プロローグ
新作です、よろしくお願いしまぁぁぁす!!
「すまない。俺はお前を手放せない」
灰青の綺麗な目が、うっとりとした様子で私を見下ろす。
精悍な青年が愛しげに私を見つめ、壊れ物に触れるようにその節くれ立った親指で私の唇をなぞって笑みを深める様は、まるで愛し合う恋人の一幕のようだ。
それだけならきっと誰だって素敵だ、愛されているなって思うことだろう。
うんうん、いや、愛されてるなとは思うよ!
ただ状況がおかしいんだよな!?
「……ええと、あの、シリウス様? 落ち着いて?」
「俺は落ち着いているよ、セレン。これ以上ないほど落ち着いている。ようやく、この腕に取り戻せたから」
するりと私の頬を撫でるその手つきはどこまでも優しい。
――けどその目にはハイライトがないし、なんだったら私はベッドの上にいて、ついさっきまで気を失っていたワケですよ。
そんでもって私の両手はベッドに括り付けられている状態。
片足には足枷と重り。
「これって紛うことなき監禁ですよね!?」
「そうだな。……もう、実力行使しかないと思ったんだ」
フフッと笑う彼が立ち上がったことで、ベッドが揺れる。
身動きの取れない私の頬をもう一度だけ名残惜しそうに触れてから、彼――シリウス・フェローチェス・ノクス公爵令息は脇に置いてあった帽子を手に取り、目深に被った。
黒の軍服が、精悍な彼によく似合う。
「少し出てくるが、大丈夫。すぐに戻る」
「シリウス様……」
「セレン、すまない」
手袋を嵌める姿がセクシーですね!
とか暢気なことを言っている場合でないことくらい私にだってわかる。
「……愛してる」
私、主人公を愛して止まない義兄を、ヤンデレ化させちゃったっぽいんですけどどうしましょう!?