表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
壮大な嘘告白をされ人間不信になった僕、後ろの席の女の子が付きまとってくるようになる  作者: 有原優


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

30/81

第30話 襲撃

 そしてテストが始まった。

 だけど、そこで問題が出て来る。


 僕はテスト会場、つまり学校にはつけていなかった。



 僕の目の前には相原がいた。

 先ほどまで、鈴美とテストに関しての話をしていた平和はどこへやら。

 今、僕たちがいるのは絶望の中だ。


「鈴美」


 僕は鈴美を後ろに下がらせる。

 怖い。ここで仕掛けてくるとは。


「あなたたちの、狙いは、僕ですよね」

「そうだな。アタシたちの狙いは陽太だ」

「なら、鈴美は逃がしてください」

「無理。助けを呼ばれたら困るから」


 今日はテストシーズン。だが、前の学校ではテストシーズンではなかった。

 ずれが生じているのだ。

 つまりだ、芹原が来れなくても、僕たちに嫌がらせが出来る。


 僕たちはテストを受けなければテストの点数がゼロになる。

 常に赤点ぎりぎりということも無いが、それでも点数を取っときたい所。

 勿論追試を受けることもできる。だけど、それで僕たちが本試験と同じ点数が取れるとは限らない。

 そんな中、赤点を取ってしまったら。それどころか、学校につけなければ点数はゼロ点だ。


 そうなれば僕たちの進級も怪しくなる。

 ここで、テストを受けられないという事は避けなければならない。


 たとえ僕だけが攫われたとしても、鈴美は守らなければならない。

 僕は、手を広げる。鈴美を守るようにして。


「あくまでも、自分一人が犠牲になるつもりか」


 僕は頷く。鈴美は巻き込みたくない。

 それに、鈴美が逃げたら助けを呼んでくれる。


「だめだ」


 相原が言う。

 その瞬間、鈴美がダッシュで逃げていく。

 

 そう、それでいい。鈴美さえ逃げ切れれば僕たちの勝利だ。


「あっ、くそ」


 相原が追おうとする。だけど、


「ここは僕が通さない」


 怖すぎる。やっぱり女性は苦手だ。



 ――結論から言うと、僕は時間稼ぎも出来なかった。

 僕の横を通り去る相原を止められなかったのだ。

 肝心な時に足も動かない。僕は最低だ。



 次に目が覚めた時、僕は縛られていた。ここは、相原の家だろう。


「アタシに親はいないの」


 早速相原にそう言われた。

 僕は唾をのむ。


「だからさ、アタシはここで何をしてもいいの。だから、よろしく」


 そう言って僕の目の前に座る。


「後はえなっちが来るまで待つのみね」


 鈴美は隣でまた眠っている。

 あの平和だなあ、という言葉が完全にフラグになってしまった。

 だけど、これは完全に犯罪だ。誘拐罪が完全に成立している、と思う。

 このまま、待っていれば警察が来てくれるんじゃないかと、ふと思う。



 ★★★★★


「先生、御堂さんと笹原君から病気で休むという連絡が入りました」


 そう、鈴美が言う。


「なんか、伝えてくれって言われたので」


 おう、指をもじもじとさせる芹原。


 それを、じっと山下は見ていた。


 明らかにおかしい。

 そう感じた。そもそもなぜ、芹原が二人の状態を確保してるのか。

 もう既に、芹原との過去は知っている。

 だからこそ、疑問に思うのだ。


 ★★★★★



 僕たちはずっと捕らえられたまま時間だけが経過した。

 助けの種も来ることも無く、ただひたすらに放置され続けた。これは芹原が帰ってくるまで続くのだろうか。

 しかし、いくらなんでも今回は雑だ。

 警察に捕まるのも了承済みだという事なのだろうか。


 一応相原たちは未成年。捕まっても、罪は減罪される。

 だから、良いと思っているのか。


「うぅ」


 鈴美がそう、弱々しい声を出す。目が覚めたようだ。


「おはよう」


 僕はそう、声をかける。

 鈴美もまた両手を後ろ手で縛られている。


「誘拐、されちゃったんだね」

「ごめん、僕のせいで」


 僕が本当の意味でトラウマに立ち向かえてなかったせいで。


「いいよ、陽太君は悪くないから、悪いのは」

「ん、アタシを見てるのか?」


 相原さんは僕たちの元へとくる。


「まだ虐めてないのは、まだいたぶってないのは、お楽しみがまだだから。そこを忘れないで欲しいな」


 そして相原は僕をじっと睨む。


 だが、そんな中、芹原が飛び込んできた。


「早かったじゃない」


 相原が言うと、芹原は息を肩で斬らしながら、「大変」と言った。


「山下さんが、告げ口したみたい。だからもしかしたらこのこともばれてるかも」

「山下さん……」


 鈴美は歓喜の声を漏らす。


「だから、来る前に陽君を虐めたいなと思って」


 そして彼女は僕の元に――来る前に、鈴美の頬をはたいた。


「痛……」

「陽君ごめんね。あたし気づいちゃったの。陽君の心をおるなら、御堂さんをいたぶるべきって」


 確かに最適解だ。

 僕に対しての一番の嫌がらせだ。

 だからこそ、イラつく。

 弱い僕に、そしてこの芹原という悪意の塊に。


「僕に何を求めてるんですか?」

「勿論、あたしと一緒に来てもらう事」


 そこは何も変わらないのか。


「御堂さんを虐めてる間に、あたしの昔話でも聞いてくれる?」


 芹原の昔話?

 その間にも、芹原は鈴美の首を絞めている。



「やっやめっ」

「あたしはね、子どものころ親から愛されてなかった。所謂放置子だったの。食事は最低限貰えるけど後は自分で何とかしろって、ひどくない?」


 同情を煽っているのか?


「だから、あたしは好きなように生きることを決めたの。せっかく親があたしのことを放置してくれてるんだから、何をしてもあたしは誰にも叱られないし、ただの可愛そうな子供として見られる」

「アタシも似たようなもんだ。家が貧乏だから、こうやって鬱憤を晴らしてるんだ」


 全く同情できない。

 いや、同情はするべきなのかもしれない。だけど、それに値する価値があるとは思えない。

 可哀そうな過去と、今の悪行とは何も関係が無い。

 かわいそうですねーでも今のあなたはクズですよ。

 こういう話だ。

 例えば、愛に飢えた人が殺人を犯したとして、その人は擁護されないだろう。



「僕は、君たちを許せない」


 ああ、僕はこれは言えるんだな。鈴美を守れなかったくせに。

 鈴美は今も苦しんでるのに。


「あたしね、陽君とは仲良くしたいと思ってるの」


 仲良くしたいなんて、よく言えるものだ。


「あたしね、あたしね、もっと陽君の苦しむ顔を見たいの」


 何を言っているんだ。


「ね、陽君」

「ふざけないで、くださいよ」

「あたしがさ、もし御堂さんを殺したら絶望してくれるのかな」

「くるし……」


 鈴美が弱々しく言う。かなり弱っている。


「貴方は狂っています」

「狂ってるなんて言わないで」


 急に声を荒げる。


「陽君にはそう言われたくない」

「はは」


 僕の口から、掠れた笑いがこぼれるのを感じた。

 狂ってる、狂ってる、狂ってる。

 この人は飛んだメンヘラだったんだ。


「はははははは」


 僕は思い切り自分の口から笑いがこぼれるのを感じた。


「ついに狂ったな、えなっち」

「ええ、嬉しいわ」


 僕は狂ってなどいない。

 ただ絶望の中にいるだけだ、


「陽太君……」

「じゃあ逃げよう」

「そうだな」


 そして、僕は担がれる。だが、そこにやってきたのは、山下さんだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ