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壮大な嘘告白をされ人間不信になった僕、後ろの席の女の子が付きまとってくるようになる  作者: 有原優


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第11話 被害者

 翌日。僕は、彼女に着いてその友達の家に向かっている。

 



 僕はいつもの通りに、今後悔している。

 本当にどうして僕はこの選択を取ってしまったのだろう。


 女子が苦手な僕が、本当に行って大丈夫なのだろうか。

 そもそも家に入った瞬間ドアを閉められて二人でボコられる可能性だってある。

 僕はいつも後悔ばかりだ。


 そして、僕はいつも選択を間違える。


 僕は、僕の危機管理能力が作用していないのだ。

 思えば最初、鈴美さんと会った時も、思えば間違い(と当初は思われていた)行動をとったものだ。

 結果的にそれは正解の選択肢に代わって行ったのだが。



 そして、これは僕の選択だ。

 いつも選択をするのは僕自身だ。

 誰にも文句は言えない。


 僕にしか文句は言えない。

 だからこそ、僕はいかなければならない。



『何かあったら連絡してね。すぐに駆け付けるから』


 そう、鈴美さんからメッセージをもらっている。


 だけど、それはあくまでも最後の切り札だ。


 前提として僕は今まで鈴美さんに頼りっぱなしだ。

 だから一人で何かが出来るようにならなければならない。


「ここよ」


 山下さんは足を止め、そこで今日初めて言葉を発す。


 その言葉聞き、僕はつばを飲み込み、「うん」と言った。


 するとすぐにピンポンと音がした。


 山下さんがインターフォンを押したのだ。

 僕はまだ準備が整っていなかった。

 心の準備だ。


 だけど、そのインターフォン越しに「はーい」という音がして。

 僕は強引に覚悟を強めた。


「だ、誰?」


 そこから出てきたのは、小柄な少女だった。

 彼女は華奢な体で、あまりご飯を食べていないのだろうと思った。


 摂食障害という言葉を聴いたことがある。

 きっとそれに近しい状態なのだろう。


 きっと、精神が弱まって、食事も面倒になってしまっているのだ。


「少し話したいんだって、御堂鈴美の友達よ」


 その言葉を聞いた瞬間、彼女の顔が少し暗くなったのを感じた。

 僕はただ、彼女の顔をじっと見る。


「どうして?」


 静かに、一言。


「どうして? なの?」


 そして、もう一言。



 それは、どうして来たの?

 なのか、


 どうして殴ったの?

 なのか。



 それがどちらかは分からない。

 ああ、もう帰りたい。


 先程の決意はどこに行ったのか、と思われがちだが、僕は、心が弱い。

 心が弱いから、すぐに意見が変わってしまう。


「どうして、殴ったか知ってるんでしょ?」


 ★★★★★


 昨日の屋上での出来事の後だ。


「山下さんの友達を殴っ……たの?」


 僕は鈴美さんに訊いた。


「それが誰かは分からないけど、兎に角暴れて、私の事を虐めてた人を殴ったよ」

「それが事実なの?」

「うん」

「でも――」


 僕は、山下さんから聞いた話を話した。

 その言葉を聞いて、「あー、あの子ね」と言っていた。


「知ってるの?」

「うん。あの子はね、嫌々虐めてたという感じだったね」

「そうだったんだ」


 僕の仮説は合っていたという事なのだろう。


「だから、悪いことをしたとは思ってる。彼女まで殴る必要はなかったのかもって、主導者だけにしとけばよかった」


 そして、鈴美さんは騒動に対する自身の気持ちを吐露してくれた。


 ★★★★★


 そして、今に戻る。


「僕が聴いたことを言います」


 戸惑う彼女に対し、僕は鈴美さんから聞いた話を言う。


「彼女は、あの時怒りに身を任せていた。だから、全員殴ってしまったらしい。

 でも、その後は、ちゃんと君が虐める事を強いられていたって気づいたよ」

「なら、なぜ、謝りに来なかったのです」


 謝りに、謝りにか。


 そこは難しい。


「機会がなかったって」

「そんなの嘘!!」


 その言葉に、僕は軽くイラつきを覚えた。

 確かに、鈴美さんは悪いことをしたとは言っていた。

 しかし、僕は文句を言ってやりたい気分になった。


 その気持ちが本当に正しいのかは分からない。しかし、一応いじめたというのは事実なのだ。

 そこは言い訳してはいけない、と思う。


 ただ、僕はそんな強い人間ではない。

 自分の素直な気持ちを素直に言えるかと言えば、大間違いだ。



「電話をかけていいですか?」


 僕は訊く。


 正直、今も大分精神壊れかけだ。

 というのも、当然先程の問答でだ。

 僕は、僕のメンタルは鈴美さんほど強くはないのだ。


 相手が女子で、しかもここが玄関とは言え、家の中という事もある。

 鈴美さんに頼りたくなっているのだ。


「話したくない」


 そう、強く拒絶をされる。

 そもそも僕がここに来たこと自体間違いなのだ。



 いや、完全に間違いではない。


 そもそも、友達作りの際に山下さんを出した時点で鈴美さんはこの状況を見ていたはずだ。


 これは鈴美さんによって与えられた試練。

 そして、そういう事は近くにいるはず。


 何かあったら呼んで、とは近くにいるからという事なのだ。


「鈴美さん、来てください」


 僕は鈴美さんにそうメールを打った。

 そして、僕の思っている気持ちもついでに。



 彼女の性格上、こう送ったら、すぐに来てくれるはずだ。



「大丈夫。私が来た!!」


 某ヒーローアニメっぽいセリフを携えて彼女がやってきた。


「短時間だけど、よく頑張ったよ。後は私に任せて」


 そうにっこりと笑う。

 その言葉を聞き、僕はその場に座り込む。


「どうして、来たの?」


 不思議そうな眼をして聞く。


「そりゃ勿論、陽太君を助けにだよ」

「っ……」


 彼女は家の奥へと奪取した。


「やっぱり共謀してたのね」

「それは違うよ」


 鈴美さんははっきりという。


「私が勝手に陽太君をストーキングしてここに来ただけ」

「なら帰ってもらおうかしら」

「だめだよ。そのためにここに来たんだから」


 そして、鈴美さんは息を吸う。


「ここに陽太君を送った理由は2つあるの。一つは陽太君の女性恐怖症を直すため、そして、あと一つは何だっけ」


 覚えてないのかよ。


「まあ、いいわ。とりあえず、話し合いたいの。私の風評を覆したくて」

「そのためなの?」

「勿論、私達が仲良くなるためもあるよ。それと、これ以上苦しんでる人を増やしたくないしね」


 そう言って鈴美さんは中へと入っていく。


「はあ……」


 山下さんはため息をつく。


「えっと」


 気まずい。

 どうしたらいいんだ。


「いつもあんなのなの?」


 山下さんは僕に訊く。


「はい、そうです」


 僕が頷くと、「そうか」とため息をついた。


「私は、今も友達をやめた方がいいと思うわ。身勝手すぎるもの」

「それは……僕も思います」


 僕もそれは思う。

 身勝手で自由人。

 さらに言えば、自分で決めたことは覆そうともしない、その強いエゴ。


 彼女もまた、高校生なのだ。

 50年とか生きた大人じゃない。

 完璧な人間ではないのだ。

 僕は、それを知っている。


「だけど、僕は彼女に救われた部分もあります。だから今日は恩返しのつもりで来ました」

「そう、なのね」


「っ」


 その瞬間泣きながら家を飛び出す友達さんの姿が見えた。

 走って家の中から飛び出していったのだ。


「どうしたのかしら」


 山下さんはあくまでもクールにそう言った。


「分からない、です」

「あ、ちょっと」


 そこに、鈴美さんまでもやってきた。


「はあ……」


 珍しく落ち込んでいる。


「陽太君の言ってた通り、言ったんだけどな」

「ええ??」

「謝ったけど、それと同時にいじめたのは事実だから、それは反省しなきゃいけないって。被害者モードが酷いって言ったの」

「ええ……」


 確かに、僕は愚痴のような感じでそのようなことをメールで送った。

 しかし、本当に言うとは。

 ああ、胃が痛い。


「大丈夫よ。言ったのは私だから、私の責任よ。それに彼女自身気持ちの整理がついて無かったみたいだし」

「はあ……」


 鈴美さんはそう言って笑っているけど、本当にどうしよう。


「ちょっと話を聞かせて」

「いいよ」


 そして、鈴美さんはぺらぺらと自分が思ったことを淡々と告げる。


「なるほどね。分かったわ」

「え? 分かったって?」

「ええ、今から私が話を告げに行くわ」


 そう言って山下さんも家を飛び出していった。

 玄関に居座る僕たち。


 家主もその友達もいないのに、ここにいていいのか?という気分になるが、戻ってこない以上仕方がないだろう。


「結局」


 鈴美さんが口を開く。


 「分かり合えない人はいないと、私は思う。いじめっ子を覗いてね」


 そう、静かに言った。

 僕は、鈴美さんの顔をじっと見た。


「いじめっ子を除くって何ですか」

「実際そうでしょ」

「まあ、そうですけど」



 僕も芹原の事を人としては見れない。この場合の人というのは良識のある人間という事だ。


「私は、彼女を、木村胡桃を完全な意味で許すつもりはないよ。でも、友達にはなれるかなって」


 許さない、というのは罪をという事だろう。

 だけど、友達になれば、その過去もいい思い出に代わるかもしれない。


「これってどうかな」

「いいと思います」

「そっ、陽太君ならそう言うと思った」


 そうこう話していると、彼女が、山下さんが戻ってきた。


「どうでした?」


 僕は訊く。

 その隣には木村さんもいる。


「ごめんなさい」


 木村さんは頭を下げた。それも、鈴美さんに対してだ、


「私が我儘だった、かもしれない」


 その声は弱弱しかった。


「あまえてたかも、しれない。私も脅迫されたとは言っても虐めてたんだから、その罰は受けるべきなのに」


 罰、殴られたことだろう。


「ごめんなさい」


 そして、再び頭を下げた。


「せっかく謝ってくれたのに、それをむげにして」

「私は別に、怒ってなんかないよ。私が殴ったのは事実だし、あの時いじめられて嫌だった」

「うぅ、それは」

「だけど、いいの。真の黒幕は別にいるしね。それに私もさっきも言ったけど殴ったのは悪かったと思ってる」


 そう言って鈴美さんはまた笑う。


「だからさ、私達も仲良くやろうよ。あなたにトイレに首を突っ込まれたのを笑い話にしたいから」


 結構きつい事をくらってる。


「うん!!」


 木村さんは笑って答えた。


 そして、僕たちはそのまま解散した。

 今日、僕はそこまで力になれなかったし、また鈴美さんが解決してくれた。

 そのことに、少しモヤモヤを残しつつ、だ。


 次またこういう機会があれば僕は一人で解決できるのかな、

 鈴美さんに与えられた試練をこなせなかったな。

 そんな気持ちが、心の中で芽生えて来る。


「大丈夫だよ。きっと、友達沢山のモテモテ君になるから」


 そう笑って言う鈴美さん。

 叶わないなと思った。


「あ、でも。友達沢山出来るモテモテ君になるから、寂しくなるからほどほどにね」

「はい」


 そう言って鈴美さんは笑った。僕はそんな鈴美さんの背中をただ、追いかけるのだった。

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