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主人公の義兄がヤンデレになるとか聞いてないんですけど!?  作者: 玉響なつめ
第七章 王女襲来、それが何。

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 まあ笑えないくらいには、みんなの共通認識なんだろうなと思った。

 王女様が暗殺も辞さないタイプってことね!


「とはいえ、ノクス領内でノクス家の庇護にある私を、王族とはいえ国外人の王女一人で相手取れるのかってのは疑問よね。……どこが(・・・)関与してるのかはわかってるの、シリウス」


「さあな、興味ない……と言いたいところだが、おそらくは他の公爵家のどれかだろう。ノクス公爵家の権勢を削ぎたい考えだ」


「私を暗殺できたとして、権勢が削がれるとは思わないけどね~」


 王女様的には婚約者である私が不慮の事故か何かで死亡、悲しむシリウスを慰めるついでに心をゲット、なし崩しで結婚、王女と長男なんだから爵位を譲ってもらってハッピー!


 って考えなんだと思う。

 とても……わかりやすくて、いいね……!


 その上でノクス公爵夫人となって母国に対してもデカいツラ……おっと口が悪くなった。

 とにかく堂々と、臣下に嫁がされた娘じゃなくて、よその国の大領主の妻って顔をしつつ、協力してくれた諸侯には母国とノクス公爵家、二つの面で優遇するよって話でも通してあるんだろう。


(ただそれだけで動いてくれるとは思えないから……)


 問題は王女は何を差し出したのか? ってところか。

 でもそれについてはきっと公爵様も探っていることだろう。


 この段階でシリウスが私の問いに対して『どれか』と答えている以上、そこまでしかまだわかっていないってことだ。


 シリウスは私が問えば答える。

 まあ多少濁したり、遠回しな言い方だったりはするけど。


 聞かなければ答えないが、聞けば答える――それがシリウスだと私は学習しているのだ!


(ただ知っていることは答えるけど、興味のないことだったりするとその輪郭があやふやなんだよね……)


 王女様について質問したら、シリウスの答えは『隣国の王女』『長女』『髪が長かった』とかそんな感じの答えになると思う……。


「公爵様は私にどうしてほしいとか言ってなかったの?」


「いや? 別に何も。……なんだ、王女が気になるのか? 嫉妬か? 可愛いなあ」


「どこがどうしたらそうなるの」


 いや、本当に。

 時々シリウスがとんでもなくポンコツになるのは仕様なのかな……。


 今の会話のどこに嫉妬要素があったのか教えてほしい。

 私にはわからんよ……本当にもう。


「まあとにかく? 王女様が来るのは確定事項。シリウスは多分本邸に呼びつけられることが増える」


「……そうだな」


「多分オヒメサマは私に会いたいって言うよねえ」


「言うだろうな」


 会わせないのも不敬とか言われたら面倒だから、じゃあ私もそれなりの格好をしてご挨拶しなきゃならないってことか~……。

 面倒くさいな、色々と。


 ちらりとシリウスを見る。

 飄々としたままお茶を飲んでいるこの男からしたら、私と別れる気はないので何があっても自分のものって主張ができるならそれはそれでいいとか考えてそうだな……。


 それに、私もシリウスを譲って上げる気はさらさらないのだから、面倒でもここは仲の良いところを見せつけてやってもいいのかもしれない。


「シリウス、私、チョーカーを新調したいな~」


「いいぞ。何がいい? 宝石でも魔石でもお前の望みのままに」


 私のおねだり(・・・・)に嬉しそうな顔をするシリウス。

 王女様、本当にこの男を私から奪えると思ってんのかな……。


「いいシリウス。新調してとは言ったけどでっかい宝石ならなんでもいいわけじゃないからね? チョーカーを宝石で作ろうとか考えない。魔石は私が魔力で酔うからだめ、チョーカーの先にぶら下げる石なら……とか考えて大きいのにしたらただ重いだけだし軽量魔法かければいいとかそういう話でもないからそのつもりで。いいね? いいね!?」


 ただ念は押しておく。

 苦労するのは私だからな!

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