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主人公の義兄がヤンデレになるとか聞いてないんですけど!?  作者: 玉響なつめ
第五章 この愛は重いのか?

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 許可を一度出したら、きちんと〝待て〟ができていた大型犬が遠慮なくなりました……毎日げっそりです。

 いやまあシリウスがいない間は寝て過ごしていても誰もなんも言わないからいいっちゃいいんだけどさ……。


(……なんだか余計に執着し始めている気がしないでもない!)


 生活に支障がないのがまた問題なんだよなあ。

 両思いになって私が彼を全面的に受け入れたら安心してくれるかと思ったんだけど……。


 私もね、外の様子を知ろうと努力はしたんだよね。

 この家の中を歩けるようになってわかったんだけどさ、どの窓から見ても景色が変わんないのよ。

 

 二階建ての家はそこそこ広くて、一階に食堂や調理場、リネン室、洗濯室などがある。

 けど食堂以外は窓なし。玄関に至っては三重扉とかになってんじゃないかな、あれ。

 で、その唯一の窓から見える景色は森。

 シリウスいわく、この家はノクス公爵家からほど近い森の中にあるんだってさ。


(……さすがにノクス公爵領地の地図は脳内に叩き混んでないんだよな……)


 これまでお仕事(・・・)で来ることもなかったし、私としてはアナベルが幸せになった頃を見計らって辞職願を出して退職金をがっぽり、夢の隠居生活へ……っていう人生設計だったし。


(でもノクス公爵領は魔獣対策であちこちに壁が築かれているって話だったっけ)


 町ごとに壁、一定間隔で壁と防波堤をいくつも作ることで、魔獣が氾濫した時の対策にしているんだって話を以前どこかで聞いた気がする。

 そのおかげで途中途中の森とか原っぱでもそう危険な魔獣に遭遇しないで済んでるって話。


 ちなみに森の中なのにこれまで獣の気配がしないのは、家の周辺に魔獣対策用の結界石があるからだそうで……そうまでして私を人里から遠ざけたいのか!!

 

 ちなみに二階にあるサンルームから見える景色も森だから何も変わらないよ!

 ああでもそっちの方が差し込む夕日の色がある分、綺麗だね……。


「……アナベル様たちはお元気?」


「ああ、元気だよ」


 会いたがっているとか、近況とか、会ってみるかとかそういう答えは一切なし。

 これはのらりくらりとかわされるやつだわ。

 むしろここで私が食い下がると監禁の度合いがアップしそうなので踏み込めず。


「ノクス領の郷土料理とか食べてみたいなあ~……」


「そうか? じゃあ今夜は俺が作ろう」


 外に出てお店を紹介するとか、シェフを呼ぶっていう気配なし。

 っていうか作れちゃうんだ……?

 思わずびっくりしたら「セレンに食べてもらいたくて……」なんてちょっと照れながら言われちゃったよ、ホント末恐ろしい男!!


「……ところでシリウス」


「なんだ?」


「ノクス公爵家での私の立ち位置って」


「俺の婚約者だな」


 晴れやか笑顔~~~~~~!

 まだ恋人になることを了承しただけでプロポーズも何もされていないはずなのにもう婚約者になってるだと……!?


 ニコニコ笑顔のシリウスに、私もニコッと笑顔を返す。

 だってそれ以外の選択肢は彼の中にはない……はずだ。


 そう、私は空気が読める子だからね……!


「それがどうしたんだ? セレン」


「プロポーズされたっけ」


「俺からチョーカーを受け取ってくれたろう?」


「アッ、コレ婚約ノ証ナンダア」


 なんとなく!

 そんな気はしていた!!


「北部では冬が厳しいから指先につけるアクセサリーよりもネックレスやブレスレットといったアクセサリーが多いんだけど、セレンは首が特に綺麗だからな。その色、よく似合ってるよ」


「ワア、ウレシイ」


 これがないと生活圏広がらないからね? ほぼ強制だよね?

 そんな言葉は呑み込んでおいた。


 だってここで目からハイライト消えられてベッド生活なんてごめんだからさ。

 これはもうある程度は諦めてシリウスが満足するまで軟禁生活で、私も楽しんでいくしかないかな~?


 そこそこメンタル強くて良かった~!

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