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主人公の義兄がヤンデレになるとか聞いてないんですけど!?  作者: 玉響なつめ
第六章 まあ人それぞれってことで!
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「何をどう誤解してらっしゃるか知りませんけどね、私は望んで彼からの首輪(・・)を受け入れたんですよ。ついでに言えば彼は私がいつでも(頑張れば)首輪を外してこの家を出て行けることも理解した上で、万全の守りを敷いてくれてるんです」


 ジョンさんが言うように、このチョーカーは普通に考えたら相当魔力を注ぎ込まないと鍵が外せない仕組みになっている。

 それはちょっと分析してみたことがあるので、知っているんだよね~私も!


 でも抜け道ってのはなんにでも存在しているもので、これほどまでに複雑な術式がぎゅうっと凝縮されているってのがポイントで……ってこれはまあ置いておくとして。


「……いったい全体、公子様はどうしたいんですか」


「父上や姉上たちも上手く言いくるめたって思っているんだろうが、僕は騙されないぞ!!」


「堂々と家族を無能扱いしてるみたいだけど、それはいいの?」


「むのっ……そ、そんなことはない! ただ父上も姉上も純真だから……」


(いや公爵様は違うと思うけどな……?)


 純真な人はこんな大領主やってらんないと思うんだけど、次期当主として育てられていたはずなのにいいのか? 公子の成長がこれで。


 思わず遠い目をしてしまった私は悪くないはずだ。

 シリウスによれば、将来的にはアナベルが王子を婿に迎えることになるだろうとのことだったけど……。


(能力的なことを考えれば、王子が実務を担ってアナベルが家門を率いる……けど、家臣団からは王家の影響力を危惧する声も上がっている……)


 そのため、アナベルが見つかるまで次期当主として目されていたレオナール公子をそのまま当主に据える方がいいのではって話も出ているそうだ。

 とはいえ公爵様はまだまだ現役だし、サポートとしてシリウスがいるからそう焦って結論を出すこともないだろうって空気ではあるそうだけど。

 

 でも次期当主候補がどっちもこんな純粋培養でいいものなのか……ッ!

 アナベルは市井暮らしで貴族たちの裏面を読むことが難しいみたいだし、レオナール公子は甘やかされているみたいだし。


 その結果、シリウスがそのフォローしまくるようじゃ困るんですけど?

 正直監禁されている身(?)としては定時で帰ってこられるようにしてくれないと困るんですよ。


 玄関開けられるようになったから食料品届かなくても自給自足してみせるけどさ!

 まだこの辺の魔獣とぶち当たってないからどのくらい私の戦闘能力が通用するかまるで未知数ってのが恐ろしいよね!!


「僕は知っているんだぞ、兄上には心に決めた人がいたのにお前が――」


「俺が心に決めた相手は後にも先にもセレンだけだが?」


 声高に私を非難しようとしたレオナール公子が、一気に顔色をなくすのを見た。

 うん、私もビビったわ。内緒だけど。


「あ……兄上」


「どうしてここにレオがいる? ジョン、唯々諾々として命令に従うだけの従者は必要ないんだがな」


「ひえっ……すみませんすみませんお許しください団長オ!!」


 今のシリウスはノクス公爵家の騎士たちを束ねる立場。

 ジョンさん可哀想だなあと思いながら玄関を半ば閉めている状態でのぞき見る。


 そんな私の方へ向き直ったシリウスがにこりと微笑んだので私も笑みを返した。


「……そっちはお任せしちゃっていい?」


「ああ。もう中に入っていいよ、寒かったろう。暖かくしておいで。俺もすぐに行くから」


「じゃあお茶を用意しておくね!」


 鍵を開けていることには何の疑問も抱いてなかった顔だなあ、あれ……。

 私の退屈凌ぎパズルくらいにしか思っていなかった説あるわ。


 ガチャガチャ、ガチャンと三つの鍵が自動で閉まるのを見守ってから私はキッチンへと向かう。

 勿論、宣言通りお茶を淹れるためだ。


 外から、なんだか情けない叫び声が聞こえた気がしたけど……気にしないことにした。

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