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自分の恋人を大型犬のように思うのはよくないと言われるかもしれないが、ぶっちゃけこの男――シリウス・フローチェス・ノクスという男は犬系男子だとは思う。ヤンデレだけど。
いやヤンデレはこの際脇に置いておくとして。
……かなりパワーワードではあるんだけども。
で、話を戻すとシリウスは犬系は犬系でも大型でシベリアンハスキーを通り越して大型魔獣のフェンリル系男子である。
男子って年齢でもねえけど。
そして何よりこいつの恐ろしいところは、振り切った行動を突然取るって点にある。
特に私に関して。
(蘇る過去……!)
私が逃げたと思ったら、捕まえるために義妹と義弟のために縁遠くしていた実家に戻ることも辞さない、そして利用する気満々スタイル。
見つけたらここで逃がしてなるものかと速攻攻撃魔法まで駆使する行動力。
怪我だけはさせないように細心の注意を払ってはいたけどね!
そして口説き落とすために軟禁しちゃって情に訴えかけつつ外堀を着実に埋めて逃げ場をなくすという腹黒さ!
それらを兼ね備えているのがシリウス・フローチェス・ノクスという男なのだ。
(……そしてそんな男にまんまと絆された女が私だよ!!)
このとんでもねぇ大型犬に対して、公爵様は私っていう婚約者を与えておけば大人しく従ってくれる可愛い息子って認識。
そしてその婚約者である私としては、シリウスは惚れた相手だけど考えていることに関してはさっぱりわからんのだ。
(目の前の王女様が大人しくしてたら噛みつかないだろうし、普段だったら気にも留めないだろうけど……)
私に手を出したらどう動くかわからんぞ。マジで。
これは自惚れでもなんでもなく事実なんで。
そのことをあちらさんが認識するのは、きっと痛い目を見た後になる。
ただその〝痛い目〟がどの程度かによっては国交に響くのでは……? というのが私の心配なんだけど。
そのへんどうするんですか? って視線を公爵様にチラッと向けたらニコッと微笑まれてしまった。
えっ、こっちに丸投げですかその笑顔。
知らんよ? 知らんよ!?
「……そう、シリウス様の婚約者。貴女が。へえ……」
やめろ意味深な感じで値踏みするな!
隣が怖いだろ、誰が尻拭いすると思って……あ、いや放置も手だったりする?
それだと私の負担少ないな。
……うん、いいなそれ。
「私は本邸では暮らしておりませんので王女殿下のご滞在の間、あまりお目にかかる機会もないかとは思いますがどうぞ何かありましたらお気軽にお声をかけてくださいませ」
事前に聞いておいた、王族相手への模範的な社交辞令の言葉を述べる。
まあ十中八、九、このオウジョサマは私を呼びつけてお茶会だのなんだのでネチネチ言ってくるんだろうなとは思うが、それはそれこれはこれ。
ちゃんと礼儀知らずじゃないよって布石は大事だ。
それに私、元・暗殺者だけあって大抵の毒だけじゃなくて罵声や恐喝といった類いにも耐性あるからね!
あれ? そうやって考えたら怖いこと何もないね!!




