて到着した警察に事情を説明した。
なにやら何まで。今あったことをすべて。
そして、僕たちが家に帰れるようになったのは、それから三時間後のことだった。
「疲れた」
鈴美はその場に寝転がる。
「うん疲れた」
僕も首肯する。
何しろずっと縛られていたせいで、疲れが出ている。
そこに、警察の方からの事情聴取とかだ。
疲れない方がおかしい。
今日これからまた勉強できるのかどうかも怪しい。
でも、きっと未成年だからあの二人はそこまでの罪にはならないんだろうな、と思う。だけど、きっと。
警察が関与したら、転校は余儀なくされるだろう。
あれから、長く続いていた芹原問題もようやく解決するだろう。
ちなみにテストは月曜から金曜日まで、毎日ある。
月曜日のテストが受けられなくなってしまったため、土曜日に今日の分は回されることとなった。
その際には先生に謝られた。別に謝られるようなことは何もないのだが。
だけど、もし赤点を取ったとしても、先生が配慮をしてくれたら嬉しいな、なんて思う。
そして僕たちはせっかくだから家でそのまま勉強をした。
「ごめんね、何もできなくて」
姉ちゃんが謝る。
「姉ちゃんが謝る事なんて何もないよ」
姉ちゃんは普通に大学に行っていた。
その時に僕を守れなくても何も不思議じゃない。
「でも、無事でよかった。鈴美ちゃんも」
「ありがとう、ございます」
「私があんなアイデアを出したのが悪かったのかもね。偽恋人だなんて」
「姉ちゃんのせいじゃないよ」
僕は言う。
「あくまで実行したのは僕らだし、その結果あの人たちは警察のお世話になることになったんだから」
「……そうね」
そう言って姉ちゃんが笑った。
姉ちゃんが教えてくれるおかげで、勉強はかなり進んだ。
配慮とかがなくても、テストは余裕かもしれない。
進展があったのは、金曜日の事だった。
当然ながら、芹原は火曜日からは、学校には来ていない。
テストも受けていないから、心配されていた。
不登校にでもなったのではないかと。
勿論、芹原に起きたことは、その真逆。不登校に追い込もうとした天罰だ。
そして、先生が言った。
「芹原さんが家庭の事情で転校することになった」
やっぱりか。転校から一か月もたたずの転校。
多くの人達が、「なんでですか?」と訊いた。
だが、先生は「複雑な事情だそうだ」としか答えなかった。
家庭の事情とは便利な言葉だ。
細かい訳を話さずに済むのだから。
それに、言いにくい事と言ってしまえば勝手に曲解してくれる。
もちろん僕と鈴美は本当の理由を知っている。
芹原は問題行動を起こしたため実質的な自主退学となったのだ。
だけど、実際クラスの中で知らされて僕は本当にほっとした。
ちなみに芹原に関しては、刑事罰には問われないらしい。
僕個人としては、少年院に行って欲しいと思ったが、流石にそこまではいかなかった。
だけど、遠くの学校に転校することが決まったらしく、納得することにした。
だけど、これで僕の長きにわたる因縁。
芹原問題はもう大丈夫だ、そう僕は思う。
もし次に何かすることがあれば、その時はその時だ。
ようやく安全な生活が送れる。
僕の心にはワクワクの気持ちが詰まっていた。




