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壮大な嘘告白をされ人間不信になった僕、後ろの席の女の子が付きまとってくるようになる  作者: 有原優


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第1話 転校


【あらすじ、彼女として→彼氏として】「笹原陽太です。よろしくお願いします」



 そう僕は皆に向かって自己紹介した。

 そこで拍手が巻き起こる。

 僕はこの学校に転校した。



 理由は単純明快。そう、いじめだ。

 僕は理不尽ないじめを受け逃げるために転校した。

 話は嘘告白から始まった。


「陽太君好きです。付き合ってください」


 あの日、僕は告白された。思ってもみない相手だ。

 クラスのマドンナであるえななんこと芹原恵奈さんだ。


 美人の彼女に告白されては、断る理由はない。クラス中から人気な彼女の彼氏という称号にはそれだけの意味があるのだ。

 それに俺も彼女の事は美しく、好きとまではいかないが、異性として気になる存在ではあるのだ。


 僕はその時疑問に思う事もなく、即座に受け入れた。

 それが、悲劇の始まりだとは知らずに。

 そこから数週間、幸せな生活が続いた。


 遊園地に行ったり、カラオケに行ったり、ミュージカルを見たり、しかも、一緒に初詣にも行った。

 あの頃の僕はまさに幸せの絶頂にいたと思う。


 だが、問題が生じたのは、告白を受けた三週間後の事だ。


 えななんが、「そろそろ大人の階段を歩きたいなー」と言った時だった。ちなみに僕はその時彼女のことをえななんと呼び、彼女は僕のことを陽君と読んでいた。すべてが発覚した今では、本当にゲロが出そうだが。


 その頃の僕たちはまだ手をつなぐのが精いっぱいで、キスもしていなかった。

 僕はえななんの放ったその言葉に本当に浮かれていた。だからこそ放課後体育館倉庫に来てという言葉にも、何ら疑う事もなかった。


 だが、そこに待っていたのは天使では無かった。

 芹原さんと、陽キャ女子総勢六名だった。


「なんで?」


 僕がそう言うと、残酷な答えが返って来た。

 どうやら、あの告白は、嘘告白らしかった。


「てめえみたいなブスに、アタシが告白するわけねえだろ」


 そう、芹原さんが言うと、周りから笑い声がする。

 僕の心は絶望に包まれた。

 今から、幸せな時間が訪れると思っていたら、来たのはまさに地獄の時間だ。


 あれ、僕は何を受けてるんだろう。僕は、ここでえななんと一緒にエッチな事をするんだと思ってたんだけど。


 あれ、僕はなぜ、暴力を受けてるの?

 なんで僕は笑われてるの?

 分からない分からない。

 まさに僕はその時、思考が混乱して、おかしくなった。



 翌日も、昨日のことはまっぴら夢で、今日からまたえななんと幸せな日々が送れるんだと、そう僕はあの地獄を味わってもまた思っていた。まさに、花畑思考だ。


 そして、またも僕は絶望の中に放り込まれた。

 それから僕の日常は地獄へと変わった。

 そしてある日学校で、ある写真がばらまかれた。

 僕が一度送った、僕自身の裸の写真だ。

 僕は学校に居れなくなった。

 それから二か月後、僕は逃げた。

 転校したのだ。


 もうこの学校ではあんなことは起こってほしくない。

 僕はこの学校では女子とかかわらないようにしようと決心した。

 そう、女は悪魔だ。女に碌な人はいない。

 集団で弱いオスを騙し、虐めて快感を得るまさに悪魔な人たちだ。


 僕は元々女という生き物が苦手だった。だがそんな中、えななんを信じて付き合ったら馬鹿を食った。


 それから、弱い男を脱するために、出来るだけの努力はした。髪の毛を染め、眼鏡からコンタクトへと切り替え、ツーブロックの髪の毛にした。


 最近は若干の偏差値の高い学校なら、校則は緩い。

 そう見積もって二ヶ月勉強し、編入試験に合格してみせたのだ。


「ねえ、なんで転校してきたの?」


 早速一人の子が俺に質問してきた。

 プライベートな事を聞いてくるとは。これだから女は信用ならない。


「ちょっと家庭の事情で」


 勿論本当の理由はそんなものではない。

 だけど、いじめから逃げるために、転校したと知られたくないのだ。


 先生には、転校理由はいじめのためと申告しているが、流石に先生も本当のことを話すなんて野暮なことはしないだろう。


「引っ越しとか?」


 ええ……がんがん聞いてくるじゃん。


「おーい、そこはプライベートな事だから、あまり訊いたらだめだぞ」


 と、先生。助かった。


「はーい」


 そう、その子が、言うのが収まると同時に、質問タイムが終わった。


「ねえ、陽太君だよね」


 さっきの子が話しかけてきた。最悪な事に後ろの席。

 この時点で、げろ吐きそうだ。

 この手の女子が一番腹黒いのだ。きっと本性は最悪なものなのだろう。



「ねえってば、聞いてよ」


 その声を無視して、男子グループに近づこうとする。


 だが、困ったもので、不思議と足が動かない。結局席から半歩動いただけの形になってしまった。

 僕はここまでひどくなっていたのか。


 所謂、人間不信だ。人が怖くなってるのだ。

 女性不信とだけ思っていたが、思ったよりも心の傷は深かった。


「はあ、仕方ない」


 結局諦めて、次の授業の教科書を広げる。

 こうすることで、時間を無駄無く使うことが出来るのだ。


 ただ、後ろの子が。


「ねえ、陽太君聞いてよ!!」


 と、しつこく言ってくる。これで押しに負けて、仲良くなったとしても絶対に裏切る未来が見えている。

 本当にしつこい。

 絶対に性格はブスだろうなと思う。





 結局その日は、教科書に向き合う事で彼女から逃れ続けていた。

 いや、それは正確には違う。


 彼女を変人だと思わせ続けていたという事だ。


 実際一日彼女の追及を無視してきたことによって、彼女、御堂鈴美はかなりの変人だとクラス全体で認識されているという事が分かった。


 それに同情してくれた数人の男子が、「どんまい、特級呪物に絡まれて」と言ってくれた。

 彼女はいったいこのクラスでどう思われてるのだろうか。


 というか、いじめを受けたことのある僕には、彼女は辛くないのかという疑問が生じる。

 御堂さんは孤独の中、生き続けているのかもしれない。


 だが、そんなことどうだっていい。僕は裏切られたんだ。


しかも、あんなにも人のよさそうな雰囲気だった芹原さんにだ。

僕にとってはもう忘れたい過去だ。だが、どうしても忘れられない。記憶の奥底でいつまでも僕の事を苦しめ続けているのだ。


 ああ、何がクラスのマドンナだ。蓋を開ければただの性悪女だ。あの時は本当に、人を信じた僕が馬鹿だった。


 何と言われようと、俺は過度に人に期待するのはやめたのだ。





「ついてきてる」


 帰り道、明らかについてきている人がいた。ただ、偶然帰り道が同じになっただけ、とは到底思えない。

当然ながら御堂さんだ。彼女は学校内だけじゃなく、帰り道も絡んでくるつもりなのだろうか。


 確実にストーキングされている。しかも、もろバレだ。


 まさかあれで、隠れてるつもりなのかと思い、思わず苦笑してしまう。

 ばれていると、教えてやってもいいが、これでどこまでついてくるのか気になってしまう。



 まさか家までついてくるなんてこと……

 ちなみに僕の家は学校から電車に乗って帰る。

 だからこそ、そこでお別れになるはずだ。


 ……おいおい、もう駅の前だぞ。

 いつまでついてくるんだよ。

 まさか電車内でもついてくるとかあるわけないよな。



 ……流石にこいつに家がばれるのは嫌だ。仕方ない。

 吐きそうになりながらも、僕は言葉を発す。


「おい、そこ。ばれてるぞ」


 そう、僕は後ろを向きながら言った。

 はあ……

 まさか転校初日にこんなに付きまとってくる女子がいるとは思わないだろ。


「え、ばれてた?」


 ひょいっと、そこから御堂さんが出てきた。


「帰りな。ここから先には君の望むものはないから」


 そうだ。さっさと帰ってくれ。僕は君にうんざりしている。

 これ以上話していたら、ちょっと吐きそうだ。


「嫌よ」


 嫌よって。


「私は、君のことが知りたいの。陽太君」

「……知りたいのって言われても」


 家の場所なんて教えてろくなことがあると思うか?

 恐らく家を特定された暁には、家までヤンキーが襲ってくるに違いない。

 そんなのは絶対に嫌だ。なんとしてでも阻止なくてはならない。


「なあ、いい加減にしろ」


 そろそろイラついてきた。しかも、喋ってるとイライラしてしまう。

 僕は、こういうタイプの女子が苦手だ。

 芹原がどうしても脳裏に思い浮かんでしまう。

 ただでさえ、女子という生き物が苦手になってるのにだ。


「僕と君はただのクラスメイトのはずだ。どうして僕に構う」

「っそれは言えない」

「言えないっていう人を信用しろっていうのか?」


 ああ、そうさ。もしかしてこいつはあの芹原のスパイかもしれない。

 新しい学校での僕を監視して、最終的には御堂さんが告白して、そして彼女の場所に来た途端に、みんなで襲おうという魂胆だろう。

 絶対にそんなことはさせない。


「これ以上付きまとうなら、しかるべきところに訴え出るからな」


 ストーカーは確か警察に訴えることが出来るはずだ。

 これは完全なる犯罪行為、いかなる理由があろうと許されるはずがない。


「でも」

「僕は許さないよ」


 そうにらんだ。僕の必死の抵抗だ。

 頼むからこれで引き下がってくれ。

 僕にはこれ以上の抵抗手段を持っていない。


「分かった」


 そう言って彼女はとぼとぼと引き上げていった。

 一瞬少し強く言い過ぎたかなと思ったが、ああやらないと女子という生物はすぐに狂暴化してしまう。

 あの光景を思えばこれくらいがちょうどいいんだ。


 集団化、そして狂暴化した女子は怖い。僕はあの事件でそう学んだ。人間皆そうだが、女子は特に群れたときの団結力が強い。


 その理由は単純だ。だって、女子はカースト制がある、

 そこからはぶれたらいけないと思うからこそ、仲間外れを恐れて、孤独を好まない。

 陽キャ女子というのはそういう訳で、狂暴性を保っているのだろう。


 彼女は今のところボッチなやばい女という噂しか聞かないが、他高で、仲間を連れている可能性もある。

 油断なんてできない。出来る訳がない。

 とりあえず、僕は彼女をにらみながら、電車に乗り、家に帰った。


 家でその後、体調が悪くなったのは言うまでもない。

 あの御堂さんとの会話で、体力の七割が吹き飛んだんだから。

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