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壮大な嘘告白をされ人間不信になった僕、後ろの席の女の子が付きまとってくるようになる  作者: 有原優


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第19話 屋上会議

 僕は休み時間までの時間を、心の整理に使う事にしていた。

 スマホは一応持ってきてはいるが、スマホは封印した。

 気持ちの整理のメモにのみ使っていた。

 おかげでだいぶ気持ちは整理がついた。



 そして、休み時間になった今、僕は屋上へと向かう。

 他の生徒とすれ違う際、怖いなと思いながら顔を伏せながら歩いた。

 全員が僕に対して、やばい人だ、頭おかしい人だ、みたいな形で見てきている気がしたのだ。



「お待たせ」


 待つこと三分。鈴美さんが来た。


 その顔を見ると少しだけ安心できる。

 僕は一人じゃないんだなと、思えて。


「ごめん。わざわざ貴重な休み時間を使わせてしまって」


 僕は頭を下げた。

 それは本当に悪かったなと思う。


 鈴美さん側はわざわざこんなのに付き合う必要はなかったのだ。

 だけど、来てくれた。


「でも、来てくれてありがとう」


 そして感謝の言葉を言った。


「それで……どうしたの?」


 訊きづらそうに鈴美さんが言う。



 僕は軽く息を吸った。いうのには勇気がいる。だけど、僕は何度もトイレの中で言う練習をしていた。何度も言葉を整理していた。

 今なら言える。


 そう思いながら僕は口を開く。


「実は過去に僕がもめた相手。それが先ほどの芹原なんだ」


 そう、僕は彼女に告げた、

 鈴美さんは、一瞬驚きの表情を示した後、


「そう……なんだ」と、自身の右手を左手でさすりながら言った。



「ごめんね。私、陽太君の気持ちを考えないで勝手な事を」

「いいんだよ。むしろこっちこそ、僕の勝手な事情に巻き込んでしまって申し訳ないと思ってるから」

「……それで、その芹原さんが来たから。教室から逃げたってこと?」


 その言葉に対して、僕は無言で首を縦に振った。


「そう……」

「ごめん」

「謝る必要ないよ。私だって、竹山さんとかが来たら同じことをすると思うし」


 竹山さん。鈴美さんをいじめてた人だろうか。


「とりあえず私はどうしたらいいの? 陽太君に対して何ができる?」


 確かに。僕は彼女に何を求めているのだろうか。

 それは僕にも分からない。

 でも、


「僕は今の状況でいいとは思わない。だから、僕が芹原と戦う手助けをしてくれないか?」


 これは明らかに、鈴美さんにとって得のない事であり、あまりにも自分勝手なお願いだ。


 僕と同じく、過去にいじめを受けた鈴美さんだからこそ、僕のこのお願いを聞くとは思えない。

 リスクが高すぎるのだ。

 いくらそれが友達のため、であったとしても。


 もし、この学校でも芹原が、自身のグループを形成し、それを強化したら。

 それこそクラスの占有権を持っていったとしたら。


 カースト一位になれば、それこそまた鈴美さんが受けたであろう悲劇が再び再発する可能性が大いにある。


 そのリスクを負うとは思わないのだ。

 だから交換条件を持ち出さないと――


「いいよ!」


 屈託ない笑顔で鈴美さんが言った。


「は? なんで?」

 いいよなんて、いきなり言われるとは思っていなかった。


「君は、僕の味方をしたらそれこそ芹原さんと対峙することになる。そしたら、また鈴美さんが受けたあの悲劇が再来することになるんだよ」


 僕はそう叫んだ。

 確かに、これは僕がお願いしたことだ。だけど、あくまでそのリスクを説明しなければちゃんと相互ともがちゃんと話し合いにはならない。

 そう、話し合いには必ず必要な事なのだ。


「でも、これは陽太君が頼んだことだもん。私は断らないよ」

「ああ、畜生。いい奴人すぎるだろ」


 なんでこんなリスクに乗っかってくれるんだよ。


「私も、陽太君をいじめた人が許せないもの。当然手伝うよ!!」

「うん、ありがとう」


「これで、借り一だ」

「そうだね。何で返してもらおっか」

「そうだね。望むものなら何でもいいよ」

「まあでも、私もう木村さん関連の事件で手伝ってもらってるからなあ」

「あれは、手伝ったというか」


 手伝ったとは言わないと思う。


「手伝ったよ。力になってくれたし」


 その笑顔にはかなわない。


「分かりましたよ。僕も頑張りました」

「でしょ。あ、時間だ、戻らないと。……陽太君、どうする?」

「僕も戻ります。このまま全欠席という訳にはいきませんし」


 早退する、という手もある。だけど、それは逃げの手段だと思う。

 ここは、立ち向かっていかないと。


 そして僕たちは急いで教室に戻る。


「あ、陽くん戻ってきた〜!!」


 そう、芹原が言う。吐き気がする。

 しかも何の因果か、隣の席。


 僕も、芹原も転校生だから当然の事だが。


「ねえ、教科書忘れたんだけど、貸して?」


 何を馬鹿なことを言っているんだ。


 教科書の角で殴打したい。

 まあそんなことしたら僕が罰を受ける羽目になるが。


「私が貸すよ」


 救世主、鈴美さんがそう行ってくれた。ありがたい。

 感謝だ。

 こいつと話していたら、胃がきりきりと痛む。

 それに、なんだこの馴れ馴れしさは。


「えーあたしは陽くんから借りたいんだけど」


 本当に何を言っているんだ。


「僕は……貸さないから。……芹原さん」


 僕にはそう口にするのが精いっぱいだった。


「昔みたいにえななんって呼んでくれていいんだよ?」

「ふざけないでくださいよ」


 僕は思わずそう言った。

 勿論周りに聞こえないくらいの声で。まあ、さっきのでだいぶ僕への印象は悪くなったと思うが。


「でも、陽くんに見せてもらうのが形的に一番いいからさ」


 確かに鈴美さんが芹原さんに教科書を貸せば今度は鈴美さんが教科書を見れなくなる。


「ああ、僕はどうしたら良いんだよ」


 今も僕の心の中は不安とストレスでいっぱいだ。

 今にでも大声で叫んで、再び外に出ていきたいくらいだ。

 だけど、それは本末転倒だ。


 とりあえず僕は、


「どうぞ」


 彼女に教科書を渡した。

 もうこれ以上話したくない。どうせ、こうなる運命なのは目に見えているのだから。


「ねえ、笹原君」


 そこに山下さんが来た。


「さっきはどうしたの?」


 そうだ、当たり前の話だが、教室には山下さんもいた。

 説明をしなければならない。しかし、今ここでするのはリスクがある。それに、一時間目の休み時間がもう終わる。


「ごめん、それは後で」


 僕はそう言って手を合わせて謝った。


「あとで教えるから」




「ねえ、こっちも見てよ」


 芹原さんが僕を真っ直ぐ見つめている。

 まったく意味が分からない。また、嘘告からのいじめをするつもりなのだろうか。



 だけど、これで、僕は彼女としばらくは話さないで済む。ただ、僕も教科書を見なくてはならない以上、共有しなければならないという点が残念なところだけど。


「ここってどういうこと?」

「それは二つの式の共通の文字を見つけてやればいいんだよ」

「ノート見せて」

「分かりました、これで前の範囲が分かるはずです」

「もう、陽君ってば他人行儀すぎ」


 ああ、吐き気がする。芹原は元々僕よりも成績が良かったはずだ。

 僕に聞く必要がない。僕が猛勉強していたとしても、元々の字頭がいい。こんなところでつまずくわけがない。


 じっと、時計を見る。まだ授業開始から十分しか経っていない。

 まだ授業終了まで四十分も残っている。

 ふざけるな。


 授業が終わらない限り、芹原と話し合うことは出来ない。

 気持ちをぶつけることはできない。


 一方的に仲良しアピールを受けることしか出来ない。

 お前は僕が一番嫌いな人間なはずなのに。


 そして、僕はひたすら心の中の憤怒の気持ちに耐え続けた。

 僕にしてはよく耐えていると思う。


 最初に鈴美さんに突撃された時、それだけで吐きそうになっていたというのに。

 確かに吐きそうだ。だけど、まだ耐えれる。

 しかし、この状態のまま放課後まで耐えられるわけではない。



 だからこそ、授業後話し合いを設けようと思っている。そこで、決着をつけるのだ。

 そして僕の因縁に決着をつけたい。

 怖いけど、やるしかない。


 そして地獄の時間が終わった。


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