第14話 遊園地(過去)
そして来る日曜日。僕は予定より早くに、その場に着いた。
緊張する。
今からえななんとのデートか。
どうなるのか全く分からないけど、わくわくが止まらない。
そして待つこと十分。ついに、えななんが来た。
「お待たせ」
そう言って笑顔で笑うえななんは本当に可愛らしい。
特に私服姿のえななんが、制服姿のえななんしか見てないからか、いつもと違う感じがして可愛らしい。
語彙力のない僕にはうまく形容できないけれど、可愛らしい姿だ。
しかも頬が軽く明るい。チークでも塗ったのであろうか。唇もなんだか色っぽい。
「可愛いね」
「え? そう」
そう恥ずかしそうにするえななん。
その姿は照れているようだ。
この笑顔は僕にしか見られない。
そう思うと、なんとなく嬉しくなる。
「えななん。むしろ僕がこの程度の服装で申し訳ない」
「いや、陽君も可愛いよ」
「ありがとう? 可愛いって褒めてくれてるのか?」
「勿論。陽君はかっこいいというよりも、可愛いから」
「ありがとう」
彼女は本当にそう思ってくれているのだろう。そう思ったらなんと誇らしい事なのだろうか。
「じゃあ、行こうよ」
僕は気持ちが好調している。思わずそう言った。
それに対して、えななんも笑顔で「うん!」と頷いてくれた。
そして、彼女は手を差し出してくる。
「デートだもんね」
僕はそう言って、差し出された彼女の手をそっと取った。
そして中に入る。
そして最初に向かうのは、メリーゴーランドだ。
周りを見ると、カップルの人たちがいっぱいいる。
それを見て少しもじもじしていると、「あたしたちもカップルじゃん」と、えななんがそう笑顔で言った。
確かに、慄く必要なんてない。
僕も今はリア充なんだから。
早速コーヒーカップに乗ると、少し緊張してきた。
僕は個のデートで、えななんに失望させてしまわないか。
勿論僕たちは、カップルで、えななんから告って来た。
だが、忘れてはいけないのは、えななんはモテる事。
恐らく、僕は今日嫉妬の念にさらされることになるし、きっと、えななんは沢山ナンパをされる。
その時はそれ相応の覚悟をしておいた方が良い。
「そんな緊張しなくても大丈夫よ。楽しみましょ」
緊張をほぐすように言ったその言葉に僕は運と頷いた。
えななんが僕を裏切るなんてことは無いと思うからだ。
えななんは謎が多いけれど、僕を裏切るなんてことは無いと思う。
そして、コーヒーカップが回り始める。
「きゃー、ねえ陽君。速いよ」
「そうだな」
「もっと反応を!!」
「目が回る―!!」
「そう、それでいいの!!」
何が良いのかは分からないけれど。
でも、この時間は楽しい。
遊園地だからこそ、彼女の笑顔が輝く。
そしてさまざまな場所をめぐり。ついにメインとなる、ジェットコースターまでやって来た。
「えななんはジェットコースター得意?」
俺はふとそう聞く。すると、大好物よという答えが返って来た。
なら大丈夫かと、ジェットコースターに乗る。僕もジェットコースターは人並みには乗れる。
僕はジェットコースターには乗れる。だが、乗った後、軽く気持ち悪くなるのだ。
だが、それでもその吐き気はそう快感には負ける。
「結構並んでるな」
「そうだね」
仕方のない事だが、これじゃあ少なくともに十分は待たなくてはならない。少し憂鬱だ。
「早く進んでくれないから」
僕は思わずそうぼやいた。
「いいじゃない。こういう時間も必要だよ。だって、すぐに順番が来たら、二人で話せないじゃない」
確かにこういう場も大事だ。
「そうだな」と僕は返す。
とはいえ、こういう場面。僕は何を話せばいいのだろうか。
それがよく分からない。
今までは勢いで話してた部分がある。だが、えななんが急に黙り込んだ。
僕から話しかけるのも野暮だ。だけど、急に黙り込んだ理由も気になる。
もしかしてこれは品定めをされているんじゃないか?
だって、思えば僕は彼女とちゃんと話が出来ていると言えるのだろうか。
一方的に向こうから話しかけてきていた。
勿論僕がコミュ障という事もあるのだが。
だからこそ、僕から話しかけろという彼女の気持ちなのかな。
とはいえ、何を話せばいいのやら。
思えば僕は陰キャで友達を作ったことがない。
そう言う意味ではえななんが初めての彼女兼、初めての友達ともいえる。
「ふう」
軽く息を吐く。えななんは手袋をはめながら携帯をいじっている。このまま携帯をいじっていた方が、僕と話すより楽しいと思われるもどうなのか。
それは嫌だ。
僕は言葉を発した。
「そう言えばあと半月で、クリスマスだね」僕は、そう言った。
今は12月下旬。クリぼっちを人生で初めて脱することが出来る。
えななんがいるから。
その日に向けた話をしてもいいかもしれない。
「そうね」
一言で帰って来た。違うんだ。それだけで会話が終わってほしくない、
「どこか出かけないか?」
例えばイルミネーションがあふれる綺麗な夜の街とか。
「その日の夜は、家族とお食事があるからごめんね」
っ断られた。僕よりも家族を取るのかと思うと、少しむかむかとしてしまう。
「でも、昼ならいけるわ」
僕は少しほっと溜息をついた。
デート自体を嫌と言っているわけではなかったのだ。
「分かった」
僕はそう言った。
夜遊べないのは残念だが、昼に行けるならいい。
「じゃあ、昼何する?」
とはいえ、クリスマスのデートなんてどうしたらいいのか分からない。
夜はイルミネーションか。
なら昼は?
そう言うところを調べないとな。
僕はとりあえず、ひねり出した答えを言う。
「僕的には、クリスマスマーケットとかどうかと思うんですけど」
「えー、クリスマスマーケットは混まない? それに、学生には少し高い値段設定だし」
断られた。
「……ねえ、こことかどう?」
そう言って彼女が示したのは、定番のデートスポットではなく、劇場だった。
「まさかの?」
まさかその選択肢を示されるとは思ってもみなかった。何しろ、劇を見に行くなんて言う発想が無かった。
だが、その劇の内容は、所謂クリスマスに関するものだった。
なるほど。それなら頷ける。
「これを二人で見るのはどう?」
「確かに考えになかった。いいアイデアだね」
「じゃ、決まりね。はい!」
パンフレットを渡された。
「前からこれ陽君と見たいと思ってたからねー。ね、楽しみだね」
「ああ」
楽しみだ。
そして、そのあとは、ゆっくりと、会話のネタに困ることもなく、楽しい時間を過ごした。そして、ようやく、順番が来た。
「いよいよだねっ! 準備はいい? 怖くない?」
「……怖いよ。でも、それ以上に楽しみだよ」
「そう、ちなみにあたしは苦手寄りだから、吐いたら解剖してね」
「何を言ってるんですか。僕にえななんを解剖する元気なんてないですから」
「はいはい。まあ、その時は楽しみにしてるから」
「はい」
そしていよいよジェットコースターに乗車する。
いよいよと走り出す。
えななんは、僕の方を見て、「いよいよだよ」と言った。
その瞬間、車が一気に坂を勢いよく、くだっていく。
「うわああああああああ」
僕は叫ぶ。速い。
コースターのスピードが速すぎる。
風が頬を打ち付ける。スリル満点だ。
軽い吐き気に襲われるが、この気持ちよさには勝てない。
その十分間が一瞬に感じるほど、楽しかった。
「うええええ」
僕は、ベンチに座った。隣のえななんも体調が悪そうだ。
「やっぱりあたしたちにはきついね」
「そうだね。後悔はしてないけど、気持ち悪い」
「えへへ、仲間だ。でも、陽君見るからにジェットコースター怖がってたよね」
乗る前の事だろう。
「うるさいなあ。僕は怖いもの苦手なんだよ」
「知ってる。だって、ビビってたもん」
「それは認めるけど……」
「認めるけど?」
「僕はそれでも乗ったんだ」
怖いけど乗った。それは褒められるべきじゃないか。
すると、
「偉い偉い!!」
そう言ってえななんは頭を撫でてきた。
それが、気持ちよくて、
幸せだ。
「でも、僕は暫くはアトラクションにはのれなさそうだよ」
「そう、じゃあ、このタイミングでご飯食べに行こ?」
そう言えば今は十三時。ご飯食べるにはいい時間だ。




