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壮大な嘘告白をされ人間不信になった僕、後ろの席の女の子が付きまとってくるようになる  作者: 有原優


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第23話 秘密

「陽太」


 家に帰ると姉ちゃんがソファに座って僕を待っていた。


「な、なに?」


 僕は恐る恐る聞く。


「芹原恵那が家に来たの」


 その言葉に僕は唾を飲む。

 遂にあいつは家まで来たのか。


「彼女は家に陽太がいないと分かり帰っていったけど、また来るかもしれないの」

「なん、で?」


 そうだった。カップル時代に家をすでに知られてるんだった。

 そもそも彼女は僕の家に彼女として来たことがあるのだ。


 だけど、流石に家に押しかけてくるのはマナー違反だ。


 姉ちゃんが事情を知ってたからいいものの、そうでなければ最悪の事態になってたかもしれない。

 内堀を埋める前に外堀を埋める。


 卑怯だ。


「落ち込むことはないよ。私が追い払うから」

「……うん」


 追い払うとは言うものの、姉ちゃんにそんな力があるのだろうか。

 僕は明らかに、芹原の事を恐れている。必要以上にだ。


 芹原に来られてしまったら、僕はどうしようもないのかもしれない。

 それに、今日はたまたま家にいるだけで、姉ちゃんは普段から忙しい。

 姉ちゃんのいない時間に来られてたらどうしようもないのだ。


「明るいね」

「え?」


 まさか明るいなんて言われるとは思っていなかった。

 しかし、カラオケでだいぶメンタルが回復したような気がする。


「思ったよりも落ち込んでないと思って」

「うん。友達が支えてくれて」


 鈴美さんを友達とカウントしてもいいだろう。


「上手くやってるようね」

「え?」


 上手くやっている。何の事だろう。


「なんでもないよ!!」


 そう言って姉ちゃんは、料理を作りに行った。


 



 翌日。僕は家を出て、歩いていく。

 その途中で鈴美さんと合流し、歩いていく。


 芹原の気配を確認しながら歩いていくも、幸い追尾してるなんてことは無かった。

 とりあえず、現時点では今日の僕の安全は保たれている。


「ねえ、鈴美さん」

「なに? 陽太君」


 優しく微笑んでくれる。


「無いと思うけど、今日もし芹原が僕に、変なことをして来たらどうしよう、ってずっと思ってしまうんだ」


 本当は今日学校に行くのすら怖かった。

 鈴美さんがいなかったら、きっと僕は学校を休んでいただろう。


 僕の精神的支柱だ。

 鈴美さんがいるからこそ、僕の気持ちは和らいでくれる。


「大丈夫、私が守るから」


 そう言うと思っていた。鈴美さんは優しい。

 しかし、ずっと考えていた事がある。


「鈴美さんってなんでそんなに僕に優しくしてくれるの?」


 僕はそう言った。


 彼女にも謎が多すぎる。

 それも、根本にかかわってくるような謎だ。


「いじめられっ子同盟だよ」

「そんなこと言われても」


 信用は出来ない。


「僕は、鈴美さんの事を大事に思っているんだ。だからこそ、知らなきゃいけないと思うんだ」

「それは前向きな理由?」

「ああ」


 僕は再び頷く。


「そうだよね、私がミステリアスすぎても困るかあ。じゃあ、話さなきゃね」

「ああ」

「でも、今はだめ、屋上でね」

「またか」


 最近大事な話し合いは屋上で行われている感じがある。

 だけど、当然だ。周りの目がある場所では話せないだろう。政治家の人達がファミレスで会食をしないのと同じだ。

 秘密の話し合いは周りに漏れない場所でしなければならないのだ。


「いっそ、屋上を私達いじめられっ子同盟の本拠地にしちゃおっか」

「だから、その同盟は何?」

「ふふふ」


 そう言って笑う鈴美さん。どうやら楽しい様だ。



 学校に着くと、早速山下さんが来た。


「話は、御堂さんから聞いたわ」


 聞いた。


 芹原と僕の関係の事か。

 芹原はまだ来ていない。だから話を聞かれることはない。


「大変だったわね」

「うん」

「同情するわ。私に力になれることがあったら言ってちょうだい」

「分かった」


 そして、山下さんとの会話が終了した。

 だが、今日感じていることがある。

 僕は明らかに浮いている。


 昨日の出来事のせいだろう。

 その出来事のせいで、僕は少し異質な形になっているのだ。


 昨日は芹原だけに気を取られてしまっていたから、気づかなかっただけだ。

 だけど、今日は違う。


 今日はまだ芹原が来ていないのだ。


 そうこうしているうちに早速、一人の男子がこちらに向かってくる。名は伊達優希。転校2日目に、鈴美さんの事を特級呪物と称していた人だ。


「あの時、どうしたの?」


 そう訊かれた。


「昨日、発狂してたから」


 訊かれるだろうな。

 だけど、僕に何か言えるだろうか。

 昨日の発狂は芹原のせいだ!! と言い切りたい。


 だけど、それは卑怯者のそれ、責任転嫁だ。

 確かに芹原は悪だ。



 しかし、昨日僕が発狂してしまった事は僕の選択だ。

 それを押し付けるのは明らかに違うのだ。


「ごめんなさい」


 僕は最初に謝った。


「怖がらせてしまってごめん」


 平謝りだ。

 発狂、そして人を怖がらせてしあったのは明らかに僕のせいだ。

 悪い、という気持ちは十分にある。


「謝らせるつもりはなかったんだけど」

「いやでも、悪いのは僕だから」


 そう言った僕に対し、彼は頭をポリポリとかく。


「聞きたいのはそうじゃなくて、芹原さんと何かあったのかなって」

「それは……」


 言いにくい事だ。

 そもそも僕は色眼鏡で見られたくない。

 色眼鏡。つまり、いじめられっ子だという見られ方だ。



 そしてさらに問題がある。

 いじめに耐えかねて転校したことまで話さなければだめなのだ。


「僕は……」

「やっほー、陽君」


 背後からそう、話しかけられた。


 悪魔が来た。芹原だ。


 昨日の今日で、気軽に挨拶してくるのかよ。

 こいつもこいつで強心臓過ぎる。


「ちょっと失礼」


 鈴美さんが、芹原さんの手を掴む。


「ごめんね、二人の会話に専念させてあげたいから」


 鈴美さんの声は少し震えている。

 怖いと思いながら僕のために言ってくれているのだ。



 どうせ、山下さんには既に知られている。おいおい、ばれる話だ。別に僕が言っちゃってもいいじゃないか。

 僕は唾を飲み込み、そして声を出す。

 


「僕は芹原さんに対してトラウマがあるんだ。元カノである芹原さんに」


 僕はそう言った。

 元カノ元カレ、今となっては黒歴史だが。


「メンヘラとかヤンデレとかそう言う感じの?」


 確かに、文脈とかから考えたら、そうなるよな。

 そう言った漫画も最近流行ってるわけで。


 タイトルにするならば、『メンヘラに心を病んだ俺は転校先のクラスメイトに癒される』みたいな感じか?

 って、何を考えてるんだ僕。

 話が脱線しすぎだ。


「いや、少し裏切られたんだ」

「……」


 その言葉に、彼は押し黙った。


「なるほどな。そう言えば、御堂さんとは?」

「彼女は特級呪物じゃないよ。その秘密を知ってそれでもなお一緒にいるんだ」

「強いな」

「強い?」

「転校時よりも、だいぶ強くなったと思うよ。周りの目に左右されずに強い自我を持ってるんだから」

「ありがとう」


 そして彼は戻って行った。


 理解してもらえるんだ、と思った。

 嘘付けだとか、もっとなじられるかと思った。

 現に彼が特級呪物だと言っていた鈴美さんと一緒にいるという事もあるのだから。


「要件は終わった?」


 そう、芹原が言う。


「うん」


 そして僕は彼女の隣の席にいる。

 まだ、この人に対する恐怖心や、他の様々な気持ちはまだある。

 だけど、今は大分落ち着いている。


 そう言えば、思ったことがある。昨日から女性に対して怖いという気持ちがあまり芽生えていない。

 その対象が完全に芹原に移ったのだろうか。


「昨日の話だけどさ」


 僕は芹原の方を向く。


「本当にあたしは悪いと思ってるの。彼女として見てくれなくてもいいから、また話したいの」


 やっぱりだ。


「本当に謝る気があるなら、もう話しかけないで」


 そんな彼女に対して僕は、強くそう言い放った。


 悪いと思うのなら、二度と僕の目の前に現れないで欲しい。それが僕の率直な気持ちなのだ。

 二度と現れなければ、僕の精神は大分落ち着いてくるだろう。


「分かった」そう言って悲しそうな顔をする。


 悲しい顔、そんなもので僕の同情が貰えるとでも思っているのだろうか。


 貰えるわけがない。


 僕の怒りはそれだけ大きい物なのだから。

 芹原は可哀そうだと思う。人の気持ちを図れない馬鹿で。


 ああ、やっぱり僕の性格はやっぱりひねくりかえってるな。

 そう思いまた僕は苦笑した。

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