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1ー3 小惑星鉱山No.7

 ミサキ・サトウ——施工管理の女だと聞いていた。


 付き合いのある建設資材会社の番頭からそう聞いていたのだが、本人は宇宙考古学博士だという。

 しかし、どう見ても女子中学生くらいにしか見えない。


 そんな博士が、明るい表情ながらも低いトーンで「殺されるかもしれない」などと言っている。

 俺にどうしろというんだ。ただの宇宙トラック乗りだぞ。




 狭く薄汚れた現場事務所コンテナの中で、俺は博士の身に迫り来る危機ついて話を聞いていた。


「理由を聞かせてもらおうか……」

「うん、まあ、聞いてよ——」


 汚いボロボロのパイプ椅子に腰掛け、脚を組む。

 ミサキ博士は滾々(こんこん)と語りだした。


「この小惑星鉱山No.7に来たあの日から――」


 この小惑星No.7⋯⋯以後No.7と呼ぶが、ここは以前はアステロイドベルトの中でも一際異彩を放つ、高含有量を誇る金鉱石が採掘されていた小惑星鉱山だ。


 古い鉱山ではよくあることで珍しくもないのだが、落盤事故が多発していたらしい。


 そんな時、崩れた岩石の中から「例のモノ」が大量に見つかった。「縄文土器の破片」だ。それもかなり大量に。


「シノヤマさん、あんたのトラックの三分の二は埋まりそうね」

 俺の中型宇宙トラックでも、なんだかんだ結構積めるが、そんなにか。


 確かに大した量だが問題はそこではなかった。


 土器が発見されてからミサキ博士の調査チームがこのNo.7にやってきた。


 兼ねてより月面遺跡の未解読部分についての研究をしていたのだが、その未知の部分の解読に繋がる文様が、このNo.7で発見された縄文土器にあったらしい。


 調査チームのメンバーは浮足立った。


 最新の大型電子頭脳と人工知能を駆使しても、どうしても解読出来なかった部分の答えがそこにあったのだから。


 そんな時だった……。


 調査チームのメンバーの家族に次々と不幸が訪れた。

 あるものは事故、またあるものは謎の疾病により、入院した。


 そんな感じで調査チームのほぼ全員が、なんらかの形で調査チームから離れた。


 ミサキ博士を除いて……。


「あっ、あたしには家族は居ないからね。あたしも怪我をしたけどまあかすり傷だったから」

「……うーん、こういう時に思いつくのは、なんらかの組織による妨害じゃないのか? 客観的に俯瞰しても、怪しいじゃねーか。タイミングばっちりでさ」


「そーなのよ。あたしは今回たまたまかすり傷で済んだのだけれど、運が悪かったら採掘機械の下敷きになってたかもしれないのよね」

「おいおい、物騒な話だな」




「それでね、これ以上……といっても、もうあたししか残ってないけど、ここにある土器片をNo.7から持ち出したいのよね」

「ああ、それで俺を呼んだのか」


「うん、シノヤマさんみたいな中型トラック乗りが丁度いいのよね。しかも組織に縛られていない、フリーランスのトラック野郎」

「いやぁ、しかし俺だって厄介事は困るんだがなあ」


「そういえばシノヤマさん、あんた家族は?」

「ん? 三十五歳、花の独身貴族さ」


「いいねえ、ますますうってつけだわ。なんだ、あたしと同い年だったんだ。もっと年上かと思ってたけど」

「それじゃあ、いつまでもここに残っていても危ないし、さっさと積み込んで……どこにいけばいいんだ?」


「第一中継ステーション『ひつじ』に、あたしのマンションと、大学の研究室の出張所があるので、そこに持っていきましょう」

「うへぇ、第一中継ステーションってここから惑星軌道の正反対じゃねーか」

 太陽を挟んで反対側。こりゃあ、長旅になりそうだな……。


「ここ第八中継ステーション宙域から一つづつ中継ステーションを渡り歩いて、推進剤を補給しながらだと……二週間はかかるぞ」


 するとミサキ博士は、きょとんとして

「あれ? シノヤマさん、もしかして最近実用化された、亜光速推進ブースターを知らないの?」

「は? なんだそれは」


「中継ステーション惑星軌道内では、近すぎて全力運転は出来ないけど、出力を0.1パーセントにまで絞れば、第一中継ステーション宙域くらいまでならまあ半日ね」

「しらねー、いつのまにそんなものが」


「超古代縄文文明を研究している時に見つかった、最新の運搬技術よ。まあ実用化されたのがついこの間だから、まだ知らないトラック乗りがいても無理はないか」

「そういや最近、宇宙ラジオを聞いていなかったから、世間の流れについていけなくなってたわ」


「更に言うと、あたしが乗ってきた小型機だとエネルギーが足りなくてブースターをつけられないのよね。その点、シノヤマさんの中型宇宙トラックなら、後部ユニバーサル規格のコネクターにポン差しで使えると思う」


「人類の科学力は、一体どこまで進化をしようというのか(棒読み)」

「あはは、シノヤマさん、トラック乗りの割に思考回路がなんだか学者よりね。親近感が湧くわね」

「まぁ、俺もトラックに乗る前は色々やっていたんでな」


「じゃあ、荷物を積み込んだら、まずは第八中継ステーション建設現場にいきましょう。あそこで亜光速推進ブースターをつけてもらいましょう」

「なんだ、そんな簡単に使えるものなのか、俺はてっきりめっちゃ高価なものかと……」


「ええ、高いわよ? あんたの中型宇宙トラックなら新車で十台は買えるくらいの値段はするわね」

「おまえ何者だよ」



   ——つづく

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