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 その後はなかなかスピーディーな展開だった。

 

 アナベルの覚醒は確かなもので、私が指定した薬草だけでは完全な解毒は無理でもヴェゼルの命はとりあえず救われた。

 その後騒ぎを聞きつけた侯爵家の人たちによって治療をと言われるも、襲われたのが侯爵家の中なので信頼できないとシリウスが突っぱねて、大公邸へと急ぎ戻ったわけだ。


 そこで私が毒の成分をいくつか告げてそれらの複合であると述べると、それだけ(・・・・)でアナベルが最適解の薬の名を医師に告げたのである。


 アナベルの特殊技能は調剤のはずなんだけど、毒の種類で何が必要かはわかっても知識がないとその答えは出せないはずなのにすごいなって思ったらそういや彼女は将来薬師になろうとしていたんだっけと思い出す。


 それにしたって解毒剤系列まで学んでるの怖くない?


(ん? 待てよ、まさか……)


 私が懇意にしている裏稼業の薬剤師、ヤツがそういえば『ちょっと前に弟子入りしたいとか言ってくる子がいてこれがまた可愛いもんだから、ついついいろいろ教えちゃったのよねえ~、信頼できる表の薬師を紹介したからさすがに弟子にはしてないわよ?』なんて言っていたのを思い出す。


 ええ~……まっさかぁ……?

 いやあり得るぅ……。


 私の知り合いの薬師、大変腕はいいし庭で薬草も育てる勤勉さもあるのだが、フラッと突然出かける癖があるのだ。

 その際、庭や家のことはゴーレムに任せるのでいなかったらいないでまあしょうがないって感じなんだけど……その〝フラッと出かけた〟先で人助けをすることもあれば、騒ぎを起こしてくることもある大変個性的なやつなのである。


 悪いやつじゃないんだけどね!

 裏稼業の薬師なんだから笑い方は『クックックッ……』と『ンフフフフ』とどっちが様になるかな、なんて悩むようなヤツだけど!


 まあそんな感じでヴェゼルも助かったし後遺症も残らないそうで、めでたしめでたし。

 しかも戻ったタイミングで届いた私の情報と照らし合わせて全貌が明らかになった。


 お茶会に参加していたご令嬢たちやアナベルを傷つけることなく、大公家と侯爵家を上手いこと仲違いさせた上で漁夫の利を得たい新興貴族たちによる行動だったようだ。


 ご令嬢たちはもしかしたら(・・・・・・)縁づくかもしれない相手であるので、彼女たちを傷つけないこと。

 アナベルは平民出身とは言えやはり大公家と繋がる可能性を考えたら金の卵を産むガチョウ、その上バレたらやばい。


 ってなわけで、主催者である侯爵家の庭で護衛(ヴェゼル)侍女(わたし)を狙うように指示があり、傭兵で傷を負わせられないようなら毒を使ってしまえ……という指示だった模様。

 使用人や騎士が死んだところで所詮使い捨てだからって考え方なんだそうだ。うへえ。

 これでショックを受けたアナベルが引き籠もってくれれば、王子妃の可能性も潰えるだろうっていうとても雑な欲張りセットの計画だったってわけ!


 ちなみに私も見知らぬアイツは、貴族家お抱えの暗殺者だったそうだ。

 最終兵器的に控えていたってんだからいいご身分だな。

 次はないと思え!!


(さてさて、これに協力した連中のせいでいったい貴族名鑑からいくつの家名が消えることやら)


 私はアナベルの近くにいたため、彼女を巻き添えにするわけにはいかなかった傭兵たちはヴェゼルを狙ったんだろうなあ。

 そう思うと申し訳なかったよ、ヴェゼル!

 ここでも小説と違う展開になるとは思ってなかったんだ!!


「いやあ、でもまあなんだかんだ丸く収まって良かったですねえ」


「良くない」


「ひぃ」


 自宅(仮)に戻って私が朗らかに言って晩ご飯でも作ろうかとしたところで、地獄の使いも逃げ出しそうな眼光のシリウスが私を睨み据えている。

 思わず悲鳴が出ちゃった。


 お話、スルーしたくて頑張ったんだけどなあ……だめだったね、やっぱり!!

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