闇のルール
スマホの時計は、夜の0時を指している。毎日出す課題、「毎日課題」に、まだ、手、付けられていない。
そういえば、あれ、なんだったんだろう。
内申ゲーム。
『秋楽園高校 内申ゲーム』
検索。
……なんだこれ。
「独特な受験制度、『内申ゲーム』とは一体……」
「内申ゲーム制度について解説。【高校受験の闇】」
「【内申ゲーム攻略】合格した方法について解説」
「日本のヤバい受験制度『内申ゲーム』」
……え?
おれは、最初に出てきた「独特な受験制度、『内申ゲーム』とは一体……」をタップした。
『皆さんは、「内申ゲーム」という受験制度をご存じでしょうか。
私立秋楽園高校の、音楽科で採用されている制度です。
正式名称は、「内申点優秀者特待生制度」らしいです。
では、この制度はいったい何なのでしょうか。徹底解説していきます。
〇内申『40』を取り、合格すれば、特待生として学費が0になる。
この高校の学費は3年間で400万近くかかります。しかし、設備、施設などが充実していて、それに見合ったような学校となっています。
内申『40』を取れば、学費0になります。そのため、超お得な制度です。もちろん、学力テスト、実技テストで合格ラインをクリアする必要があります。
〇同じ学校法人の「日本音楽芸術大学」の推薦枠が確定で得られる。そして、学費が0になる。
あの、日本音楽芸術大学の推薦枠が得られ、更に、通常600万円かかる大学の学費も、なんと、0になります。もちろん、自分の行きたい大学が見つかれば、辞退も可能です。日本音楽芸術大学を卒業した有名ミュージシャンはたくさんいます。
そこに、卒業生の有名人が羅列されていた。確かに、聞いたことのある人が何人かいる。
以上、内申ゲームについてまとめてみました!ではまた!
次の記事:高校受験のコツ……』
めちゃくちゃだ……。大学の合格まで確約されて、学費も0になるなんて。こんな制度。
でも、なんで、あいつ、太雅、それを言うのを少し渋ってたんだ。こんないい話……。
「内申ゲーム制度について解説。【高校受験の闇】」
気づいたら、タップしていた。
するとそのまま、動画のアプリに飛び、動画が再生され始めた。
フリー素材の背景にフリー素材のイラストやフリー素材のBGM、フリー素材の効果音、そして色彩豊かなテロップを使って漫画風にしてある解説動画だ。ナレーションが流れ始めた。
『内申ゲーム、という制度をご存じだろうか』
「ピキーン」という効果音と共に、画面全体に、「内申ゲーム」という大きなテロップが表示された。
『私立秋楽園高校の音楽科で採用されている制度。正式名称は・・・』
うーん、ここらへんは知ってる! 気になるのは、「闇」の部分だよ!
おれは、右画面をタップしまくった。
広告を2つ見た後、10分ある動画の5:15くらいまで来た。
「ゴーン」という効果音と共に、赤の太いフォントで「闇」という文字が浮かび上がってきた。
ナレーションが続く。
『なぜ、闇と呼ばれているのだろうか。
それは、「受験方式」、「出願時期」、そして、「受験料」にある。
この学科の受験方式は、選考に関係なく、学力検査、実技を合わせて400点満点。
そこに、内申(最大9教科×5=45)を2倍した90点満点を足す。
学力・実技400+内申90、計490点満点で評価される。
しかし。
この制度に申し込んだ場合、採点時のみ、内申は『20』ということにされる。
例えば、内申点が『30』の人と比較した場合。
内申『30』→2倍→60点
内申『20』→2倍→40点
つまり、内申『30』の人と比べ、20点低い状態で、受験に挑まなければならない。
内申は実際『40』持っているのに、採点時は『20』ということにされるのだ。
恩恵を受けるには、それなりのハンデを付ける必要がある、ということなのだろうか。しかし、確かに、闇な感じは、伝わってくる』
は?内申、半分の『20』ってことにされるの?
当日点重視でも、それはさすがに……。
『そして、闇と呼ばれる最大の理由は、この学校の、出願時期、受験料にある。
通常、高校の出願は、秋から冬にかけて行われる。しかし、この高校は違う。出願の締め切り、そして、受験料の払い込みの締め切りが、7月31日。
皆さん、お気づきだろうか。
そう。3学期の内申点がどうなるかなど全くわからない状態で、出願をし、受験料を払わなければいけない。
そして、受験料。
この受験方法で受験をする場合、通常の受験料2万円とは異なり、その受験料は、500万である。
そう。
受験料は、学費に100万をプラスした、500万なのである』
は!? 受験料、500万……!?
『そして、合格が決定した場合、3月の末に、500万が払い戻される』
なるほどな。受かれば後で戻ってくるのか。びっくりした。……ん?
『それが、この高校の、「内申点優秀者特待生制度」、通称、「内申ゲーム」だ』
また、「ピキーン」という効果音が流れた。
『みなさん、もう、お気づきですよね。この制度の「闇」の部分を』
そのナレーションの後、黒の背景に変わり、濃い赤色のテロップが浮かび上がってきた。
落ちたら、どうなるのか。
ナレーションは続く。
『落ちたら、どうなるか。受験要項の下の方に※マークで、隠すように書いてあるのです。
「なお、不合格の場合、受験料の払い戻しはございません。あらかじめご了承ください」
そう。
落ちたらもう、500万円は戻ってこないのです』
……え?
『これが、「闇」と呼ばれる一番の要因です』
まさか、「内申ゲーム」って……
ナレーターの声が少し、低くなった。
『この受験制度、500万をあらかじめベットする。賭けるです。そのうえで、内申を上げていく。
そこからが、学校側との勝負。勝てば、受験料の500万+高校の学費400万+日本音楽芸術大学の学費600万、合計1500万円が戻ってくる。つまり、賭け金が3倍になって戻ってきます。しかし、負ければ500万円を失う。
もちろん、卒業式の時点で内申40を持っていることは絶対条件。式の後、先生に渡された通知表を開き、9教科の数字の合計が40未満だった場合、その時点で500万は消えることになる。
これが、大金を賭けた、評価をする9人の教科担任、そして、ディーラー兼問題作成者である高校との、
闇の、内申ゲーム。
あなただったら、内申点という不確定要素に、500万円を、BETしますか?
この動画が面白ければ、チャンネル登録、高評価、コメントよろしく! また次回のお会いしましょう、バイバイ』
そういうことか。
3学期の内申が40に到達するかわからない7月に受験料500万を払わせる。
卒業式の後に配られる通知表の内申が40以上で、受験に合格すれば、500万円は戻ってくる。その上、高校の学費400万、大学の学費600万を0に出来る。実質、合計1000万円プラスになる。
でも。
最終的な内申が40に満たなかったら。
それを満たしたとしても、受験に落ちたら。
500万円はもう戻ってこない。
勝てばプラス1000万円、負ければマイナス500万円の、内申ゲーム。
……リスキーだ。
あまりにも、リスクが高すぎる。
こんなことを、本当に、あの秋楽園高校がやるのだろうか。
すぐに、高校の公式サイトを開いた。
受験方式のページを開く。
下の方にスクロールしていくと、妙な言葉を見つけた。
「私達秋楽園高校音楽科は、数多くの未知なる才能の中から、類まれなる人材を発掘したい。しかし、学費が原因でうちの高校を受けない人も多いでしょう。そこで、本校初となる、特待生制度を、3年前に設けました。名付けて、『内申点優秀者特待生制度』。あなたも、日本有数の設備、実績を持つ本校で、才能を磨いてみませんか。 締め切り:7月31日」
そこから先は、今調べたことと、全く同じことが書いてある。
太雅が言っていた制度、これは……。
まじか……。
眠くて、あんまり頭が働かない。
あ……やばい。
毎日課題、やらなきゃ。
おれは、そのまま、おすすめ動画に出てきた勉強BGMを再生し、テキストを開いた。
恐れ入りますが、
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