第2話 姉ちゃん
「はあ」
僕は電車内で軽くため息を漏らす。
もしかして、強く言い過ぎたのではないだろうか。
先ほど僕は、強く言えば、素直に帰ってくれると思ったからこそ、言った。
しかし、逆にあれが原因で、
「ふーん、私の思い通りにならないのね。許せないわ」
そんな感じに逆上する恐れもある。
そうなったら恐ろしい。
僕は即座に死刑宣告されるかもしれない。
またいじめの日々を過ごすかもしれない。
ああ、明日が怖い。
もう転校なんてしたくない。
一度転校するだけでも大変なのだ。
そう何回も転校できる体力なんてあるわけがない。
はあ……
せっかく勉強もして、髪形もおしゃれにしたというのに。
そして、僕は家に戻った。
「おかえりー、陽太」
そう、姉の美咲が出迎えてくれた。
「今日どうだった?」
「終わったかもしれない」
僕の言葉に不思議に思ったのか、姉ちゃんが僕の方へと行く。
「もしかして、今日は嫌な事でもあった?」
「女子に絡まれた。僕は終わりかもしれない」
どう考えても、彼女は不気味だ。ストーカーとなってもおかしくない。
そうなったら、その後の未来なんて簡単に見える。
このまま僕は終わってしまうかもしれない。
「はあ、落ち着いて。陽太は私のことが怖い?」
「実は少し怖い」
「もう」
そう言って姉ちゃんは向こうに行く。
姉ちゃんも完全に無害なわけでは無い。
受験シーズンの時は気性が荒くなっていて、近寄りがたかった。
それに姉ちゃんに関しては、陽キャだ。
恐れるのは姉弟と言えど、例外ではない。
姉ちゃんはお母さんに似ているのだから。
「まあでもあんたの受けた傷から考えたらそれもうなずけるわね」
「うん」
好きな女子からの裏切り。
それは常に僕に傷を負わせてくる。
「僕は……。寝転んでくる」
「そう、ご飯食べたら呼ぶからね」
「うん、よろしく」
そして僕はベッドに寝転んだ。
うちの家は父と姉との三人暮らしだ。
僕のお母さんは僕が若い時に、不倫をして、父さんと別れることとなった。
だから正確には姉ちゃんとは血が半分しかつながっていない。
僕は元々不倫相手との子供なのだから。
だからこそ、父さんとは血がつながっていないのだ。
お母さんは養育権を主張したが、色々と裁判で争ってきた中でお父さんが勝ち取った。
そりゃそうだ。浮気しといて養育権を手にすることなどできないだろう。
はは、そう考えたら僕はお父さんと同じ道を歩んでいるな。
血はつながってないけど、流石は親子だ。
お母さんは未だに、会ったことがない。自我が目覚めてからは。
ただ、会いたくもない。そんなクズ親なんて。
色々と考え事をしていたらいつの間にか六時になっていた。メールで姉から『ご飯だよ』と来ている。
あの事件以来、姉ちゃんの事は苦手になっている。だから、姉ちゃんは僕と食事の時間をずらしてくれている。
ありがたい事だ。
基本僕はお父さんと一緒にご飯を食べている。
勿論お父さんの帰りが遅いときは一人で食べるのだが。
「さてと」
誰もいない食卓を前にして手を合わせる。
家は落ち着くなと思う。
後は高望みだが、お父さんが早く帰ってきてくれたらいいのだが。だが、それは不可能だ。
養育費はほとんどお母さんからは振り込まれないのだから、お父さんは夜遅くまで働かなければならないのだ。
「明日もあいつは僕に関わってくるのかな?」
そう思うと憂鬱だ。僕に関わってきてほしくない。
僕を放っておいて欲しい。
あのストーカー女は。
★★★★★
僕は夢を見た。
芹原さんに告白された時の夢だ。
幸せだった。
あの時までは。
今日、なぜ見ることになったのかは分からない。
あのストーカー女が今日うざかったからなのだろうか。
あの時はなぜ信じてしまったんだろうと、今も思う。
そんなうまい話なんて、所詮はラノベとかにしかないというのに。
本当に、三ヶ月も付き合って、そこで嘘だとばらして虐めるなんて本当に酷いよ。
そう思ったら久しぶりに涙が出てしまった。
今はまだ3時。また眠りにつくのには時間がかかりそうだった。




