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壮大な嘘告白をされ人間不信になった僕、後ろの席の女の子が付きまとってくるようになる  作者: 有原優


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第18話 転校生

この話から現代軸に戻ります。


 そしてそれからまた二週間ほどたった。


 鈴美さんとはカップルにはなっていないものの、結構仲は良くなってきたと言えるだろう。

 山下さんとも、少し話すようになった。


 山下さんが僕たちに歩み寄ってくれたのだ。


 あれから木村さんは学校に行く決心がついたらしい。

 いじめの元凶さん、とは別のクラスだし、行かない理由ももう見つからなかったらしい。


 そのことに関して僕に感謝してくれた。


 だけど、山下さんとは前よりは仲良くはなれたたが、友達というのは違う形になってしまっている。所謂友達予備軍、みたいな形だ。

 向こうからはある程度の努力をしてくれている、というのは分かっている。

 だけど、僕にはやはり難しかった。

 なにしろ、トラウマが尾を引いてしまっているから。



 僕は正直まだ立ち直れているとはお世辞にも言えないのだ。

 だいぶ頑張ったと思う。山下さんの案内で木村さんの家にも行ったし、ほかにもトラウマに立ち向かうべく。様々な事をしてきたのだ。


 しかし、まだ女子自体への苦手意識は残っていた。



 思えば、なぜ鈴美さんと仲良くなれたかと言えば、リスカ痕を見せてくれたからだ。

 山下さんと、距離を詰められたのは、山下さんの友達もまたいじめの教養というある意味でのいじめの被害者だったからというのは合った。

 だが、まだ僕には女子は裏切る物という印象がついてしまっている。


 そしてそれは、漫画とかみたいにすぐには消えてくれないらしい。まあ、とにかくだ。



 僕は今も姉ちゃんが苦手だし、クラスの女子も基本苦手なままだ。

 山下さん以外の女子とはまだ喋ったことすらない。それは男子含めてもほとんどだ。



 とまあ、僕の今の現状をこう言い連ねてきたが、これには訳がある。

 この二週間は平穏そのものだった。

 平和な日々だった。


 だが、ある日事件が起きた。起きてしまった。

 鈴美さんとけんかした?

 山下さんが裏切った?

 違う。


 僕は今、地獄を目の前にしている。

 それも、僕の高校生活を根本から覆そうとしている悪魔だ。


「こんにちは、転校してきた芹原恵奈です。よろしくお願いします」


 芹原が転校してきたのだ。恐らく、僕を追いかけて。

 勿論、僕を虐めていたえななんその物だ。うかつだった。

 転校してまで追いかけて来るとは全く思っていなかった。


 ああ、最悪だ。どうしてくれる。


「芹原さん、美人だな」


 あるクラスメイトが言う。ふざけんなよ、性格ブスだぞ。


「仲良くしよーね」


 ある、クラスメイトの女子が言う。

 仲良くしない方がいいぞ。


「来たな、このクラスのラストピースが」


 ラストピースなわけがない。

 そもそもなんで受け入れられてんだよ。くそが。

 くそくそくそくそくそくそくそくそ。


 僕の学校生活をまた、ぐちゃぐちゃにでもしたいのかよ。

 イライラが止まらない。


「どうしてだよ!!」


 僕は勢いよく立ち上がった。

 こんなことあってはならない。あってはならないのだ。

 あの忌々しい記憶がよみがえる。


『あたしと付き合えたと本当に思ってたの? このブスが』

『まさか、本当にあたしの彼氏に成れたとでも思ったの? ラノベの読み過ぎなのよ。少しは自重してよ、本当に大変だったし』

『面白かったわ。あたしと本当に付き合えてると思っていたその能天気さが』


 芹原から言われた様々な言葉が脳で反響していく。


 あの地獄の日々を思い出す。


「陽太君?」


 斜め後ろに座る鈴美さんが僕にそう言う。

 不思議に思っているらしい。


 それどころじゃない。クラスメイト全員が不思議に思っているような目だ。

 僕を見ないでくれ。あの悪魔を弾劾してくれ。皆で、あいつを追い出してくれ。


 本当にふざけんな。なんでここに居るんだよ。

 ふざけんなふざけんなふざけんなふざけんな。くそがくそがくそがくそが。

 明らかに僕の口が悪くなっているのを心の中で感じる。

 憎悪の念がすごい。

 でも、止められない。


 芹原、

 ここに来て良いと誰が言ったんだよ。

 転校するなら、なぜ僕が通っている高校に来たんだ。


 おかしいだろ。おかしいだろ。


「なんでここに居るんだよ」


 そう言って僕は、芹原の元へと向かう。


「どうしたんですか? 笹原君」


 そう、先生が言う。

 だが、今の僕の気持ちを一言で表すなら、「黙っていろカスが」だ。

 僕だってわかっている。今、この行動をするのは完全に悪手だと。だが、それでも、動悸が落ち着かないのだ。


 気持ちを言葉に込めないと、今にでも吐き出してしまいそうなのだ。

 だが、そのあとの言葉が続かなかった。

 僕にはしっかりと、芹原恵奈という女の恐怖が刻まれてしまっているのだ。


「あ、陽君久しぶり!!」


 そして芹原さんは、僕のことを陽君と言った。

 いじめが始まってからは、陽君なんて呼ばれたことが無かったのに。


「元気にしてた?」


 やめてほしい。やめてやめてやめてやめてやめてやめてやめて。

 頭がおかしくなる。


 なんでこうして笑顔で話しかけてくるんだ。なんで何もなかったかのように話しかけてくるんだ。

 お前らが僕に何をしたのか、忘れたのか?

 いらいらいらいら、いらいらが止まらない。


「ふざけないでくれ」


 僕は勢い教室を飛び出し、トイレに向かった。


「ふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるななんであいつがなんであいつが何であいつが何であいつが」


 自分でも自分をコントロールできてない。そう思う。

 僕には感情をどうコントロールすればいいのか全くもって分からなくなってしまった。

 頭はおかしい。いかれているのか、僕を散々もてあそんだくせに、なんでまた僕の学校に来るんだよ。


 本当にふざけんな。

 ああ、ようやく回復の可能性が多少なり見えてきた女子への苦手意識も、鈴美さんとの日々も、木村さんの家での出来事も、すべてが無駄だった。


 僕が彼女から逃げきれると思ってしまったのが間違いだった。


「うっおうぇえええええ」


 勢いトイレの中に向かって吐く。

 だが、出て来るのは、げろなどではなく、よだれだけだ。

 畜生、吐き気を感じても吐けねえのかよ。


(どうしたの? 陽太君)


 鈴美さんからのメールが来た。

 正直に答えるべきか。いや、僕には無理だ。今の僕には無理だ。

 なんて返信したらいいのか分からない。


(芹原さん心配してるみたいだよ)


 違うんだ。そうじゃないんだよ。


(とりあえず、二人きりになれないか?)


 そう、僕はメールを送った。


(でも、もう授業が)

(じゃあ、授業が終わった後の休み時間でもいい。少なくとも、僕は今この場を離れられない)

(分かった)


 そうメールが返って来た。

 鈴美さんが話が分かる人で良かった。おかげで余計な説明を省けた。


 ひとまずはこれで安心だろう。それにしても悪いことをした。クラスメイト達は驚いただろう。


 それに僕自身も、今のところ発狂して出て行った人になってしまう。


 芹原は僕を恐らく加害者にしてやり過ごそうとしているのだろう。

 そう考えたら腹が立つ。僕がここに居ればいるほど、僕の立場が悪くなるっていう事か。

 今になっても、芹原の事をはよくわかっていない。


「ああもう!」


 僕は戻った方が良いというのか。

 だけど、足が動かない。戻った方が僕に対する心証が良くなるとはわかっているが、それでも動けない。

 ああ、僕は弱い。僕は弱すぎる。

 そしてあっという間に一時間目の休み時間になった。

 屋上で待ち合わせの約束だ。

陽太君は一体どうなってしまうのでしょうか……

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