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壮大な嘘告白をされ人間不信になった僕、後ろの席の女の子が付きまとってくるようになる  作者: 有原優


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第24話 恩人

 そして昼休み。

 僕は、鈴美さんについて屋上へと向かった。

 鈴美さんは色々と僕に秘密を開示してくれていた。


 だけど、そこから考えても、なぜ僕の秘密を最初から知っていたのか、未だにわかっていないのだ。


「来たね」


 そう言う鈴美さんは、ブレザーをコートのようにしている。

 今はブレザーの季節ではない。

 まだ夏服の季節ではないが、ブレザーを着なければならないほど寒くはない。

 現にほとんどの女子はブレザーをすでに脱いでいる。


 そんな疑問が巡っていると、彼女はブレザーを一気に脱ぎ捨て、そして――


「じゃあ、やろうか」


 そんな中二病っぽいことを言った。

 今は漫画で言えばコメディじゃなくてシリアスシーンのはずだ。

 どういう事なのだろうか。


 我は闇の眷属とか言うのだろうか。


「コホン」


 わざとらしい咳ばらいを一つ。


「じゃあ、話すね」


 今の間はなんだ。さっきの話は何だったんだ。

 ただ、鈴美さんの顔は赤くなっている。滑ったのを恥ずかしく思っているのだろう。

 反応するべきだったのか?

 いや、あそこから反応するのは無理だろう。


 いや、雑念は消そう。

 今は鈴美さんの話を聞く番。

 シリアスモードに戻らなくては。





「私はね、ある人からお願いされて、陽太君の元に来たの」


 ある人?


「その人は私の生きる意味を見出してくれたの。死にたいと思っていた私を助けてくれたの」


 それは前にも言っていた。遊園地の時だっただろうか。


「私はその人のおかげですくわれた。だから私も他の人のために、私みたいに消えたいと思ってる人たちのために役に立ちたいと思ってたの」


 立派な志だ。だけど、今の話の内容。

 その恩人の可能性に当たるのは二人しか見えない。いや、もはや一人だけだ。

 僕の事を常に気にかけていた人物。それは――


「その人の名前は、笹原美咲」


 僕の姉ちゃんだ。美咲姉ちゃんだ。


「美咲さんに頼まれて、陽太君を支えようとしてたの」


 そう言えば、僕は転校先を一人で決めた。だけど、アドバイスをしてくれた人がいた。

 この学校に転校するように僕を誘導してたのか。


「やっぱり姉ちゃんだったのか」

「知ってたの?」

「ううん」僕は首を振る。


「僕は知らなかったよ。でも、今日ここで鈴美さんが言ってることを聞いてそうじゃないかなって」


 そう、そうなのだ。


 僕は今の今まで鈴美さんが姉ちゃんの送った刺客?いや、この場合は助っ人?だという事を全く知らずに日々を過ごしていた。


「君は僕をずっと守り続けてくれていたんだね」

「うん」

「手段は最悪に近いけど」


 例えば、ストーカーしたりとか。

 結果的に僕と鈴美さんは仲良くなった。

 しかし、あのデリケートのかけらもない行動。


 あれで僕が発狂して、鈴美さんを芹原レベルで拒絶したらどうするつもりだったのか。


 実際に僕は一度発狂している。ハンバーガー店でだ。


「でもありがとう」


 感謝の気持ちはしっかりと持っている。

 結果良ければすべてよし。単純な話だが、僕はそう飲み込める。

 勿論あの日々は最初は地獄ではあったのだけど。


「鈴美さん」


 僕は静かに告げる。


「僕は、最初は鈴美さんの事が確かに嫌いだった。あんな遠慮なしに話しかけていく人。一番嫌いな人種だと思っていた。でも、今は好きだ」

「え?」


 鈴美さんは顔を赤らめる。


「恋愛的な意味はなく、友達として」


 勘違いされては困る。


「そっか、そう言ってくれて私も嬉しい。美咲さんとの約束も果たせるしね」

「それだけ、姉ちゃんの存在は鈴美さんにとって大事なものなのか?」

「うん」


 鈴美さんは静かにうなずく。


「私にとって美咲さんは命の恩人だから。あの人がいなかったら死んでてもおかしくなかったし」

「死んでてもおかしくなかった?」

「うん。美咲さんから見たらあの時の私は本当に死にそうな顔をしてたみたい。だから、店に呼ばれたの」

「店に」


 その後、暫く事の顛末を教えてくれた。


 どうやら彼女は姉ちゃんによって店に招かれた。

 本当は未成年者に入って欲しくないような店だ。

 お酒がメインの店、そこは未成年に対してはあまりサービスが整っていない。

 所謂細客になってしまうらしい。

 だから、周りの店員さんには止められた。


 しかし、それを美咲さんはごり押しで入れたというらしい。


 そして、コップに烏龍茶を入れ、話を聞いてあげた。


 そこで鈴美さんは姉ちゃんの今までの出来事をとにかく話し、辛かったという事を述べた。

 そして、姉ちゃんはしっかりと話を聞き、アドバイスをしたそうだ。


 そして、今鈴美さんは精神を立て直したそうだ。


「だから、私感謝してるの」

「姉ちゃんが鈴美さんを助けたのは弟として誇りだと思っている」


 姉ちゃんが、偽物の愛情を振り向いて金を得る人間なだけではなく、ちゃんと人の助けを無償でする人間だという事だ。


「うん、感謝してるよ」

「僕は鈴美さんに感謝をしている。でも、姉ちゃんにも感謝をするべきなんだろうね」


 姉ちゃんの善行が回り巡って僕のもとまで来たんだから。


「うん。私美咲さんに頼まれた時、絶対に遂行しようと決意したんだもん」


 そう言って鈴美さんは笑顔を見せた。

 それだけ、鈴美さんにとって姉ちゃんが大事な人だという事。

 あの遊園地の日、姉ちゃんの悪口的なことを鈴美さんに言ってしまったことが申し訳なく思う。


 そして、場が静まり返る。





「あ、そうだ!!」


 静寂を打ち破るように、鈴美さんは手をポンっと叩く。


「この機会に呼び捨てにしてくれない?」


 急な転回。

 シリアスモードからコメディモードに変えたのか?


「なんで?」

「なんとなく」


 なんとなく。

 でも、もうさんは外してもいい気分だ。


「じゃあ、スズミンって呼んで」

「やだ」


 僕は一言で断る。愛称はあまりいいイメージがない。勿論原因はえななんだ。

 それに、鈴美でスズミンは違うし。

 というか、シリアスな雰囲気はもう消え去った。

 わざと、空気を壊したんだろうな。


「今度は鈴美って言ってしれっと鈴美さんに戻すのはだめだからね」


 確かにこの前は鈴美って呼んだのはいいけれど、すぐに照れくさくて鈴美さんに戻してた。


「分かったよ、鈴美」

「うん、それでよろしい!!」


 そして僕たちは互いにハイタッチをした。

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