第12話 告白(過去編)
ここから6話ほど過去編が続きます
もし、過去編いらない!みたいな方がいるなら現代軸に戻るまで読み飛ばしてくれると幸いです
9月23日までには過去編を終わらせるつもりです
僕は、個人的に何のとりえもない高校生だと思う。
勉強は人並み以上に出来るが、それだけだ。
高校という場所は、勉強が出来るからもてる、という訳ではない。
そもそも勉強なんて、不確実なものだ。何しろ、学校の授業をきちんと聞いているかどうかなのだから。
運動が出来る男子はモテると聞くが、体育の成績もいつもダメダメだ。そして、帰宅部だ。
コミュ力もないし、友達もいない。彼女なんてもってのほかだ。
要するに僕は非リアと呼ばれる奴だ。
だからこそ、僕は今の状況に理解が追い付いていない。
今僕が置かれている状況が。
「陽太君。あたしと付き合ってください」
その、長く垂らした黒髪が特徴的な彼女は芹原恵奈さんだ。クラスのマドンナでだ。
その長い髪型から見てとれる印象からクール系女子だと思いきや、元気いっぱいな性格だ。
そんな彼女が僕に告白してくれるなんて、まったく意味が分からない。
「人違いじゃないんですか?」
僕は思わずそう言ってしまった。
だって、間違いじゃなかったら、僕に告白なんてしないはずだ。
「人違いじゃないよ。だってもうあたしは陽太君のことが好きなんだから」
「えっと理由をお聞きしても?」
面接みたいになっている。
このセリフを言った瞬間、やってしまったと思った。
だから僕には友達が出来ないんだ……。
でも本当に理由が知りたい。
嘘告白。普通にあり得る。
僕みたいな陰の者に告白して反応を楽しむという物だ。
考えすぎとも思わない。
だって、それが陽キャなのだから。
「それはね、陽太君が好きだから。それだけじゃダメかな? それに理由なんていらなくない? その真面目に勉強する姿に惹かれたんだし」
確かに僕は、みんなに交わることを諦めて、勉強に集中してたこともある。
というか、そうしないと、やってられないのだ。
一人なのが惨めになっていくから。
「分かった。恋人になろう」
色々と考えるのも面倒くさい。
それに、彼女は僕のトラウマを埋めてくれるんじゃないかと思う。
こんな元気でおしゃれもしてて皆から好かれるような人が嘘告白なんてするとは思えない。
僕は信じることを選ぶ。
もう、女子という生物に裏切られることなんてないだろう。
「やったー!! じゃ、陽君って呼んでいい? 陽君は、私のことをえななんって呼んでいいから」
「それは難易度高くない?」
「でも、あたしたちカップルでしょ?」
「そ、そうだけど」
「じゃ、いいじゃん」
その笑顔の圧には逆らえそうにない。
「じゃあ分かった。……えななん」
その呼び方は、恥ずかしかった。
だが、その響きは悪くない。
僕の心の中が何だか暖かくなっていくのだ。
「うん、よろしくね。陽君」
「うん、えななん」
「じゃ、手を繋いで教室向かいましょ。きっとみんなびっくりするわよ」
「そうだね」
「ええ!? えなっち、なに手を繋いでんの?」
そう言うのは芹原さん。いや、えななんの友達の相沢美冬さんだ。
「だって、カップルになったんだから」
「カップルだと!?」
相沢さんは驚いた様子を見せる。
そりゃ、当たり前だろ。
僕みたいな陰キャと、芹原さんみたいな陽キャが手を繋いで教室に入って来たんだから。
「芹原さん、いえ、えななんか告白してきたんだ」
「そう、あたしの自慢の彼氏になったのよ」
そう言ってえななんは僕の手をギュッと握る。
僕の心拍数が上昇していった。
「これからはクラス公認のカップルとして頑張ろうねっ!!」
「クラス公認のカップルってなんだよ」
「みんなにばれてもいいカップルの事だよ。あたし隠し事嫌いだし」
「なんだそれ」
そうは言いつつも、僕の心は有頂天だ。
まさかこんな漫画的な展開が起きるとは思っていなかったのだから。
そしてその日僕たちは早速親睦を深めるために近所のファミレスに来た。
僕の家は貧乏なのであまり贅沢はできない。
だが、その分僕はバイトをしている。
だからこそ、こういうところで仕えるのだ。
「えへへ、カップルでの、ファミレスだね! 陽君っ!!」
そう、机の向かい側でえななんが行っている。
その顔はまさに可愛らしい、美少女だ。
今、僕の彼女はこの子なんだと思うと、うれしくなってくる。
「何頼む?」
「そうですね」
僕は小考する。何が食べたいか。そうだなあ。
スパゲッティもいいし、ドリアも捨てがたい。そばに行くのもいいなあ。
「陽君、考えすぎ」
「そうかな」
まだ五分くらいしか考えてないはずだけど。
「迷っているから決められないのよ。じゃあ、カウントダウンするよ。三、二、一、はい!」
「分かった、じゃあハンバーグで」
明らかにペースをつかまれてるよな、そんな感じがする。
しかし、その笑顔がまぶしくて、僕は何となく嬉しくなってくるのだ。
「そう言えばえななんは何にするの?」
「んーあたしはね、ドリアかな」
そう、屈託のない笑顔で言った。
「あたし、ここのドリア好きなの。ご飯と混ざり合ってて美味しいから」
そう言ってえななんは「はっ」と言った。
「あたし、ドリアを進めてたら良かった」
「僕はドリアは気分じゃなかったな」
「ええ、そんなひどい」
そう言ってえななんは泣きまねをした。
そんな会話をしていくうちにご飯がやってきた。
えななんとの会話は楽しかった。今まで僕が感じていた孤独や、不信感を捨て去ることが出来たなと思う。
僕は女性に対していい思い出がほとんどない。
母さんのせいで、僕の家庭は崩壊したからだ。
でも、その不信感も、えななんの前だったら消え去っていく。
僕は目の前に置かれているハンバーグを一口パクっと口にくわえた。
ハンバーグ。そう、最高の肉料理だ。
どこのファミレスにもあるが、ハンバーグという物はとてつもなく美味しい。
「いただきます」
僕はそう言ってハンバーグを口にくわえる。
即座にハンバーグの濃厚な肉のうまみが口の中を襲う。
ああ、美味しい。
その瞬間、僕をじっと見る視線に気が付ついた。
「なんですか?」
僕はジト目で彼女を見る。
「ううん、嬉しそうだなって。それに今の陽君の顔可愛いし」
「っ」
そんなこと言われたら照れてしまう。
「えななんも早く食べろよ」
照れを隠すために、僕はそう言うしかなかった。
そしてしばらく食べて行っている時。
「ねえ、一口交換しよ?」
急にそう言われた。
一口交換、一口交換??
ええ!? と言った僕の顔はおそらく赤く染まっているだろう。
仕方ないじゃないか。
だって、学年一の美少女が一口交換しようだなんて言ってきてるんだぞ。
顔を赤らめるなという方が無理ゲーだろ。
「ほーら!!」
口の前にドリアのスプーンが運ばせられた。
受け取るしかない。僕はそのドリアをパクっと口に入れた。
これって間接キスなんじゃないかと思ったけど、あえてそれは言わなかった。
言ったら僕が今度は照れ死する可能性だってあったのだから。
「美味しい」
その代わりに僕は一言そう、呟いた。このくらいなら全然大丈夫だ。
「えへへ、そう? あ、そうだ。陽君も私の口にハンバーグ入れてくれる?」
「まさか、僕もあーんをするの?」
「そりゃ、カップルだから当然でしょ」
「そうだけど」
カップルだからと言われたら断るわけには行かない。勢いハンバーグをナイフで切って、フォークで突き刺したのをえななんに渡す。
「うーん、美味しい!!」
そう、笑顔で言うえななん。幸せそうだ。
しかし、その一方僕はというと、恥ずかしいという気持ちであふれてしまっている。
だって、そりゃそうじゃないか。だって、あーんだぞ。
されるのも嫌だが、するのも恥ずかしい。
その瞬間に間接キスのことも脳に浮かんできて、恥ずかしさの絶頂にいたった。
「そんな恥ずかしがらないでよ。もう、そんなはずが市がられたらこっちだってどうしたらいいのか分からなくなるし。……でも、そんな顔も可愛らしいけど」
「そんなこと言わないでくれよ」
そろそろ死ぬ。
「あはは、陽君いじめるの楽しー。でも、私は本当に陽君が好きなんだからね、その顔も、その表情も。本当に陽君にしてよ渇会って思ってるよ」
「そういってくれて嬉しいよ」
「えへへ、陽君に褒められて嬉しい」
そう言うえななんは本当にかわいくて、今でもドッキリを疑ってしまう。だが、こんなかわいい子がドッキリなんてするわけがない。
しないに一億円は……払えないけど、一二八四五円かけてもいい。
今の僕の全財産だ。
「でも、本当に僕に告白してくれてありがとう」
そう、僕がえななんに感謝を告げると、えななんは笑って「どういたしまして」というのであった。




