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主人公の義兄がヤンデレになるとか聞いてないんですけど!?  作者: 玉響なつめ
第四章 踏み越えてはいけない一線

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 そうして気を失った私が、次に目を覚ましたら知らない天井だった。

 いやもうこれは捕獲されたな……って嫌でもわかったわ。


「ぐっ……」

 

 体を起こそうにも背中が痛い。

 寝間着も、そして寝かされているベッドも上質のもので、治療もされているらしく薬品の匂いがした。


 どうにかこうにか体を起こしてゆっくりと周りを見渡す。

 一般庶民じゃ手に入らないような、意匠を凝らした魔道具の数々に呆れを通り越して乾いた笑いが出る。


 どう考えたって、私を連れ帰ったのはシリウスだ。

 そしてシリウスが連れ帰った先は、ノクス公爵家だろう。


(地下牢じゃなくて客室ってあたりは優しさなんだろうけど……)


 いや、これ客室じゃないな?

 だって窓がひとっつもないもの。

 ついでに扉は外から鍵をかけてある……つまり、ここは軟禁用の部屋だ。


(貴族家の軟禁用の部屋にしちゃ豪華だけど)


 私が聞いた貴族家の軟禁部屋は窓に鉄格子がついているって聞いたんだけどな。

 あと高価な家具は置かないって聞いた。

 贅沢ができないことも彼らにとっては屈辱で、罰の一端を担うんだとか。


(……まさかシリウスに銃をぶっ放されるとは)


 それほどまでに怒ってたってことか?


 魔導銃ってのはこの世界ではまだまだ珍しい武器で、使い手が限られているものだ。

 使用者の条件は三つ。

 強靱な肉体を持つこと。強大な魔力を有して制御できる熟練者であること。


 そしてこれが重要なんだけど、お金持ちであること。


 なにせこの武器、まだまだ開発途中ってこともあるんだけど……とにかく制作コストがかかる!

 お貴族様の娯楽品としても手が出せないような簡単なブツではないのだ。

 

 そしてこの銃は私の前世で見たような火薬を使うものではなく、魔力を(・・・)弾にして打ち出す

 そのため魔力の消費が半端ない。

 しかもこれ、威力が選べるのだ。最弱から最大どこまで行くかは知らんけど。


 便利そうに聞こえるが、ただ魔力を込めるだけじゃどうにもならない。

 威力を決めるのは魔力量だけど、どういう弾にしたいのかっていう具体的なイメージが必要な上に込める魔力の微調整という緻密な魔力制御が求められる。


 加えて、魔導銃はその反動がすさまじいらしく、吸い上げられる脱力感に耐えながら反動を抑え込むだけの体が必要とのことで……まあ、総括するとコスパが悪い。

 弾の値段がかからないと言っても、それだけ銃本体が高くて使い手が限られるものだから足もつきやすいし、危険すぎるブツってことで裏社会でも有名な話だ。


(……ってことは、シリウスは私を殺すつもりは毛頭なかった……)


 背中がめっちゃくちゃ痛いけど、あれはなんていうか……。

 そう、どんな手を使ってでも私を逃がさないっていう意思を感じる。


 一発で気を失わせて、確実に私が逃げられないようにって。


「そこまで怒ってる……ってこと……!?」


 痛みがあると言ってもこの様子だと骨は痛めていないし、せいぜい打ち身ってところだろう。

 それもここ数日で痛みが引く程度の。


 とりあえず部屋中を探索してみたものの、監視用の穴があるわけでも鏡に細工がされているわけでもない。

 クローゼットの中は空っぽ……というか、今来ている寝間着と同じものが数着と下着が入っていただけだった。


 ただまあ当然と言えば当然なんだけど、私の私物は見当たらない。

 当然だけど、隠し持っていた武器その他、着ていた仕事着も含めて一切。

 

(それにしても……怒って捕らえているにしては扱いが丁重すぎて逆に怖いな……?)


 気配を探っても、この部屋に鍵がかかっていること以外おかしな点はなかった。

 ただ、ここが公爵家だと仮定するにしては、あまりにも人の気配がないことが気にかかる。

 

(普通のお屋敷なら、どこにいたってある程度人の気配がするもんなんだけどな……?)


 これは誰かが食事を届けに来るか、様子を見に来るかするまで大人しくしているしかないなと私は覚悟を決めてもう一度ベッドに戻った。


 チャンスは寝て待てって言うもんね!

 え? 言わない?


 そんなポジティブな考えの私に神様が味方してくれたのか、横になってからそれほど立たずしてガチャンと言う重々しい音と共に鍵が外れる音がして、ドアが開いた。


「起きたのか、セレン。ようやく話ができるな」


 現れたのは笑顔の(・・・)シリウス。

 

 ああ、神様。

 さっきは味方してくれていると思ったけど違うね。


 私のことを弄んで楽しんでいるとしか思えないな!!

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